INTERVIEW

東京文化会館〈SALOME/サロメ〉 人形劇俳優たいらじょうと、2016年に続きタッグを組んだ宮田大にインタヴュー

©Daisuke Omori

音楽劇に広がる可能性を追求する~人形劇俳優たいらじょうと、2016年に続きタッグを組んだ宮田大による『SALOME/サロメ』

 物語のすべての登場人物をたった一人で演じるという“魔法”を、毎回驚くようなアイデアで見せてくれる人形劇俳優たいらじょう。彼が東京文化会館小ホールに初めて登場したのは2014年。古楽アンサンブルとともにギリシア悲劇『王女メディアの物語』を上演し、愛と裏切りと情念が渦巻く世界を清らかに描き切った。続く『Hamlet』(2016)では、チェリストの宮田大と組んでさらなる音楽劇の可能性を追究し、ラストシーンの仕掛けに驚愕した客席は熱狂に包まれた。

 たいらじょうが前二作に続いて放つのは、ワイルドの戯曲『サロメ』。『Hamlet』に続いて宮田大を迎え、新たにハープ山崎祐介、コントラバス谷口拓史、オーボエ若山健太が参加。たいら自身の翻訳によるオリジナル台本と宮田による選曲はすでに完成し、来年1月の上演に向けて着々と準備が進められている。

 「2006年から『サロメ』という作品には取り組んでいたのですが、当時24歳だった自分に手に負えるテーマではなかったのです。でも、いつかは作らなければと思っていました。今回チャンスが与えられて『作品が僕を待っていてくれたんだ』と実感しています。ワイルドの戯曲は、英語版を元に僕自身が翻訳しました。聖書がもとにある作品なので、聖書の解釈から始めたのですが、とても納得のいく脚本が書けましたね(たいら)」

 「『サロメ』のお話をいただいて、半年から一年かけて選曲を進めてきました。僕がリストアップした曲を、台本を見ながらたいらさんに聴いていただいて、ひとつひとつの場面にはめ込むように決めていった。『ハムレット』のときはプロットしかなかったけど、今回は台本が早く出来ていたのでとてもスムーズに進みました。トータルで20曲ほど登場するのですが、すべて編曲が必要なのです(宮田)」

 『サロメ』に登場するカルテットは実にユニークだ。宮田大のチェロに加えて、コントラバス、ハープ、オーボエという、他に類を見ないイレギュラーな編成となる。

 「これだけは絶対に入れてほしい! という楽器を宮田さんにリクエストしたんです。僕はオーボエ・フェチ(笑)。あの空気が揺れるような音がたまらなく好きで。コントラバスが入ると低音で音楽を支えてくれる感じが出るし、この二つは僕の方からぜひ入れてほしいと提案したんです。ハープは宮田さんのほうから提案していただきました。ハープがサロメで、チェロがヨカナーン、オーボエがサロメのお母さんで、コントラバスがヘロデ王です。セリフでは伝えられない感情を音楽で伝えていくことができるし、それでいて、お客さんに答えを与え過ぎない。想像力の入り込む余地を与えるんです(たいら)」

 既に完成したサロメの人形を見ていると、こだわり抜かれたたいらの美意識が伝わってくる。寡黙な表情には不思議な迫力があり、動き出すと人間以上にリアルな存在感を放ち始めるのだ。

 「僕の解釈ではサロメは16歳の少女です。ヴェールが出てくるのは、まだ彼女が初々しくて薄い皮しかまとっていない無防備な存在であることをヴェールが表しているのだと思います。今回の人形に関しては腕と頭だけ。ボディはないけど、お客さんは身体が見えてくる。舞台では一番美しい少女の身体というのを想像していただけると思います(たいら)」

 たいらじょうの舞台では、つねに“愛”と“死”が描かれるのも大きな特徴だ。

 「死を描くことは、生きるということを考えるきっかけを与えてくれるんです。死を疑似的に舞台で経験することで、お客さんは『自分には命があるんだ』と実感できるし、『私には明日も命がある。この可能性を生かしてちょっと頑張ってみよう』と希望をもつことが出来る…死を描くことは演劇人としてのコアなのです(たいら)」

 『サロメ』は二日続けて観るのがおすすめ、と語るたいら。オペラでも演劇でも残酷な姫として描かれることが多いサロメが、魔法の手によって真実の姿を見せてくれる日が待ち遠しい。

 


平常 (Jo Taira)
人形劇俳優・演出家。1981年10月28日生まれ。北海道札幌市出身。ひとり芝居と人形劇を融合させた独自の表現方法を確立。脚本・演出・音楽・美術も手掛ける。何十もの役柄が一度に憑依する、目を疑う妙技。幾多のファンタジーを紡ぎ出す、唯一無二の芸術家。

 


宮田大 (Dai Miyata)
栃木県宇都宮市出身。9歳より出場するコンクール、第74回日本音楽コンクールを含むすべてに第1位入賞を果たす。2009年、第9回ロストロポーヴィチ国際チェロコンクールで日本人として初優勝。日本を代表する多くの演奏家・指揮者と共演し、国内外の音楽祭やソロ活動を活発に行っている。

 


LIVE INFORMATION

東京文化会館 舞台芸術創造事業
たいらじょう×宮田大アンサンブル「SALOME/サロメ」

○2019年1/19(土) 14:30開場/15:00開演
○2019年1/20(日) 14:30開場/15:00開演
会場:東京文化会館 小ホール

脚本・演出・美術・人形操演:たいらじょう
音楽監督・チェロ:宮田大
演奏:山崎祐介(hp)谷口拓史(cb)若山健太(ob)
www.t-bunka.jp/