INTERVIEW

ceroも支える才媛、角銅真実が新ソロ作を語る 「過去と繋がっていくことはない。今、今、今なんです」

角銅真実 『Ya Chaika』

〈さかなのおなら〉で、大学の図書館でボロボロ泣きました

――角銅さんが、目標にしているような作品や作家はいますか?

「ない。ないです。誰も知らないもの、びっくりするような豊かなものができたらいいなと思ってます。でも、音楽じゃないけど、写真家のトーマス・ルフの〈ヌード・シリーズ〉という作品群には本当に感動して、ファースト・アルバムのジャケットの参考にしました。私も自分の作品で、誰かをそんな気持ちにすることができたらいいって思ってるんですけど……それが〈さかなのおなら〉なんです」

――〈さかなのおなら〉(笑)?

「アルバムに入っている“-Tuning-”っていう曲は、もともと〈さかなのおならは(Do you know how the fish fart is?)ってタイトルだったんです。そこから_(アンダーバー)になって、無題になって、最終的に“-Tuning-”になった(笑)」

――そんな秘密があったとは。

「大学生のときに〈サンマはおならをする〉〈そのおならはすごい高周波で海の中で鳴っていることが判明した〉っていうニュースを見て。それを知って私、大学の図書館でボロボロ泣いたんです(笑)。自分が行ったこともない海の底で魚がおならをして、しかもそれがすごく高い音で〈プッ〉とか〈プワー〉って鳴っているということに反応してしまって。〈聴きたい。どこに行ったら聴けるんだろう?〉〈私もさかなのおならみたいな音楽をやりたい〉って強く思ったんです。

私がなぜそこまで反応したかというと、自分が知らない、その場で思い出しもしなかったような海の底という遠い場所で鳴ってるその音が、聴こえないけど聴こえた気がしたからなんですよね。距離を超えてそこまで想像させられることに感動してしまったんです」

――その感激を、今回思い出したということなんですね。

「“-Tuning-”はハーモニカを吹きながら歌ってるんですけど、買ったばかりのハーモニカをふと声を出しながら吹いてみたらめちゃ楽しくて、そんなの初めてだったし、それをボイスメモで録音したものを後から聴いて〈いいな〉と思ったので、アルバムに入れたんです。最初は吹きながら何かを確認している感じが〈いつか想像した魚のおならを探す過程みたいな曲だな〉と思ってタイトルつけたのですが、いつかまた作りたくなるときが来ると思って、〈今はまだやめとこう〉と。なのでタイトルも変えました。

今は社会と私の関係がうまくチューニングできなくても、その過程が見えるだけで楽しい、みたいな感覚もあって。それが現在の自分のモードなのかもしれないし、キーワードになる言葉かなと思って、“-Tuning-”とつけました」

――〈社会〉っていうのは、さっきも出てきたワードでしたね。

「社会っていうのが何なのかはっきりはわからないけど。あと作品を作ってるときはすごく孤独じゃないですか。だから〈孤独だなあ〉って思いながら作りました(笑)」

ロジックを天然で超越する

――でも、そんな孤独を感じつつ、手伝ってくれる人たちはすごく増えてるわけですよね。アルバムもその積み重ねで出来たわけだし。

「そう! 誰のことも信じないし、このままひとりで消えてしまいたいと、夜とかに毎日思うんですけど、気づいたらこんなアルバムになってました。参加ミュージシャンもすごく多いですし(笑)。孤独だって思うのに、こんなにたくさんの人が一緒に音を出してくれている。だけど、それは誰でもいいわけじゃなくて、この人にここでこういうのをやってほしいというのが絶対にあって、その音を出してもらうまでの関係性を作る過程があるんですよね。

だって、他人は勝手に裸にできないじゃないですか。音を出してもらうって、体やサムシングを曲やその場所に向かって開いていただくことだとも思うし。音楽で関わってくれている人全員に感謝しています」

――外との関わりが社会だとしたら、近年はポーランドや韓国など海外でのライヴもやられていますよね。

「海外でのライヴは、楽しいです。お客さんの反応も日本とまた違っておもしろくて、みんなすごく感想を言ってくれるんです。でも、一番楽しいのはPAの人とのやりとりで、PAさんによって音楽ってすごく変わりますよね。私は天井から楽器を吊り下げて揺らしたり、場所全体を使って演奏するようなショーをやったんですけど、そういうのって、人によっては〈えっ?〉って感じじゃないですか?」

――ああ、そうですね。すぐには理解してもらえない場合もあるかも。

「海外のPAの人は、私のことも当然知らないし、そこからその人との関係を作らなくちゃいけない。でも、その関係の構築の仕方がすごくおもしろかったです。最初は、PAさんが普段どういう音楽を聴いてるのかという話から会話を始めて、自分はこういう者で、こういうことがやりたくて、みたいな感じで自分を紹介して。〈誰も聴いたことのないような音響をいっぱい作りたいから、無理なことがたくさんあるかもしれないけど、とにかく一緒に実験に付き合ってくれませんか?〉って話していくんです。私はロックが好きなPAさんと相性がいい気がしますね」

――それは意外ですね。

「ポーランドでは2か所の美術館でやったんですけど、片方のPAさんとは〈どんな音楽が好きなんですか?〉〈一昨日セパルトゥラ観に行ってきた〉〈あたしもめっちゃ好き、セパルトゥラ!〉〈マジで?〉みたいに盛り上がって(笑)。そこでわーっと向こうが心を開いて興味を示してくれて、〈いいショーにしような! いろいろ試そう!〉って言ってくれて、好きなものを共有し合えるというか。〈ロックありがとう〉って思いました(笑)。そういうやりとりがいちばんおもしろかった」

――そういう体験があると、またやりたくなりますよね(笑)。

「話す言葉が違う人との制作も、もっとやってみたいです。ポーランドに行くことになったきっかけは、ワルシャワに住んでいる女性アーティストの映画音楽を担当したからなんですけど、その方との英語でのやりとりもすごくおもしろくて。彼女もいろんなロジックを天然で超越する人で、そういうところにシンパシーがあるというか、やりとりがしやすかった。

日本だと、何かうまくいかなかったときやそういう雰囲気のとき、エクスキューズとして〈私、頭がパーだから。てへっ〉って言わなきゃいけなかったり、状況のための言葉や態度が必要だったりする。だけど、その人にはそういうのがまったくなかったんです(笑)。パーとかプーとかは関係ないというか、そうでない部分にすごく向き合ってくれたのもあるし、同じ方向を向いてやるべきことややりたいことに集中してやりとりができた。

去年、音楽で関わった舞台『羅生門』のイスラエルの演出チームの人たちとのやりとりもそうでした。〈てへっ〉なしで向き合えて、ダイレクトに自分のことを伝えてもいいのが本当に楽で。〈こういうふうにやってもいいんだ!〉って思いました。そうすると行きたい場所への距離が近いし早い気がしますし、その速度のままぐるぐる迷うのも楽しいです」

※シアター・コクーンで行われた百鬼オペラ「羅生門」主演は柄本佑、満島ひかり、吉沢亮。阿部海太郎音楽監督を務め、角銅は演奏陣として出演した

――そういう意味では、ファーストはその〈てへっ〉を感じさせながらも、そこを乗り越えていく音楽という面もあったかもしれないですね。『Ya Chaika』を作ったことや、この1年の経験を経て、これからもっと自由になれるんじゃないですか?

「もっと自由になりたいです。来年はポーランドでのコンサートを観てくれた女性ヴォーカリストの人と一緒に作品を作れそうで、それもまたおもしろくなりそう。あと、ファーストが2017年7月7日リリースで、今回は2018年8月8日なのがいいなと思ってて。だから、来年2019年は9月9日にアルバムを出すかもしれません(笑)」

――角銅さんの音楽って、〈現代音楽〉とか〈ニューエイジ〉にカテゴライズされそうですけど、『Ya Chaika』には、〈J-Pop〉の棚にもポンと収まりそうなおもしろさがあるんですよ。そして、うっかりみんなの感覚の扉を開いてしまう。

「〈うっかり〉っていいですね(笑)。〈うっかり〉、いっぱい起きてほしい。楽しみです」

 


角銅真実がリスペクトする5人のアーティストから
『Ya Chaika』へのコメントが到着!!

柔らかいベッドのなかで、ずっと観ていたい夢のような。
目が覚めた時にはうっすらとしか思い出せないけれど、なにかうれしかったような、懐かしかったような、
ちょっと怖かった?きれいだった?そんなストーリーを鮮明に観たくて、もう一度眠る。

Wata(Boris) Boris (@Borisheavyrocks) - Twitter

ものの焦点を合わせる時に その瞬間にものすごいスピードでトンネルを通り抜けるような その周りが本当にとても美しいので ゆっくりと引き伸ばしてみた 感じる 角銅さんから放たれた音や声を聴いているとそんなことを思います 新しいアルバム素晴らしくおめでとうございます!

嶺川貴子 takako minekawa (@tm_meandcat) - Twitter

ジャケ買い100パーセントのルックスで、視聴したなら1つぽっきりの音で旅にでられる
なんの準備もいらず、気づけば風の吹く丘の上、車窓からの景色、自分の都合で何処へでも連れ出してくれる音たち。私の皮膚が呼吸して”今、ここに在る”を感じる それで表情が豊かで思わず笑ってしまう このアルバム聴いて 笑うを共有したい。

三東瑠璃 Ruri Mitoh (@rurimi10) - Twitter

Ya Chaika is a very sophisticated, gentle record. its so fragile that it feels that you want to hold it and carefully bring it to to the sun and let it out as a butterfly. Very intimate —it feels that Manami is your old friend and she is whispering you stories or a secret right in your ear. And every story is different—sometimes absurd, sometimes weird and ridiculous, sometimes melancholic, sometimes full of happiness—life as it is. This record is full of freedom— it grows and shines as it is, very flexible and alive. You can definitely feel Manami’s contemporary classical background. But the way she turns it into a pop music is brilliant—instead of making it complicated and abstruse for listeners — she makes it very understandable and friendly. she builds the textures of sounds in space and time with such ease that you start to feel that its all happening in your room and you can relate to every sound and note surrounding you. ❤ Kate NV

Kate NV k a t y a n v (@kattique) | Twitter

小田朋美 http://odatomomi.com

 

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