Photo by Yuka Yamaji

“smart simplicity” の発見。

 アルフレッド・ロドリゲス・トリオが再び来日した。前回の来日時に録音を終えていたアルバム『ザ・リトル・ドリーム』が国内発売され、レコーディング・メンバーによる改めての日本公演である。今回はブルーノート東京での公演後、インターナショナル・ジャズ・デイの一貫としてお茶の水で開催されたJAZZ AUDITORIA 2018にも参加、エリック・宮城率いるビッグバンドに客演し会場を沸かせた。

ALFREDO RODRIGUEZ The Little Dream Mack Avenue Records/キングインターナショナル(2018)

 4枚目にして改めてトリオ、だからデビュー当時に回帰したかのような印象があると伝えると「編成だけをみると確かにそういう印象を持たれるかもしれません。演奏したいことは変わっていないと思いますが、アプローチは大分変わってきたと思います。もともと僕はパーカッションを習っていたからでしょうか、トリオで演奏してする時に限らず打楽器を演奏している、そんなイメージがあります」

 アルフレッドのトリオには、他のトリオでは体感できない独特の時間が流れているような気がする。例えば、マーク・ターナーのカルテットのようにメンバー4人の確固たるインディぺンデンシーが創る時間のレイヤーと比較するとわかりやすいかもしれない。「説明することはとても難しいけれども、リズムやグルーヴのインタープレイというのでしょうか」。なるほど、アンサンブル中に彼らがディールしているのは時間の感じ方なのだろう、でも暗にそれがジャズじゃないのかと言われた気がした。

 思い起こせば、メロディをシンプルに歌わせる曲を書くのに、リズムが複雑なのはどうしてなのだろうかと毎回質問し、いつも「自然にそうなる」という答えを聞いているような気がする。《ファンタナメラ》をギトギトにアレンジして演奏したかと思うと、とてもシンプルに《ベサメ・ムーチョ》を歌いあげる。ルンバやソン、キューバの伝統音楽やポピュラー音楽に真摯に向き合う姿勢も「自然とそうなる」からなのだろう。次から次ぎへと湧いてくるナゼ? という質問は、次から次へと空振りにおわり、同じ謎が繰り返される。

 シンプルなメロディを、あなたらしいわかりやすいハーモニー、ケーデンスが運ぶ、倍音純度の高い美しい音楽ですねと伝えると嬉しそうに「ありがとう」と答える。そして迂闊にも「どうして?」と口走ってしまった。果たして彼は「自然と」という、のだ。モーツァルトのように、賢い簡潔さを身につけた音楽なのだから、作曲家のあなたは子供のように無邪気な受け答えでいいのだ。次作は、パーカッショニストのペドロ・マルティネスとの共作になるという。これまた楽しい組み合わせだ。何故?楽しい⁇「自然と」。