Page 3 / 4 1ページ目から読む

タワー・オブ・パワーの〈歌う〉名盤

TOWER OF POWER East Bay Grease San Francisco(1970)

MICROPHONE PAGERが拝借したジャケでもお馴染みのデビュー作。ビル・グラハムのレーベル発で、ヒッピー・ムーヴメントの空気を吸い込んだ粗削りなファンク・ロックをルーファス・ミラーが激しく歌い込んでいく。リズム&ブラスはJB's、集団コーラスはEW&Fの同時期作の如し。フルート入りのスロウ“Sparkling In The Sand”では2代目のリック・スティーヴンスをお披露目。 *林

 

TOWER OF POWER Bump City Warner Bros.(1972)

リックが正式参加したメジャー第1弾。ファンクは荒々しさをキープしながら丸みを帯び、コーラスが曲名を連呼する“You Got To Get Funkifze”やソリッドなファンク“Down To The Nightclub”などでリスナーを架空のナイトクラブ〈バンプ・シティ〉に連れ込む。出世曲“You're Still A Young Man”はコーラス・グループに通じるバラードで、リック一世一代の名唱となった。 *林

 

TOWER OF POWER Tower Of Power Warner Bros.(1973)

レニー・ウィリアムスとレニー・ピケット(サックス)、2人のレニーが初参加したワーナー第2弾。16ビートを叩き出す忙しないファンク“What Is Hip?”、シャッフル調のポップな“This Time It's Real”、そして現時点で最大のヒットとなる哀愁バラード“So Very Hard To Go”と親しみやすい曲が続き、バンドは一気にメジャーな存在に。“Soul Vaccination”のリズム&ブラスぶりも最高だ。 *林

 

TOWER OF POWER Back To Oakland Warner Bros.(1974)

ジャズ・ファンクな“Oakland Stroke”をイントロとアウトロに配し、地元をアピールした絶頂期の一枚。JB's風インスト“Squib Cakes”以外の多くは“Time Will Tell”に代表されるストリングス入りのスケールの大きいスロウで、レニーのソウルフルな歌が全編で活きる。アーバンなミディアム・ファンク“Can't You See(You Doin' Me Wrong)”などにはマリリン ・スコットらがコーラスで参加。 *林

 

TOWER OF POWER Urban Renewal Warner Bros.(1975)

デヴィッド・ガリバルディの代役でデヴィッド・バートレットがドラマーを務めた5作目。チェスター・トンプソンのエレピも躍る豪快な疾走ファンク“Only So Much Oil In The Ground”、オーケストラを配した美バラード“I Won't Leave Unless You Want Me To”と、ここでもレニーが抑揚をつけて歌い、本作で有終の美を飾った。“It's Not The Crime”ではエミリオ・カスティーヨが快唱。 *林

 

LENNY WILLIAMS Pray For The Lion Warner Bros.(1974)

TOP加入前にメジャーからシングルを出していたレニーだが、グループ在籍中にワーナーから発表したのがユージン・マクダニエルズ制作となるこの初ソロ・アルバム。ユージン作“Compared To What”のカヴァーを筆頭に、TOPよりアーシーなバックでニュー・ソウル的な曲を歌い、ゴスペル・ルーツの滲むバラードも披露する。もちろんあの噛み締めるような歌いっぷりはここでも変わりない。 *林

 

TOWER OF POWER Ain't Nothin' Stoppin' Us Now Columbia(1976)

ワーナー音源の印象が強いために軽く見られがちなコロムビア時代だが、この移籍第1弾を筆頭に聴きどころは多い。時代の変化を受けてバリバリのファンク色が後退したぶん、“Doin' Alright”など歌主導のメロウなナンバーが充実している。新加入したエドワード・マッギーの泣き節とアーシーな演奏の相性も良いバランスで、普通に70年代ソウルの佳作として親しまれてほしい一枚だ。 *出嶌

 

LENNY WILLIAMS Choosing You ABC(ABC)

モータウンでの『Rise Sleeping Beauty』(75年)を挿み、ABCに籍を移しての通算3作目。レイ・パーカーJrやジェイムズ・ギャドソンら当時の西海岸シーンを代表する面々がバックをタイトに固め、洒脱なアップの表題曲などがヒットした。TOPのホーンズも小気味良い演奏で縦横無尽な歌唱を支える。名スロウ“Cause I Love You”を収めた次作『Spark Of Love』(78年)も併せて必聴だ。 *出嶌

 

TOWER OF POWER We Came To Play Columbia(1978)

『Bump City』のミックスを手掛けた縁もあるスティーヴ・クロッパーをプロデューサーに迎えた意欲作。新加入したマイケル・ジェフリーズの男っぽい歌声は、表題通りの名スロウ“Bittersweet Soul Music”などでメロウな味わいを存分に醸し出している。歓声で幕開けする表題曲やドラマーのロニー・ベックが野太い歌声で暴れる“Love Bug”など威勢のいいファンク・チューンも印象的だ。 *出嶌

 

TOWER OF POWER Back On The Streets Columbia(1979)

マイケル・ジェフリーズがリードで歌うコロムビア最終作はマッキンリー・ジャクソンとリチャード ・エヴァンスがエミリオと共同制作。ジョーンズ・ガールズを従えたマイケル・ジャクソン風の“Rock Baby”やマーサ&ザ・ヴァンデラス“Nowhere To Run”のダンサブルなカヴァーなど、79年らしいディスコ志向の内容でTOPらしさは希薄だが、この洒脱なグルーヴはいまでこそ光り輝く。 *林

 

JEFF LORBER Private Passion Warner Bros.(1986)

キャリン・ホワイトを世に出した一枚としても知られる人気フュージョン作品だが、ジャケに写るもう一人のリード歌手こそTOP脱退後のマイケル・ジェフリーズだ。キャリンとのデュエット“Back In Love”やリズム・シンジケート制作のデジタル・ファンク“Private Passion”ではシャープながらも甘い歌い口の魅力が全開になる。廃盤ながらジャム&ルイスらの手掛けたソロ初作も必聴。 *出嶌

 

TOWER OF POWER Monster On A Leash Epic(1991)

計4枚のアルバムを残すこととなるエピックへの移籍第1弾。ロッコが復帰するも全体的には小気味良いポップネスを追求した作りで、リードを担うトム・ボウズの歌唱にもライト&ブライトな軽さがある。その持ち味を活かす洒脱なAOR味の“Personal Possessions”などは往年のTOP作法とは違う意味で心地良い。エミリオがマイクを握って煽る“Funk The Dumb Stuff”の熱さも印象的だ。 *出嶌

 

TOWER OF POWER Oakland Zone TOP/Artistry(2003)

ラリー・ブラッグス加入後の初アルバム。地元アピールの表題やイントロとアウトロに同一曲を配した構成、“This Time It's Real”そっくりなシャッフル調の“Happy 'Bout That”、そして過去名曲のフレーズを織り込んだ“Back In The Day”などセルフ・オマージュが目立つこともあり、ラリーの歌からもレニー・ウィリアムス感が漂う。アップデートされたオークランド・ファンクの快作だ。 *林

 

TOWER OF POWER Great American Soulbook TOP(2009)

結成40周年を突破した記念盤的な意味合いもあるのか、60~70年代ソウルの名曲を取り上げた初のカヴァー集にして、縁のあるヒューイ・ルイスやサム・ムーアら名のあるゲスト・ヴォーカルを複数迎えた企画盤。円熟味の出た作りのなかで、マーヴィン・ゲイ曲のデュエット相手として2曲でマイクを握ったジョス・ストーンの振る舞いが光る。ジョージ・デュークもプロデュースに関与。 *出嶌