INTERVIEW

藤木大地『愛のよろこびは』 「なぜディスクのことを“アルバム”と呼ぶのか、だんだん、わかってきました」

©hiromasa

「なぜディスクのことを“アルバム”と呼ぶのか、だんだん、わかってきました」

 ウィーン国立歌劇場に東洋人カウンターテナー初の出演を果たした昨年、デビュー盤を発売した藤木大地。セカンドアルバム『愛のよろこびは』はワーナーミュージックに替わり、“メジャー・デビュー・アルバム”と銘打たれた。タイトルは村上春樹原作、松永大司監督の映画『ハナレイ・ベイ』の主題歌に採用されたマルティーニの歌曲にちなむ。藤木はかつて、原作を読んだことがあった。「村上小説には音楽がよく登場しますが、原作にマルティーニは出てきません。“よろこび”の話でもないしなぜ? と思いましたが、試写を見て納得しました。歌詞も“苦しみは一生続く”と展開しますから」

藤木大地 愛のよろこびは Warner Classics(2018)

 冒頭の《アヴェ・ヴェルム・コルプス》(モーツァルト)はラテン語、《愛のよろこびは》がフランス語、しばらくドイツ語が続き、英語、ラテン語……と続く。「1枚のディスクを通して聴いたとき、心が自然に動くような曲順を言語、作曲家の時代を踏まえ、熟慮しました。言葉がコロコロ変わるのは、疲れますからね」。「どうしてディスクのことをアルバムと呼ぶのか、長く不思議でした」と振り返るが、今は「その瞬間の自分の記録以外の何ものでもなく、まさにアルバムだと思うようになりました」。デビュー盤を出す前後から選曲へのこだわりを深め、少なくとも5~6枚分のアイデアを蓄積している。

 ワーナーへのデビュー盤で目を引くのは、マーラーの《交響曲第2番・復活》の第4楽章《原光》と、フォーレの《レクイエム》の《ピエ・イエズ》の2曲で前者はアルト、後者はソプラノかボーイソプラノのナンバーであって、カウンターテナーのオリジナルではない。「すでに実際のコンサートではオーケストラとともに演奏したことがありますし、“カウンターテナーはこういうこともできる”との可能性を示したくて、採用しました」。長く傾倒するイギリス音楽では前回のアルバムにブリテンを入れたので、今回は「大好きなヴォーン=ウィリアムズをどうしても入れたかった」とも明かす。

 出身は宮崎県。ウィーン音楽大学の大学院で文化経営学を修めた時期もあり、「音楽の消費者(コンシューマー)まで一気に持ち込めないとしても、聴き手(オーディエンス)は絶えず掘り起こさなければならない」との持論をアウトリーチ活動に反映させている。地元メディアの協力で9年前に始め、宮崎県内26市町村のうち17か所での演奏を今年末までに達成する。「5年、10年のスパンでキャリアを考え、どこにでも出かけて行きたいです」。美声と知性を兼ね備えた名歌手への道を、着実に歩んでいる。

 


LIVE INFO.

メジャー・デビュー記念
藤木大地 カウンターテナー・リサイタル“ 愛のよろこびは”

○12/18(火)19:00開演 会場:紀尾井ホール

www.amati-tokyo.com/

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