INTERVIEW

高橋ユキヒロ『Saravah Saravah!』 デビュー作「Saravah!」が40年の時を経て、最高にモダンでポップに復活!

高橋ユキヒロ『Saravah Saravah!』 デビュー作「Saravah!」が40年の時を経て、最高にモダンでポップに復活!

デビュー作『Saravah!』が40年の時を経て、最高にモダンでポップに復活!

 まさかこんな日が来るとは……。ずっととっておきのアルバムだった『Saravah!』について高橋幸宏にたっぷりお話を伺う機会を得た。そんな気持ちを率直に伝えると「僕だって同じ。だって40年も前のアルバムですから」と幸宏さん。『Saravah Saravah!』という新たな名でよみがえった彼の処女作。もちろんアーティスト名は〈高橋ユキヒロ〉だ。作られた経緯はこういうこと。もし当時のマルチテープが見つかったらいまのヴォーカル・スタイルで歌を吹き込み直ししたい、とかねてから考えていたが、昨年末運良く発見に至り企画が始動、念願叶ってリニューアル版が完成した。まず驚かされるのは、いまの歌声があまりにしっくりきすぎており、さほど違和感がないことだ。

高橋ユキヒロ Saravah Saravah! コロムビア(2018)

 「えらく若い声に聴こえるね。当時と同じキーで歌わなきゃいけなかったこともあるけど、むしろいまの歌い方のほうがそういう要素が強いんでしょうね。オリジナルは大人っぽく歌おうとする意識が入り過ぎているから、蒼いね」

 長年感じていたのは、歌声にそこはかとなく細野晴臣的ムードが感じられる点。それには本人も自覚があるようで「細野さんのアルバムが好きでかなり刷り込まれていたし、どこか意識していたところもあったと思う」とのこと。それにしても、ドクター・バザーズ・オリジナル・サヴァンナ・バンド的なノスタルジックな雰囲気と無邪気に戯れる幸宏さんがまぶしい。

 「サディスティックスを終える段階での集大成だった。いわゆるドラマーっぽくないアルバムをやりたいって考えが半分あって、MORっぽい部分もある。教授(アレンジを務めた坂本龍一)もまだそのノリが少し残っていたんだよね。それにトノバン(加藤和彦)の『ガーディニア』のレコーディングを手伝った影響もあるし、15歳のときに衝撃を受けて18回も観た映画『男と女』や、ピエール・バルーのエッセンスも入っている」

 オリジナルLPのライナーには“近いうちに、全く違った概念をベースに二枚目の制作をしたい”と書いている。この路線に即決着をつけ、新展開をめざした彼。

 「78年は激動の年で、YMOの結成の話もしてる。細野さんの『はらいそ』の《ファム・ファタール~妖婦》を録ったあとこたつに入りながら3人初めて話し合ったわけだけど、そこにみかんがあったらしいので、季節的に冬だろうと。歌を聴けばわかるけど、花粉症の時期だったはずで、3月ぐらいに歌入れをしてると思う。いろんなことが交錯している時期ですごいスピードでまわりが動いていたんで、完成後はあまり聴き直してないんですよ、実は。ただ楽しかった思い出のほうが多い。フォーリズムで“せーの”でやっているけど、仮歌を入れているわけではないので、みんな歌メロを知らないまま、それであの演奏のレヴェルだからすごい。それぞれ自分のいちばん出したいものを前面に押し出すような演奏で、教授なんて“こんだけ早く弾けるぜ”って感じで。(山下)達郎が自分のレコーディングのときはあんなに早く弾いてくれない、って言ってたのをおぼえているから」

 フュージョンやAORのエッセンスが散りばめられて時代性に富んでいながらも当時の最先端を行く諸作品とかなり位相の異なる作品になっていることは確か。

 「時代性のようなものはあまり入っていないんじゃないかと思う。今で言うシティーポップと呼ばれるものからちょっとはみ出ている。どの曲もヒネくれてますもんね。当時『ビックリハウス』でムーンライダースがベタ褒めしてくれたんだけど、ミュージシャンじゃないみたい、って言ってたのが印象的で。どのジャンルに当てはまりそうか見当たらないのが良いって。ター坊(大貫妙子)の初期のアルバムを追いかけているような若い人に78年の作品だと言ってもピンとこないんじゃないかな」

 オリジナル版をモダン・ポップやアートスクール・ポップの文脈で聴いてきた筆者にとってこの発言はかなりピンとくるものだ。彼のキャリアにおいて異質な存在でありつつどうしようもなく幸宏さん的で、まぎれもなく原点であるデビュー作がこうして華麗に復活を遂げた。アルバムの上に浮かぶ祝福の輪が大きく見える。

 


高橋ユキヒロ (Yukihiro Takahashi)
1952年6月6日生まれ。サディスティック・ミカ・バンド解散後、サディスティックスを経て、78年、細野晴臣の呼びかけに応じ、坂本龍一とともにイエロー・マジック・オーケストラ(Y.M.O.)を結成。ソロとしては、78年のアルバム『Saravah!』以来、2013年の『LIFE ANEW』までに通算23枚のオリジナル・アルバムを発表。また、ソロと併行して鈴木慶一(ムーンライダーズ)とのTHE BEATNIKS、原田知世や高野寛等とのpupa(ピューパ)、小山田圭吾、砂原良徳、TOWA TEI等とのMETAFIVEとしても活動。本年、THE BEATNIKSとして約7年ぶりとなる5枚目のオリジナル・アルバム『EXITENTIALIST A XIE XIE』を発表。音楽家としての顔を持つ一方、ファッション・デザイナーとしても長いキャリアを持つ。

 


LIVE INFO.

高橋ユキヒロ Saravah! 40th Anniversary Live
○11/24(土)17:00開場/18:00開演
会場:東京国際フォーラム・ホールC

www.room66plus.com/

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