COLUMN

アリアナ・グランデ『Sweetener』 待望のニュー・アルバムを迎えるにあたっての近年の激動を振り返ろう

アリアナ・グランデ『Sweetener』 待望のニュー・アルバムを迎えるにあたっての近年の激動を振り返ろう

未曾有の悲劇からプライヴェートの幸せまで、さまざまな出来事を経験したアリアナ。待望のニュー・アルバム『Sweetener』は愛と平穏を願う癒しの一枚となる……

 一口に〈2年ぶりのアルバム〉と言ってはみても、前作にあたるサード・アルバム『Dangerous Woman』リリース後の2年間に起こった出来事の数々はアリアナ・グランデの心に深く深く刻み込まれているはずだ。世界に愛される実力派のディーヴァとして順風満帆のキャリアを構築してきた彼女だが、さまざまな経験を通して、「自身の世界が180度ひっくり返るくらい変わった」という。

 言うまでもなくその大きなひとつは、昨年5月22日に彼女が英マンチェスター・アリーナで行ったコンサート終了後の爆破テロ事件だろう。このテロでは22人が命を奪われ、多くの観客が怪我を負う悲劇となった。これによって世界各国で行われる〈Dangerous Woman Tour〉は一時中断となるも、犠牲者のために基金を設立したアリアナは、6月4日に同じマンチェスターでチャリティー公演〈One Love Manchester〉を開催。ジャスティン・ビーバー、ケイティ・ペリー、マイリー・サイラス、ブラック・アイド・ピーズ、アッシャー、ナイル・ホーランら多くのアーティストと共にテロに屈しない姿勢を示し、そこで最後に歌った“Somewhere Over The Rainbow”はチャリティー・シングルとして配信もされた。今年に入ってからのTIME誌のインタヴューでも「失ったことや痛みと多くの人が闘っているわ。乗り越えるのは永遠にかかる」と振り返っているように、一連の出来事がその後の彼女の意識や考え方に大きく作用したのは言うまでもない。

 一方でプライヴェートでも彼女にさまざまな変化があったのはご存知の通りだ。『Dangerous Woman』リリース後の7月には交際していたバック・ダンサーのリッキー・アルヴァレスと破局し、8月からはメジャー・デビュー曲“The Way”(2013年)で共演して以来の縁となるラッパーのマック・ミラーとの交際が公にされた。その間のテロ事件を経て仲は深まっていったようにも見えたが、今年5月には破局が報じられ、直後に「サタデー・ナイト・ライブ」で知られるコメディー俳優のピート・デヴィッドソンと交際が発覚するや、翌6月にはスピード婚約で驚かされたのも記憶に新しいところだろう。

 もちろん、ゴシップ的な部分はさておいて楽曲リリースという側面だけで見ても、ジョン・レジェンドとデュエットした映画「美女と野獣」の主題歌やスティーヴィー・ワンダーと共演した映画「SING/シング」の挿入歌“Faith”、さらにはカシミア・キャットやカルヴィン・ハリスとのコラボも実現させ、音楽的に実りの多い2年間だったことも忘れてはならないのだが、いずれにせよ、そういった諸々の転機に前後して制作されていたのが、ニュー・アルバム『Sweetener』というわけである。

ARIANA GRANDE Sweetener Republic/ユニバーサル(2018)

 アルバムからの先行シングルとして4月に発表された“No Tears Left To Cry”は、〈最高な私たちはヘイトに関わっている暇なんてない〉とポジティヴに強い気持ちで生きることを歌ったマックス・マーティン&イリヤ制作のアップ・チューン。虹色の光が当たった同曲用のヴィジュアルは、先述の“Somewhere Over The Rainbow”の多様性を肯定するアンセムとしての側面にも通じる意思表示なのかもしれない。その後はトロイ・シヴァンの“Dance To This”やニッキー・ミナージュの“Bed”といったビッグな客演を挿み、6月には逆にニッキーを招いた“The Light Is Coming”を公開。こちらはファレルが昨年のN.E.R.D.曲に続いて往年のネプチューンズ的なプロダクションを提供し、ダンスホール風味もあるブーティーなノリが快調な一曲だ。

 そして、7月に届いたばかりなのが正式なセカンド・シングル“God Is A Woman”で、こちらは引き続きイリヤの手掛けるディープでスペイシーなミッド。フェミニスト的な内容かと思いきや〈私のことを愛しすぎて、神は男性じゃなく女性だと思えてきたでしょう〉と囁くラヴソングに仕立てられている。

 現時点で上記の3曲しか聴けていないものの、アルバムへの期待が高まるのは言うまでもない。表題を直訳すると〈甘味料〉のことだが、〈sweeten〉には〈(状況などを)良くする〉という意味がある。TV番組で「私のアルバムがみんなの癒しや慰めになればいいなと思っています」と本人が発言している通り、これは〈状況を良くするもの=癒し〉という意味の込められた表題なのだろう。アリアナが願う普遍的な愛のメッセージを真正面から堪能したい。  

アリアナ・グランデが参加した近年のサントラを一部紹介。

 

『Sweetener』に参加したアーティストの作品を紹介。

 

次ページアリアナの歴史を形成したオリジナル・アルバムと主要な客演作!