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変わらないようで少しずつ進化してきたジェイソンの音楽ヒストリー

 77年にヴァージニア州で生まれ、地元のスターであるデイヴ・マシューズを聴いて育ったジェイソン・ムラーズのサクセス・ストーリーは、サンディエゴへ引っ越したところから始まります。彼はサーフ・スポットとして有名なオーシャン・ビーチにあるカフェでライヴを行うようになり、メジャー入りの切符をゲット。フォーク~ブルースを咀嚼したポップなサウンド、ポジティヴな歌詞、ラップ交じりの歌唱――デイヴ・マシューズ・バンドを手掛けるジョン・アラジアがプロデュースした2002年の初作『Waiting For My Rocket To Come』(リイシュー求む!)の時点で、ジェイソンの基本スタイルは確立され、前年にデビューを飾ったジョン・メイヤーやジャック・ジョンソンと共に、普段着系のアコースティックな男性シンガー・ソングライター人気を引っ張っていくわけです。

 続く、スティーヴ・リリーホワイトと手を組んだ2作目『Mr. A-Z』(2005年)は前作の路線を踏襲しつつも、レゲエ要素がより顕著に前へ出てきたり、ラテン音楽的な哀愁を滲ませたりと曲調が多様化。そして、マーティン・テレフェを指揮官に迎え、ジャジーな意匠も加わった3作目『We Sing. We Dance. We Steal Things.』(2008年)でグラミーを獲得しています。日本でもたびたびCMソングなどで使用されている“I'm Yours”がここに入っていることも補足しておきましょう。

 その後、髪と髭を伸ばし、ヒッピー的な出で立ちでファンを驚かせた2012年作『Love Is A Four Letter Word』では、社会的なメッセージも込めてリリック面で冒険。そこでの挑戦をゴスペル調の“Back To Earth”などに結実させた2014年作『Yes!』は、チェロやシタールを導入しながらテンポダウンして壮大な音世界を描き、落ち着いた大人の魅力をアピールする一枚に。ただ、〈やっぱりウキウキするようなラヴソングが聴きたい!〉と願う女性リスナーが多かったのも事実で、今回の『Know.』はそんな皆さんの欲求もきっと満たしてくれるはずですよ。 *山西絵美

ジェイソン・ムラーズのアルバム。