2015年に実際に起こった無差別テロに遭遇し阻止した幼馴染みのアメリカ人3人のお話である。この映画が普通でないのは、職業役者でない実際の当事者が本人役で演じているという実験性と、もう一つはこの映画が〈英雄譚〉というよりは〈宗教劇〉に近い側面をも持っていることによる。例えば、登場人物にとって挫折と思われたことが、結果的にテロを未然に防ぐために必要な〈奇跡〉であったことが示される。この人間の意志を超えた〈意味〉〈運命〉といったものの不可思議さを94分という短さで簡潔に提示する演出の狂いっぷり! イーストウッド最大の問題作にして真の傑作である。