
「闇から光へ」をテーマに気鋭が開く世界
東京オペラシティリサイタルホールで開催される名物シリーズ〈B→C〉に気鋭のギタリスト・益田展行が出演する。バッハ(B)の作品からコンテンポラリー(C)までのレパートリーを組み立てるが、益田はこんな作品を選んだ。
「この企画で何を演奏しようか考えた時、頭の中にパッと浮かんだコンテンポラリーの作品が、武満徹の《すべては薄明のなかで》とブリテンの《ダウランドによるノクターナル》でした。いずれも闇や死に関わる作品だったので、そこにブローウェルが武満徹追悼のために書いた《HIKA(悲歌)》を組み合わせました」
その作品群から“闇から光へ”という今回のテーマが出て来たが、それはバッハの作品にも通底していると益田は語る。
「バッハがちょうど《無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ》と《無伴奏チェロ組曲》を作品としてまとめあげていた1720年に、バッハの最初の妻であるマリア・バルバラが突然亡くなるという事件が起きました。それはバッハに大きな影響を与えたに違いありません。この時期のバッハの作品の中に“生と死”を強く意識した感覚を感じることが出来ると思います」
バッハの作品を演奏することは益田にとってはライフワークである。
「実家にグスタフ・レオンハルトのCDがあって、それをよく聴いていたのです。そこから自然にバッハの作品に親しむようになったかもしれません。古楽寄りの演奏が好きでした」
2003年、東京国際ギターコンクール最高位(1位無しの2位)を獲得すると、ドイツのケルン音楽大学のギター科に留学。そこで同大ギター科教授でありリュート奏者でもあった佐々木忠氏に師事した。チェンバロやフラウト・トラヴェルソの教授に演奏解釈や指導を受けたり、副科でブロックフレーテを取ったりもしたそうだ。古楽関係の文献にも触れた。留学期間中にハインスベルク国際(ドイツ)などの国際的コンクールにも入賞している。今回演奏するバッハの作品《無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番》と《無伴奏チェロ組曲第6番》は益田自身の編曲による。
「たくさんの先輩方の編曲も参考にしながら、自分なりの編曲を作りました。なるべくバッハの原曲の音符を漏らさないこと、その音楽の流れを崩さないように心がけたつもりです。多少アクロバット的なところもありますが、そうした苦労の部分や演奏家の息づかいなども含めて、ギターに適した小さなホールでの演奏を楽しんで頂けると嬉しいです」
LIVE INFORMATION
B→C 益田展行 ギターリサイタル
○11/10(土)14:00開演 会場:長崎ブリックホール国際会議場
○11/20(火)19:00開演 会場:東京オペラシティ リサイタルホール
【曲目】ブローウェル:HIKA(悲歌)─ 武満徹の思い出に(1996)/武満徹:すべては薄明のなかで ─ ギターのための4つの小品(1987)/J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番 ハ長調 BWV1005/ブリテン:ダウランドによるノクターナル ─《重き眠りよ来たれ》にもとづくリフレクションズ op.70(1963/65)/J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第6番 二長調 BWV1012
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