夢と現実、永遠と儚さ、絶望と祈り――それらを描きながら聴き手に寄り添う糸奇はなの1stアルバム『PRAY』

歌唱、作詞、作曲、編曲、打ち込み、楽器演奏(ピアノ、フルート、メロディカなど)をひとりでこなし、漫画やイラストを描いて、版画や刺繍もするマルチな表現者。そんな糸奇はなが1stアルバム『PRAY』を完成させた。

糸奇はな PRAY PHANTOM LILY(2018)

大学で声楽を学んでいた4~5年前に書かれたという“きみでないのなら”(MVは糸奇が膨大な絵を描いて動かしたものだ)や“四角い世界”、2016年にシングルで発表した“体内時計”や“ROLE PLAY”といった曲から、昨年放映されたTVアニメ「魔法使いの嫁」EDテーマの“環 -cycle-”(ZABADAKの吉良知彦が世に残した未発表曲)、ゲーム界のカリスマ的プログラマーであるトビー・フォックスが糸奇の曲と声に惚れ込んで楽曲提供した“74”といった最近の曲まで全12曲を収録。1stアルバムにして、糸奇のこの約5年間の集大成だ。

「長い間あたためていた曲が多いので、自分の根っこをやっと出せた気持ちです」と彼女がそう話す作品『PRAY』には、西洋歌曲やクラシックをベースにした美しくも哀しい曲があれば、ドラムンベース的なビートがスリリングな曲もあり、夢と現実、永遠と儚さ、絶望と祈りが混在して描かれている。夜から朝に向けて空の色が変わる時間に聴いてほしい。