多様な仕事を経験してトラックメイカー/MPCプレイヤーとして飛躍したSTUTSが待望の2作目を完成した。その名を広めた人気曲“夜を使いはたして”を筆頭にかなり大胆なネタ使いを見せてきた印象の強い人だが、今回はラッパー/シンガーのみならず、多彩なプレイヤー陣のフュージョン的な演奏からダイナミズムを取り込み、いわゆる〈音楽的〉な方向へ意欲的に舵を切っている。バンコクのプム・ヴィプリットを迎えた“Dream Away”がエモいピアノの響くインスト“Pursuit”へ流れ込む序盤から、後半の夢心地なハイライトとなる表題曲まで、映像的な意匠とファットなビートの推進力が風景を美しく切り替えていく様は圧倒的。ミュージシャンシップへの開眼が表現の本質と強固に結び付いた傑作だろう。