BACKGROUND OF THE ABOUT MUSIC
the band apartが消化、吸収してきた音楽

 the band apartが世の中に知られるようになった2000年代前半ごろ、彼らの音楽性に対してよく言われていたことが〈フュージョンからの影響〉。当時の新進バンドにあまり見られなかった音楽性は、カシオペアなどがルーツではないだろうか、と探られた。また、巧妙な展開はプログレを思わせるところもあり、キング・クリムゾンやイエスなどをヒントに、彼らの音楽性が解析されたこともあった。その一方で、彼らはメタル・バンドのコピーをやっていた時期もある。彼らの高い演奏技術は、メタリカなどの影響も大きいかも知れない。

 彼らは世代的に、Hi-STANDARDに衝撃を受けて育ったバンドでもある。初期の歌詞が英詞のみだったところには、その影響が表れていると言っていいだろう。当時はHAWAIIAN6など、メロディック・パンクのバンドと対バンする機会も多かったし、いまもそういったシーンとの関係性は深い。のなかでも、テクニカルで先鋭的だったという意味では、先人であるREACHと結び付けて考えることもできる。同世代では、共にイヴェント〈mellow fellow〉も主催していたDOPING PANDAの名前を挙げておきたい。

 歴史を重ねていくうちに、英詞だけだった歌詞に日本語詞が採り入れられ、活動の形態も多岐におよぶようになって、ますますさまざまなルーツを採り入れだした彼ら。ソウルフルな歌声が持ち味であるヴォーカルの荒井は、ソロ・アルバムをリリースしたタイミングで、サザンオールスターズなどJ-Popの先人からの影響を公言している。また、アコースティックで活動するthe band apart(naked)名義でリリースしたアルバムでは、シュガー・ベイブの“DOWN TOWN”のカヴァーも印象的だった(ただし、この曲でのメイン・ヴォーカルはベースの原。彼もまた美声!)。さらに、ドラマーの木暮のルーツにはヒップホップが根強くあり、ビースティ・ボーイズなどの名前がインタヴューで出てきたこともあった。また木暮は、the band apart(naked)のレコーディングの際、現代ジャズの旗手であるロバート・グラスパー・エクスペリメントの一員であったデリック・ホッジのアルバムの音質を参考にしたと語っている。

 すべてをオリジナルに消化しているため、ルーツがダイレクトに聴こえるものは多くはないが、探っていくと本当にさまざまなジャンルの入り口が隠れているthe band apartの音楽。だからこそ、結成20周年を迎えたいまも、彼らに興味は尽きない。 *高橋

文中に登場したアーティストの作品を紹介。