原点回帰ならぬ〈原点凌駕〉を掲げ、世界を相手に勝負する5人から最強の新作が堂々の降臨! 強靭なサウンドを纏った真摯なメッセージから君は何を受け取る?

原点を凌駕したアルバム

 大阪発の5人組、Crossfaithが3年ぶりとなるニュー・アルバム『EX_MACHINA』(エクス・マキナ)を完成させた。ロックとエレクトロを融合させたメタルコア・バンドとして、デビュー時からワールドワイドな活動を続けてきた彼らだが、今作はセカンド・アルバム『The Dream, The Space』(2011年)以来となる久々のセルフ・プロデュース作であり、バンドの成長や長所が余すところなく楽曲に反映された最高傑作と言っていい。

Crossfaith EX_ MACHINA ソニー(2018)

 「今回はプロデューサーを雇わずに、俺たちがコントロールできる範囲でやろうと。これまで海外レコーディング&プロデューサーを付けて、それの良い部分悪い部分を吸収した結果ですね」(Koie、ヴォーカル)。

 「今回は自分たちが何をしたいのかを突き詰めることができた。次にどういうステージに立ちたいかを含めて、曲を作りましたからね。曲にも振り幅があるし、やりたいことが明確に聴き手にも伝わるかなと」(Kazuki、ギター)。

 「ライヴで実際に新曲をやったら、お客さんはバグるんじゃないかと思うほど、ワクワク感がありますね。基本はライヴを意識して作ることも多いけど、それがより強く出ているし、攻撃力は増していると思います」(Tatsuya、ドラムス)。

 「今作のキャッチコピーに〈原点凌駕〉という言葉を付けたけど、ほんとに原点を凌駕しているなと。前作『XENO』以降、シングル3枚連続で作ってからアルバムを作ったんですけど、その流れも初めてですからね。前作の後、Crossfaithをどういうふうに見せていくのか、それを表現する意味では重要なクッションになりました」(Teru、プログラミング/ヴィジョン)。

 「次のCrossfaith像をみんなで擦り合せることができたので、それは良かったですね。ディテールまで話し合うことができたから」(Hiro、ベース)。

 セルフ・プロデュースということとも直結するが、今作はある種のコンセプト・アルバムの様相を呈している。表題には〈機械仕掛けの神〉という意味があり、テクノロジーや人工知能が人間を危険から守る反面、人間のパーソナリティーやリアリティーを剥奪しているのではないか――結成時から「常にブッ飛んだことをやっていきたい」(Koie)という方針を貫いてきた彼らは、ここで人間本来の〈個の覚醒〉というテーマに到達したのだ。

 「俺らの中で前作は金字塔的な作品だったから、その先に何をアウトプットすればいいのか……Crossfaithとは何か?と掘り下げたときに、俺らは常に一線を画すような存在じゃないといけないなと。それで今回のメインテーマである〈個の覚醒〉、一人一人が持ってる個性を伸ばそうと。テクノロジーが発展するなかで、自分自身で考えることが減っているような気がして。世界を見渡しても、サウンド的に俺らと同じようなことをやってるバンドはいないと思うし、周りの環境に流されずに自分たちで決断しようぜって。それが〈個の覚醒〉なのかなと」(Koie)。

 

自分自身を大事にする

 そういった意味で、今作にはオンリーワンの音を突き詰めていく覚悟が漲っている。デビュー作を凌駕するアグレッシヴなナンバーを前半に並べているのはそういう理由だろう。曲に耳を傾けると、ライヴで観客がグチャグチャになって暴れる光景も浮かんでくる。

 「とにかく尖った曲をやりたい。“The Perfect Nightmare”もそうだし、そのへんを突き詰めた曲をやりたかったんですよ。この曲ではいままでにないくらい低いグロウルを出してますからね。そこはアスリートがタイムに挑戦するような感覚に近くて、楽しみながらやれましたね」(Koie)。

 とはいえ、ヘヴィーな牙を磨きながらも、キャッチーなメロディーセンスにも配慮し、激しいけれど耳にスッと入る聴きやすさも兼ね備えている。そこも今作の特色と言えるだろう。

 「いままではオケを作って、それからヴォーカルをハメる作業が多かったんですよ。でも今回はヴォーカルのメロディーを主軸に曲構成やアレンジをし直す作業も多かったですからね。なので、メロディーのキャッチーさは前作よりも顕著に出てるんじゃないかと。メロディーと楽器のアンサンブルも前作より意識しているし」(Kazuki)。

 そのほか、LAを拠点に活動するハードコア/ヒップホップ・ユニットのホラーをフィーチャーした“Destroy”、エンター・シカリのルー・レイノルズを迎えた先行シングル“Freedom”も収められ、海外バンドとも積極的に交流を図るCrossfaithらしい刺激的な曲調もある。また、中盤過ぎの“Lost In You”“Milestone”“Eden In The Rain”ではジャンル云々を超越したスタジアム・ロック的な作風も披露。特にKoieの歌心溢れるヴォーカルは手放しで絶賛したいレヴェルだ。

 「その3曲は、繊細な気持ちや美しい感情を表現したかったんですよ。アルバムだからこそ、こういう曲も必要だと思ったから」(Teru)。

 「“Lost In You”は前作あたりから取りかかっていた曲で、かなり試行錯誤しました。いままでやってないミドルでメロウな曲だけど、Crossfaithらしさを盛り込むことができたなと」(Kazuki)。

 「俺のヴォーカルの乗せ方も変わりましたからね。今回はスーパーヴァイザーみたいな人間がいて、2人でヴォーカルラインを考えることも多くて。そいつはポップスがいちばん好きで、曲に味をつけるヴォーカルのアプローチをいろいろ考えることができたから。曲にもストーリー性が増したと思います」(Koie)。

 そして、アルバムを総括するようにCrossfaithの真骨頂を刻んだラスト曲“Daybreak”。〈この不完全な俺の言葉こそが響き続けていくんだ そしてそれに気づいた時にこの人生は始まる〉(和訳)――それは〈自分らしさを大切にしろ!〉と説いているように解釈できる。この歌詞を書き上げるうえで、Koieは頭を悩ませたようだ。

 「知人から〈世界中のバンドはCrossfaithか、それ以外や!〉って言われたことが俺の中で響いて。そうやな、って。自分自身を大事にする――それはこの作品を通して伝えたいことかも知れないですね。俺らは常に最強と呼ばれたいし、攻撃的なアティテュードはずっと持ち続けたいから」(Koie)。

 なお、ボーナス・トラックには彼らの音楽性に多大な影響を与えたリンキン・パーク“Faint”のカヴァーも収録。これが筋金入りのガチなカヴァーで、震える。

Crossfaithのフル・アルバムを紹介。

 

Crossfaithの近年のシングルを紹介。

 

『EX_ MACHINA』に参加したアーティストの作品を一部紹介。