自身の黄金律を崩し、〈新しい感覚〉に触れて完成させた全11曲。多彩な色合いを帯びて躍動するサウンドのなか、常にやってくる未来にはみずからの歴史と経験、そしてロマンが映し出されていて……

 「最近、ワークアウト中に聴いているんですけど、まだ違和感があって(笑)。なんか、自分たちのアルバムじゃない感じがするんですよね」(Aiji、ギター)。

 「このバンドを12年間やってきたなかで、一番どういうものが仕上がるのかわからなかった」(maya、ヴォーカル)。

LM.C FUTURE SENSATION ビクター(2018)

 メンバー2人が口々にそう語る、LM.Cの新作『FUTURE SENSATION』。今回は完成してから1週間後の取材だったこともあり、「まだ客観的になれていないところもあるとは思う」とのことだったが、Aijiの言う〈違和感〉にはそれ以外にも理由がある。

 「今までは自分たちの黄金律みたいなところで、必ずバランスを取ってきたんですよ。それが今回は、それが崩れているというか、あえて崩したというか……」(Aiji)。

 「かといって、何かを大きく変えたわけでもないし、前衛的な音楽がやりたいとは1ミリも思っていないから、今までのLM.Cで全然いいんですけど。ただ、〈未来感〉というか……いわゆる〈FUTURE〉という言葉そのものの意味ではなく、〈新しい感覚〉という意味での未来を、自分たちのなかでちょっと感じたかったところはあったのかもしれない」(maya)。

 そんな今作の制作にあたってまず書き下ろされたのは4曲。骨太なバンド・サウンドが疾駆するリード・トラックの“ChainDreamers”と、Aijiのギターが警告音のようにリフレインするヘヴィーな“Virtual Quest”、感傷的なエレポップ“Intersection”に、ストリングスを配したシリアスな“Dystopia”という、より洗練された彼ららしさを感じ取ることのできる楽曲たちだが……。

 「他の曲の呼び水的なものとして書いてみたけど、特に見えてくるものはなかった(笑)。ただ、前作よりも躍動感とかダイナミクスみたいなものはすごく意識していたので、それがバンド・サウンドであろうが、打ち込みであろうが関係なく、どの曲もこれまでで一番エモくて生々しいものにはなっていますね」(Aiji)。

 そうした共通のトーンはありつつも、ダンスビートの上でハードなギター・リフが踊る“Door!”や、ダーク・ファンタジー的な世界観のラストでシンフォニック・メタルな展開に雪崩れ込む“Hollow Hotel”など、「バンドだけどバンドじゃない、2人組という利点を活かしたアレンジ」(Aiji)がそれぞれユニークで、なんとも彩り豊か。そのなかでも新たな試みを思わせるのが、アルバムのオープニングを飾る“In Future, New Sensation”だ。聴けばたちまち脳が覚醒するような感覚に陥るサイバーなサウンドを背に、mayaはポエトリー・リーディングに初挑戦している。

 「『FUTURE SENSEATION』を日本語で説明するのであれば、この歌詞なんですよね。〈未来〉って曖昧でよくわからないけど、その曖昧な感覚をそのまま言葉にできたなと。たまたま閃いたポエトリー・リーディングという手法がうまくハマりました」(maya)。

 かなりエネルギッシュな一枚となった本作だが、その印象をさらに強力なものにしているのがヴィヴィッドなジャケット。デザインを手掛けたのはなんと、あの横尾忠則だ。

 「自分の知り合いにお医者さんがいて、その方の研究室に前作『VEDA』のLPサイズの豪華盤を置いていたんですけど、その先生が横尾さんとお友達で。で、横尾さんが研究室に遊びに行った時に、『VEDA』のジャケットを気に入られて持って帰られたらしいんですよ。その話を聞いて〈マジですか!?〉って。それで、新作のジャケットをお願いしたら引き受けてくれるかな?ってオファーしてみたら、引き受けてくださって」(Aiji)。

 ちなみに『FUTURE SENSATION』というワードは、横尾氏のアトリエを2人で訪ねた際に閃いたそうだ。

 「時間の概念としては過去も未来もあるんだけど、それこそ曖昧じゃないですか。だから、未来はこの瞬間に起こっているというか。常にやってくる未来を良くするためには、やっぱり今をハッピーでいることが大切なんだなっていう、これまでLM.Cが常々発信してきたメッセージに繋がっていて。だから、今までの歴史と経験に後押しされて出来た作品だとは思いますね」(maya)。

 制作中にインスパイアされた音楽はあったのかAijiに訊いてみたところ、「最近は過去の自分たちの音源をよく聴いてて、そこから影響を受けていると思う」とのこと。過去の自分たちに、今の自分たちはどう向き合うのか――『FUTURE SENSATION』では、過去を更新していくことで拓かれていく彼らの未来が、力強く鳴らされている。

 「自分たちを更新していくことって、外の人からしたら別にどうでもいいことだと思うんですよ。ただ、何を思って音楽を生んで、形にして、発信していくかを考えたときに、少なからず自分たちの気持ちのなかだけでも、何かを更新していくところにロマンを抱いていかないと続けられないなって。そこを諦めると楽しくないのかなって思うんですよね」(maya)。