バレンボイムにとって四半世紀ぶりとなるブラームス交響曲全集は、指揮者としての彼の業績を確固と銘ずるスケールを備えた必聴の一組。シカゴ響の機動力を活かした93年全集にさらに入念の度を加えたかのような音楽の濃い深まりがずっしりと聴き手に迫る。彼もプランに加わった新ホールでの録音であることを含め、まさに集大成を期したプロジェクトだ。第1番でのもうひと粘りを重心低く重ねる急迫と安息との緩急の手さばきは実に揺るぎがない(特に終楽章)。第2や第4での剛柔を幾重にも織り合わせる細密な表現も印象深い。腹に堪える重厚なブラームスを当代の演奏で堪能したい聴き手にとって福音というべきセット!