苦しみながら強い気持ちで立ち上がるストーリー

 自分を変えたい——切実な思いが楽曲によって増幅され、乙女たちが日常ではあり得ない煌めきを放つ。そういった瞬間を目の当たりにすることは、アイドルというエンターテイメントを楽しむうえでひとつの醍醐味。ここに紹介するゆくえしれずつれづれ(以下つれづれ)も、まさにそれを体現する4人組だ。ぜんぶ君のせいだ。を筆頭に、ユーモアとウィットに富んだパフォーマーを擁する個性派レーベル/プロダクション、コドモメンタルINC.から〈だつりょく系・げきじょう系〉アイドル・ユニットとして送り出された彼女たち。作詞を手掛けるGESSHI類ら作家陣はぜん君。と共通するところで、結成もほぼ同時期の2015年。昨年は全国7都市でのワンマン・ツアーのほか、カナダでのイヴェント・ツアーにも参加した彼女たちだが……。

◎屋しだれ「2年間ぐらい、楽しくはやっていたけれど、いつも怖かったんです。でも、今年の1月にメイが入って、最初のツアーから、怖いな~、やだな~、っていうのがちょっとずつなくなってきたんです。今回の無料ツアー(5~7月にかけて10都市11公演)では緊張がほぐれたのか、ちょっと太ってしまいました(笑)」

メイユイメイ「自分も、確実に最初のツアーよりは成長してるかなっていうのは感じます。何より、ライヴを記憶できるようになりましたから(笑)」

英艶奴「初めて観に来たっていう人がたくさんいて、逆にそれがやりやすかったというか、楽しませよう!っていう気持ちに自然となれて。観に来た人たちの熱量もすごかったし、楽しかった!」

まれ・A・小町「お客さんとの一体感もすごく感じられたし、今回の無料ツアーから何かが変わったなっていう実感がありますね」

 そんな感じで取り巻く状況も非常に上向きななかで届けられたのが、セカンド・フル・アルバム『exFallen』。前作『ポスト過多ストロフィー』ではエレクトロ調の楽曲も見受けられたりしたが、今作は〈げきじょう〉と〈だつりょく〉のコントラストを描きながら激しく揺れる——〈つれづれらしい〉とされるラウドなサウンド観にグッとフォーカス。アトランタのデスコア・バンド、アッティラのラッパー=クリス・フロンザックをフィーチャーした“Phantom Kiss”から、一気に加速する。

ゆくえしれずつれづれ exFallen コドモメンタルINC.(2018)

小町「デモの時点で鳥肌が立ちました。振付は私が考えたんですけど、一瞬でイメージできてしまったぐらい身体に入り込んできた曲で」

艶奴「クリスさんをフィーチャーしているパート、ライヴでは私たち4人が順番にシャウトしているんです。負けてないぐらいかっこいいので、そこはライヴでのお楽しみということで」

 続く“行方不知ズ徒然”はユニット名を冠した表題からも窺えるように、ラウドでありながら聴かせるメロもあり、スクリームもあり、ラップもありと、つれづれの魅力を一曲に凝縮したもの。

しだれ「歌詞には過去の曲のフレーズも入っていて、とにかく深く感情移入ができる曲。〈だつりょく〉というコンセプトがヒザから崩れ落ちるような絶望だとしたら、〈げきじょう〉はそこから強い気持ちを持って立ち上がろうという意志。この曲だけでなく、苦しみながらも立ち上がろうともがいてきた私たちのストーリーを映し出しているのが今回のアルバムだと思います」

 しだれの常軌を逸したシャウトも聴きどころな“Primal Three”、メイが「自分のなかで色っぽさをイメージして歌ったんです」という“白と黒と嘘”などその他の新曲群に加え、“MISS SINS”“Loud Asymmetry”といった昨年発表したシングル2枚からの楽曲はメイのヴォーカルに替わった新ヴァージョンでのお届け。アルバムを引っ提げての大々的なツアーも近日発表されるようだが、充実したアルバムを手にして、さて、つれづれの次なる野望は如何に?

しだれ「ようやくふりだしの地点に着けたっていう感覚です。なので、当面の野望は、次のツアーにどれぐらい来ていただけるか。とにかくいまはみんな調子がイイので、期待して損はないと思います!」

ゆくえしれずつれづれの作品を一部紹介。