リヴァプールでシークレット・ライヴをやったりと相変わらず元気なサー・ポールの5年ぶりとなる新作は、アデルやベック仕事で知られるプロデューサーのグレッグ・カースティンと組み、非常にポールらしい一枚に仕上がった。“I Don't Know”や“Hand In Hand”のような誰にでもわかる美しいメロディー、ビートルズ・ファンの心をくすぐる小技や挑戦的な音使いなど、難しいことをいとも簡単にやる彼ならではの才がどの曲にも溢れ、架空の旅を想定したというこのアルバムは心地良いことこのうえない。耳通りは極めてマイルドで穏やかだが、ソングライティングから演奏、楽器の選択まで随所にポール流の遊びも詰まった傑作だ。さて、今秋に決定した東京&名古屋ドーム公演ではここから何が聴けるか。