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 「前作の『ザ・スタンダード』は、ジャズの歴史を築き上げてきた偉大なジャズメンに敬意を表するとともに、全曲ジャズ・スタンダードというアルバムにチャレンジしたいという思いで制作しました。今回発表した『The Standard II』は、節目を迎えるに当たって、ポップスや映画音楽へも視野を広げ、未来のジャズにつなげたいという願いで作った作品。同時発売された『寺井尚子ベスト』は、ファンの皆様への感謝の気持ちを表したいと思ったのがきっかけです」

 確かに、この2作品を聴いていると、30年に亘って第一線で活躍を続けている彼女の無尽蔵のパワーと、音楽への深い愛情がひしひしと伝わってくる。

 「コンサートを行なうたびに、会場に来てくださったお客様のエネルギーに支えられて今の自分があるということを強く感じています。立ち止まることも何度かありましたけど、いつもそのことを思い返して、自分の気持ちをニュートラルにして、また奮い立たせて歩いてきました。そのことには本当に感謝しています。そして、そのようなお客様からいただくパワーと同様に、私を前に押し進めてくれたのが、自分の心の中に湧き上がるワクワク感。16歳の時に初めてビル・エヴァンスを聴いた時に芽生えた気持ち。それが私をジャズへの道に駆り立てました。それは、デビューから30年経った今でも少しも変わっていません。未知の方向へと進むとき、色々な心配事ができても、ワクワク感の方が勝ってしまうんです。その気持ちが生み出してくれるエネルギーを大切にしています」