INTERVIEW

オノマトペル『ツベラコベラ物語』 ものんくるら支える音楽家による男女ポップス・デュオ、デビュー!

オノマトペル『ツベラコベラ物語』 ものんくるら支える音楽家による男女ポップス・デュオ、デビュー!

大橋トリオやさかいゆうのコーラスも務めるシンガー・ソングライターの横沢ローラと、ものんくるやカラスは真っ白のサポートとしても腕をふるうジャズ・ピアニストの工藤拓人によって結成されたユニット、オノマトペル。変拍子や転調を大胆に取り入れた変幻自在な音楽性に、日本語にこだわった物語性豊かな歌詞が組み合わさって、ジャズをベースにしながら独自の歌の世界を作り上げている。

そんな彼らの名刺替わりの一枚といえるのが、ファースト・ミニ・アルバム『ツベラコベラ物語』だ。本作には、井上銘(CRCK/LCKS)、神谷洵平(赤い靴、サポートで星野源、矢野顕子など)、越智俊介(CRCK/LCKS、CICADA)などジャンルを越えたゲストも参加。多彩な曲が並び、まるで短編小説集を読むように曲ごとにさまざまな〈物語〉を楽しめる新作について、二人に話を訊いた。

オノマトペル ツベラコベラ物語 tuveracovera(2018)

普通の恋愛ものの歌詞を書いてるつもりなんですけどね……(横沢)

――ユニークなユニット名ですね。どこか童話っぽいような。

横沢ローラ(ヴォーカル)「〈ニャーニャー〉〈カチカチ〉〈キラキラ〉とか、そういう擬声語や擬態語のことを〈オノマトペ〉っていうんですけど、そこからとっているんです。私が言葉遊びで歌詞を作るのが好きで、そういう感じが表れたらいいかな、と思って」

――作詞は主にローラさんが?

工藤拓人(ピアノ)「そうです。僕が全然、歌詞が書けないので。もともと一緒にやることになった経緯というのが、僕がずっと歌もののユニットをやりたくて、そこで横沢と出会ったんです。だから最初の頃は、僕が書いた曲に彼女が歌詞を乗せる、というパターンが多かったんですけど、最近は横沢から先に歌詞やメロディーが来ることもあって、だんだん共同作業っぽくなってきました」

――横沢さんが書く歌詞は独特の世界観がありますが、歌ものをやりたいと思っていた時に、〈こんな感じの詩を乗せたい〉というイメージはあったんですか。

工藤「印象的な言葉が聴こえてくる歌詞が乗ってくれたらなっていうのは思っていましたね。横沢のオリジナル曲で蚊のお姫さまの曲があるんですけど(“Chiquita La Mosquita(チキータ姫のご乱心)”)、それを聴いた時、〈なんだこの突拍子もない曲は!?〉って思ったんです。そういう彼女の〈なんでこんな歌詞なの?〉みたいな歌が好きだったんです、もともと」

横沢の2012年作『ひねくれ猫のたわごと -The Twisted Cat-』収録曲“Chiquita La Mosquita(チキータ姫のご乱心)”
 

――普通のラヴ・ストーリーとはひと味違うような。

横沢「私は恋愛ものの歌詞を書いてるつもりなんですけどね。主人公が人間じゃないだけで」

――そこが大きな違いじゃないですか(笑)。

横沢「蚊のほかにも蜘蛛とか猫とか、〈斜め〉っていう概念が主人公の曲があったりもするんですけど(笑)。工藤から初めて曲をもらった時も、〈変わった歌詞をつけてほしい〉とか何も言われたわけではなくて、タイトルも〈kudo_original1〉〈kudo_original2〉とか、そんな素っ気ない感じだったんです。普通、歌詞の依頼をされる場合、曲のバックグラウンドとか、入れてほしい単語とか、イメージが結構決まってるなかで作るんですけど、工藤からは何も言われなかった。それって、好きにやっていいってことなんだなと思って」

――曲を聴いた印象で歌詞を書いた?

横沢「そうです、曲がちょっと変態な、〈これ、ヴォーカリストに歌わせるの?〉っていうようなのが多かったんです。音飛びが激しいうえに言葉を上手に入れないと口が回らないとか。急な転調というか、予測せぬ転調も多いから、それにわくわくして変な歌詞が出てきたっていう」

――変な歌詞を求めていた工藤さんも変な曲を作っていた。

工藤「変な曲をパスしたら、変な歌詞が返ってきてくれるだろうなと思って(笑)」

――今回のアルバムの一曲目“Clock to You”なんて、まさにそういう曲ですね。変拍子に乗ってローラさんの歌声がぴょんぴょん飛び跳ねるような。

工藤「そうですね。(音の)間の置き方とか、そういうところで印象的な言葉を当ててくれるんじゃないかな、と思ったんです。デモの時のタイトルは〈wabisabi〉で(笑)、わびさびがある(音の)空間になったらいいなと思って」

横沢「〈wabisabi〉なので、最初は〈わびさび〉っていう言葉の響きに近いオノマトペをいろいろ考えて、それを歌詞に入れようと思ったんです。〈パチパチ〉とか。でも、それでは作れないということになって、自分の好きなように書きました。

機械時計の女の子が主人公で、それは機械時計に閉じ込められた妖精かもしれないんですけど、その女の子が恋する相手が、機械時計の持ち主なんです。でも、機械時計の持ち主はめちゃくちゃモテて、機械時計の女の子は認識もされていない。モテてモテてしょうがない人に恋しちゃった可哀想な女の子の歌なんです」

オノマトペルの二人+細谷紀彰(ベース)でのスタジオ・ライヴ映像、1曲目に演奏しているのが“Clock to You”。『ツベラコベラ物語』収録曲“君への道しるべ”も3曲目に演奏
 

――そう聞くと、変拍子がドキドキして正確に時を刻めなくなった女の子の胸の鼓動のようにも思えてきますね。この曲では、CRCK/LCKSでも活動する井上銘くんがギターを弾いてますが、どういった経緯で彼に声をかけたんですか?

工藤とはジャズ・ライヴで共演したことで知り合いました。僕は時々ものんくるのサポートもしているのですが、彼らのアルバムで銘くんが参加してるものを聴いて、作品に対する色付けがとても上手だなと思っていました。“Clock to You”が出来た時、ジャズ・ギタリストに入ってもらいたいと思ったんですけど、すぐに銘くんが頭に浮かんだんです。シャレてるし、尖ってる部分もあって、すごく良い演奏だと思います」

 

歌詞のイメージは一切伝えずに曲を渡す(工藤)

――曲の良いアクセントになっていますね。ほかの曲についても伺いたいのですが、2曲目の“君への道しるべ”はドラムンベースみたいなリズムが印象的です。

工藤「横沢の声を聴いたときに、こういう無機質な、ちょっとダンス・ミュージックっぽいリズムも合うだろうなと思ったんです」

横沢「デモには(「スター・ウォーズ」の)R2-D2みたいな音が入ってたよね」

工藤「最初は、ふざけてロボットのノイズみたいなのを入れたりしてたんです。〈ピコピコ〉みたいな感じの音を」

横沢「デモを聴いて〈これは宇宙だ!〉と思って、(宮沢賢治の)『銀河鉄道の夜』と『スター・ウォーズ』、あと〈織姫と彦星〉の3つの話を合わせたような世界観の歌詞にしたんです」

――歌詞に「銀河鉄道の夜」に出てくる〈プリオシンの海岸〉が登場しますが、宮沢賢治の書くものは好きなんですか?

横沢「好きです。私が岩手と富山のハーフなので、家に『宮沢賢治全集』とか柳田國男の『遠野物語』があったんです。それを父がすごく推してきて、子供だったから素直に読んでいました。賢治は物語が宇宙と繋がってるところが好きでしたね。あと、ちょっと憂いがあるというか、とらえどころなく終わったりするお話も多くて、そういうところも。

今自分が書いている歌詞も、はっきり解決しない物語が多いんです。例えば戦争って、どっちが正しいって無いじゃないですか。立場によって違ってくるし。アメリカで音楽を勉強していた時は、自分が書いた歌詞をあまり理解してもらえなかったんです。〈これって結局、どっちなの?〉と言われて、〈人によってとらえ方が違うから〉って説明してもわかってもらえなかった。だから私は〈日本語で歌詞を書いて、日本で活動しよう!〉と思ったんです」

――言葉(歌詞)を大切にされているんですね。3曲目“記憶に灯るあかり”は、今回のアルバムで唯一、二人だけで演奏した曲ですね。

工藤「歌ものユニットをやるにあたって、〈情感豊かな曲を作りたい〉っていうのもすごくあったんです。これはそのコンセプトで書いた曲ですね。自分のなかで歌詞のイメージもあったんですけど、それは一切伝えずに横沢に曲を渡しました」

横沢「曲を受け取った時に〈難しいなあ〉と思ったんですけど、1フレーズだけすごく印象に残るフレーズがあって。そのフレーズを聴いた時に〈これは家に帰る曲だ〉と思ったんです。今オノマトペルのオリジナル曲は9曲ぐらいあるんですけど、そのなかでこの曲だけが人間を主人公にした曲なんですよ。というのも、虫が家に帰るところを歌詞にしても共感できないなって(笑)」

――帰巣本能で帰るだけですからね(笑)。

工藤「〈どこか大切なところに帰る〉っていうのを曲のテーマにしたことから、横沢が僕の子供の頃の通学路を絵に描いて、それをポストカードにしてくれたんです。僕、北海道の札幌出身なんですけど、通学路だったのが豊平川の流れる街で」

横沢「歌詞を書く時って、最初に風景が浮かぶんですよ。それを実際に絵に描いてみることもあって。この曲を聴いた時、『となりのトトロ』に出てくるバス停のイメージが浮かんだんです。お母さんと少女が立っていて、少女はバスに乗って故郷を離れていく、みたいな。私は東京生まれの東京育ちなので、曲のイメージに合うような田舎の風景が思いつかなかくて。

それで〈工藤の通っていた通学路を教えて〉って言って、それをGoogle マップで見て、〈ここだ!〉って思ったシーンを絵にしたんです。私、絵を描くのも大好きで。5月に“記憶にるあかり”と“百鬼夜行”の2曲入りのCDを200枚限定で売ったんですけど、その時の特典として、そのポストカードを付けました」

――その“百鬼夜行”が4曲目に収録されていますが、横沢さんが徳島で阿波おどりを見たことに刺激を受けて作った曲だとか。

横沢「そうなんです。私は弾き語りのライヴで、月に10日ぐらいあちこちへ行ってるんですけど、この曲をもらった時、徳島に行っていて。初めて阿波おどりを見たんです。夜中に誰かがお皿を叩き出すと、まわりの人達が笛を吹いたり、太鼓を叩き出したりして、子供も教育委員会のお偉い人も踊り出すんですよ。それを見て〈妖怪みたい……〉って思って(笑)。この人達は人間に見えるけど実は妖怪で、人間も、妖怪も、神様も、一年に一度、無礼講で集まって大切な誰かに会いに行くんじゃないかと。そういうストーリーで歌詞を作ったんです」

――作曲のイメージは?

工藤「アクロバティックな曲を作って、そこにおもしろい歌詞を乗せてもらおうと思ったんです。アルバムのなかで、いちばん拍子のチェンジが多い曲ですね」

横沢「いやあ、最初は歌いにくかったですよー。カラオケに入れて、みんなに歌ってほしい。そして、どれだけ難しいかわかってほしい(笑)」

――でも、すごく軽やかに、楽しそうに歌っているように聴こえますね。

横沢「だったら嬉しいです。難しいんですけど、音域に関しては自分の出しやすいところに収まってて、〈なんでわかったの!?〉って思いました」

工藤「そこは意識したから」

横沢「うそ!? そうなんだ。私、普段CMの曲を歌う仕事もしているので、いろんな歌を歌う機会があるんですけど、歌ってて一番美味しい音域がこの曲でフルに使われてて。難しいけど、歌いやすくはありましたね」

――変拍子のトリッキーなサウンドで妖怪の歌を歌う、というのがユニークですが、ちょっと矢野顕子さんの歌の世界に近いものも感じさせますね。

横沢「光栄です。ひとりで歌っていた時は言われたことなかったんですけど、工藤とやるようになってからよく、〈矢野さんみたい〉って言われるんですよ」

工藤「とくにこの曲とかはね」

――オノマトペルを始めてから、歌い方が変わったりしたのでしょうか。

横沢「変わったかもしれないですね。気持ちの乗せ方は変わってないけど。工藤の曲をいっぱい練習してきて、自分のキャラクターをこれまで以上に乗せやすくなりました。ただ、レコーディングでは一旦、表情をつけすぎないようにキャラは殺して歌っているんです。〈あんまりやりすぎちゃうと色モノになるから、もうちょっとクールめでいこう〉っていう工藤のディレクションがあって(笑)。“百鬼夜行”とかは、録る前に私が家で3パターンぐらい録って送って、〈どのパターンの声質、テンションでいこうか?〉っていうのを工藤と相談してからレコーディングしました」

分業じゃなくて、コラボで作ろう(横沢)

――そうやって全体のバランスをとっているんですね。そんななかで、最後の曲“蛍の川”は、素直に感情を乗せて歌っているように聴こえました。

横沢「“記憶に灯るあかり”と“蛍の川”は思うがままに歌ってます。特に何も言われなかったし。まあ、あまりキャラの出せない曲ですしね」

――”蛍の川”は横沢さんが書いたんですよね。

工藤「そうです。アカペラの状態で歌だけ送られて来て、それに僕がコードを付けました」

横沢「〈分業じゃなくて、コラボで作ろう〉ってやった曲の第一弾なんです。私はシンガー・ソングライターとしてソロ活動もしているので、自分で曲を作ってますけど、作曲に関しては工藤とスキルが全然違う」

工藤「いやいや、そんなことはないと思うけど(笑)」

横沢「私は工藤みたいにジャズ・コードを弾けないし、転調とかできないから、オノマトペル内で曲のコンペをしても絶対負けると思って、一時期、ヘコんでたんですよ。でも、ある人に〈工藤くんがコードを付けるのが得意なのは当たり前だから、ローラは良いメロディーを書けばいいんだよ!〉って言われて。それで恥ずかしいけどアカペラで送ったら、そこにコードが付いて何百倍も良い曲になって帰ってきたんです。もう、感動して泣きましたね」

――見事、コラボレートできた。

横沢「この曲は全部4拍子ではなくて、〈ここに空間を空けたら素敵に料理してくれるんじゃないかな〉とか〈こういうことをしたら、きっと私が想像しないコードを付けてくれるんじゃないかな〉って思いながら歌ったんですけど、そういうところにすべて応えてくれて。今後はこういう作り方もできるなって思いました」

――チェロを入れるアイデアは工藤さんが?

工藤「そうです。室内楽っぽい感じにしたら、もっとおもしろくなるんじゃないかと思ったんです。今後、オノマトペルで第二作、第三作と作ることができたら、こういうのもやりたいなっていう、次への布石みたいなところもあるかもしれない」

――予告編みたいな曲なんですね。今後、オノマトペルとしてやってみたいことがあったら教えて下さい。

工藤「今の話と重複しますが、情感豊かな歌、そして、印象的な歌詞とかコード進行の歌を作るというコンセプトを大切にしつつ、弦楽とかも入れたりしていきたいですね」

横沢「突拍子のないところを大切にしつつ、もう少しポップス寄りというか、みんなが歌えるような曲も作っていきたいです。ジャズをベースにしつつ、ポップなものを作って、より多くの人に届けたい」

工藤「〈ポップでありたい〉っていうのは思いますね。どれだけ複雑なことをやっても」

――曲だけとってみれば複雑な展開ですが、そこに独自の世界観を持った歌詞や表情豊かな歌声が乗ると、人懐っこくて楽しい曲になる。それがオノマトペルの魅力なのかもしれないですね。

工藤「そうだったら嬉しいです」

横沢「今回のアルバムには入らなかったんですけど、オノマトペルにはどんぐりについての歌があるんです。7拍子で、どんどん転調するので、友達に聴かせると〈よく歌えるねー〉って言われるんですけど、そういう曲でどんぐりのことを歌うのが自分たちらしいのかもしれないなって。

ノりにくい曲なのでライヴでやると、お客さんも初めは神妙な面持ちで聴いてるんですけど、〈わーれらー、選ばれし、どーんぐりー〉って歌い出したとたん、客席の空気がふわっと柔らかくなるんです。難しい曲調の歌ほどそういう歌詞をあてて、ジャンルの垣根みたいなものも越えて、みんなをふわっとさせたいですね」

 


Live Information

オノマトペル  1stミニアルバム"ツベラコベラ物語"リリース記念ライブ
12月11日(火)東京・Half Moon Hall
開場/開演:19:00/19:30
チケット:前売り3,000円/当日3,500円
with 井上銘(ギター)、越智俊介(ベース)、タイヘイ(ドラムス)

12月21日(金)北海道・musica hall cafe
開場/開演:19:00/19:30
チケット:前売り2,500円/当日3,000円(drink別)
共演:キッコリーズ

〈タワーレコード インストア・ライヴ〉
10月3日(水)タワーレコード横浜ビブレ店 20:00〜
10月5日(金)タワーレコード広島店(横沢のみ出演) 19:00〜
10月29日(月)タワーレコード福岡パルコ店 19:00〜
いずれも観覧無料

〈西日本ツアー(東名阪・四国・九州・北海道)〉
10月3日(水)タワーレコード横浜ビブレ店(オノマトペル)無料ライヴ
10月5日(金)タワーレコード広島店(横沢のみ)無料ライヴ
10月6日(土)松山道後 道後の町家(横沢のみ)
10月8日(月)松山鹿鳴館(横沢のみ)
10月9日(火)高松206 TSU MA MU(with Go Jean Paul)
10月10日(水)直島アカイトコーヒー
10月11日(木)徳島美馬 吉田家住宅質蔵
10月12日(金)徳島市 Funky Chicken(with Go Jean Paul)
10月15日(月)大阪ソープオペラクラシックス
10月16日(火)京都スープダイニングPanBoo
10月26日(金)浜松エスケリータ68(withシータθ)
10月27日(土)磐田カフェカマラ 15時/18時
10月28日(日)岐阜・多治見モザイクタイルミュージアム 18時
10月29日(月)タワーレコード福岡パルコ店無料ライヴ 19時
11月1日(火)佐賀こねくり家
11月5日(月)鹿児島MOJO
11月6日(火)宮崎都城カフェ吉左右
11月8日(木)霧島国分コードトーン
11月13日(火)長崎フォーク酒場(横沢のみ)
11月16日(金)北海道・札幌ムジカホール(横沢ローラ×bluffer)

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