前々作『NEW MORNING』(2013年)で自身の歌声を披露しつつも〈歌わないシンガー・ソングライター〉を標榜してきた鍵盤奏者が、前作より5年を経て初めての全曲ヴォーカル・アルバムをリリース。小西康陽が作詞を担当したロマンティシズム溢れるアーバン・ブルース“スカイツリー”、スカパラのGAMOがサックスで妖艶に歌い上げる“犬の散歩”、ローズの音色が煌びやかに舞う和製AOR“東京上空3000フィート”など、主役のルーツである昭和歌謡の温かさや、ジャズ~ソウル・ミュージックなどのメランコリックな要素が溶け合った9曲は、聴く者の心に火を灯すように懐かしくじんわり染み渡る。日常と地続きな詞世界と朴訥とした歌声が、ありふれた日々に些細な喜びをもたらす金字塔的な一枚だ。