INTERVIEW

ReN『存在証明』 パフォーマーとしても進化した気鋭のSSWが、命を燃やした新作で証明するものとは?

ReN『存在証明』 パフォーマーとしても進化した気鋭のSSWが、命を燃やした新作で証明するものとは?

この一年でパフォーマーとしても着実に進化を遂げてきたシンガー・ソングライターが、〈身体に届ける〉〈心に届ける〉をテーマにした『存在証明』は何を証明する?

自分の状況をしっかり歌にしていく

 アコースティック・ギターと歌、ルーパーを軸にしたパフォーマンス、みずからの人生観を刻み込んだ歌詞、70年代の日本のフォークから近年のエレクトロまでを幅広く吸収したサウンドメイクによって注目を集めているシンガー・ソングライター、ReN。2017年6月にセカンド・アルバム『LIFE SAVER』をリリースして以降も各地の夏フェスで存在感を示し、自身初のワンマン・ツアーもすべてソールドアウトを記録するなど、確実に活動のスケールを拡大してきた。

 「『LIFE SAVER』を出してから、ライヴハウス、フェスなど、いろいろなところでパフォーマンスさせてもらって。自分が作った曲をどう表現するか? どんな曲があればライヴがもっと良くなるか?……ということをすごく考えたし、そこからたくさんのインスパイアを受けました。その一方では、いろんな場面でプレッシャーを感じたし、自分自身と深く向き合う時間もすごく増えて。この状況を打破するためには、自分の状況をしっかり歌にしていくしかない、という思いで今回の制作に入った感じですね」。

ReN 存在証明 booost music(2018)

 デジタル・シングル“Aurora”(AbemaTVオリジナル・ドラマ「声だけ天使」主題歌)を含む新作EP『存在証明』は、「クォリティーを上げること、新しいことにトライすることはもちろん、とにかくいまの自分を切り取った作品にしたかった」というReN自身の言葉通り、ソングライティング、サウンドメイクの両面において、現在の彼のスタンスが強く刻まれた作品となった。

 「〈いまの自分は何を歌うべきか?〉ということを考えながら制作していましたね。テーマとしては、身体に届ける曲、心に届ける曲の両方を入れることを意識していて。去年から今年にかけて経験したこと、考えたこともしっかり注ぎ込めたと思います」。

 そんな本作の在り方をもっとも象徴するのは、表題曲“存在証明”だろう。ReNのもっともベーシックなスタイルであるアコギと歌を軸にしたアレンジのなかで描かれるのは、曲名通り、〈自分の存在とは何か?〉という根源的な問いかけだ。

 「〈この曲が自分の存在証明です〉と提示したかったわけではなくて、ちょっと難しい話になっちゃうんですけど、〈存在証明〉という言葉の意味を自分なりに追求してみたんです。〈シンガー・ソングライターとして何を歌うべきか?〉とずっと考え続けているんだけど〈本当にこれでいいのか?〉と迷ってしまったり、他の誰かに自分を投影して〈どうして自分はこういうふうになれないんだろう〉と考えてしまうこともあって。でも、それはいろいろな要因でちょっとブレているだけで、自分の心の声に耳を向けてみれば、本当に叫びたいこと、いちばん大切なものはいつもそこにあることがわかるはず。それこそが存在証明だと思うんですよね、僕は。それは自分だけの感覚ではなくて、他の人もきっと同じじゃないかなって。僕は音楽というフィールドで戦っていますが、たとえば画を描く人も、会社に勤めている人も、それぞれの場所で壁を感じたり、〈これが自分の存在証明なんだ〉と実感する瞬間があるはずなので」。

 

命を燃やして走るという感覚

 やはりアコギの弾き語りをベースにした“僕のミニ四駆”も、ReNのアイデンティティーと強くリンクした楽曲だ。自身が幼少期に通っていた近所の模型店をモチーフにしたこの曲で彼は、過去と現在の自分をクロスオーヴァーさせながら、夢を追うこと、命を燃やして生きることの大切さを鮮やかに映し出している。

 「その模型屋さんは民家をそのまま店にしていて、靴を脱いで上がらないと、店主のおじいさんに怒られるんですよ。すぐ近くに駄菓子屋もあって、子どもの頃の自分たちにとってはすごく都合がいい、楽しい場所でしたね。お店はもうなくなったんだけど、そのときに感じたことを散文詩にして残しておいたんです。曲にするにあたっては、思い出をそのまま歌うのではなくて、いまの自分と重ねたくて。当時、ミニ四駆が大好きだったんですが、いま振り返ってみると、電池が切れる寸前まで同じスピードで走ること、右にも左にも行けず、ただ真っ直ぐ走るというシンプルさに惹かれていたと思うんです。いまの自分も電池を背負って走っているようなものだし、少しずつ消耗しているのも同じだなと。それをマイナスとして捉えるのではなく、大人になっても、命を燃やして走るという感覚を忘れないでいたいということを歌いたかったんですよね」。

 リード曲“Shake Your Body”は、80sディスコと現代的なエレクトロ・サウンドを融合させたダンス・チューン。ダンスホールで踊る人々を描いたリリックを含め、彼の言葉を借りれば〈身体に届ける曲〉ということになるだろう。

 「3、4歳の頃、ボニー・タイラーの“Holding Out For A Hero”をよく聴いていた記憶があって。世代的には80sを知らないんだけど、僕にとっては懐かしさを感じるし、ああいうテイストで曲を作ってみたいなと思ったんですよね。最初に作ったデモ曲はモロに80sだったから(笑)、いまの時代の要素を加えて、そこに自分の声を乗せて。いろいろと試行錯誤したけど、自然と身体が動くような曲になったし、ライヴでもイイ役割を果たしてくれると思います。ライヴでは楽曲をしっかり届けることも大事だけど、その場所、その時間を思い切り楽しむ感覚も必要だと思っていて。“Shake Your Body”のような曲があれば、ライヴの雰囲気も変わっていくでしょうね」。

 もう1曲、本作における唯一のラヴソング“How to Love”。美しく、叙情的なギターのアルペジオに導かれたこの曲でReNは、刹那的な恋愛の先にある、さらに奥深い愛について歌っている。

 「これまでのラヴソングは悲しい曲が多かったんだけど、“How to Love”では優しい気持ちを歌に乗せてみたくて。恋愛中にはいろんな感情が生まれるし、愛情があるからこそ、うまくわかり合えなかったときは〈どうしてこうなるんだろう?〉とひとりで気持ちが沈んでしまうこともある。どうすれば相手の心を理解して、愛してあげられるのか——単なる好きや嫌いの先にある、もっと大きい愛をテーマにしたかった曲ですね」。

 曲中で表現される感情の奥行き、そして、生々しい歌を際立たせるサウンドの進化。今回の『存在証明』によってReNは、みずからのスタイルをさらに追求することで、その音楽性を確実に向上させてみせた。「楽曲制作もライヴも、限界を決めないでやっていきたい」と決意を語るReN。シンガー・ソングライターとして、さらなる飛躍を期待したい。

関連アーティスト
ReN
40周年プレイリスト
pagetop