INTERVIEW

CROSS VEINのMASUMI迎えヴォーカリストManamiが始動したInnocent Material、アニソン × メタルな初アルバムを語る

Innocent Material『Fragments of Memories』

(左から)ZARY(ベース)、Manami(ヴォーカル)、MASUMI(ギター)、Act.(ドラムス)
 

DRAGON EYESをはじめ、さまざまなメタル・プロジェクトでヴォーカルを務めてきたManami。彼女が、CROSS VEINのMASUMIをギタリスト兼コンポーザーに迎え、自身が率いるプロジェクト〈Innocent Material〉を始動させた。

「自分が歌うのであればメタルチックなものが良かったし、なおかつアニメやゲームの楽曲が好きな人に作ってもらいたかったんです」。そうManamiが話しているが、彼女がサポートでライヴに参加したDRAGON GUARDIANとCROSS VEINの対バン後の打ち上げで、2人は日頃プレイしている〈メタル〉ではなく〈アニソン〉談義に花を咲かせ、距離を縮めたそう。そしてこれをきっかけに、後日PCゲームのエンディング曲を歌うことになったManamiが、MASUMIに楽曲制作をオファー。それがInnocent Material発足に繋がった。彼らはそのPCゲーム曲“My Little Stars”を収録したファーストEP『everlasting rain』(2017年)を経て、このたび初のフル・アルバム『Fragments of Memories』を、10月24日(水)にリリースする。

同作は、ファーストEPに引き続き、レコーディングにはCrush40のサポートなどで活動するAct.(ドラムス)や、Tsui(ベース/ex.Galneryus)といった凄腕メンバーが集結。エレクトロニクスを効果的に散りばめたメロディック・スピードメタルのタイトル曲に、重厚なグルーヴで攻め立てるモダン・ヘヴィネスな“Falling”。また、ファンタジックな趣きのある“Remember Me”では優麗かつパワフルに、シャッフルビートが官能的な雰囲気を増幅させる“EX-tatic Trap”では甘くキュートにと、さまざまな歌声を使い分けるManamiのヴォーカリゼーションも見事! メタルに軸足を置きながらもヴァラエティー豊かな全10曲を収録している。そして、どの楽曲にもしっかりとしたキャッチーさがあることから、2人の共通項であるアニソンのファンにもリーチし得る作品に仕上がった。

今回のインタヴューでは、主にアルバムのコンセプトや制作時のエピソードについて話してもらったのだが、まずはManamiとMASUMIを結びつけた〈アニソン〉について、話を訊いてみた。

『Fragments of Memories』収録曲“Remember Me”

 

アニソンっぽい雰囲気 × メタルの激しさ

――打ち上げでアニソンの話で盛り上がったそうですけど、どんな内容だったんですか?

MASUMI(ギター)「結構酔っ払っていたので内容まではあんまり……(笑)」

Manami(ヴォーカル)「そのお話をしたのは2軒目でしたからね(笑)」

MASUMI「でも、水樹奈々さんとかfripSideが、ギターが激しめなハード・ロック・テイストなアニソンのカヴァー動画をアップしているんですけど、そこにManamiちゃんの歌を乗せたらおもしろそうだね、みたいな話をしたのは覚えています」

※八木沼悟志プロデュース、南條愛乃がヴォーカルを務めるプロジェクト

Manami「あとは〈今度こういうものも弾いてみたい〉ってMASUMIさんが話していましたね。林原めぐみさんとか」

MASUMI「言ってた! あとは大黒摩季さん。『SLAM DUNK』のエンディング曲とかね」

Manami「リアルタイム世代ではないんですけど、90年代前半のアニソンも好きなのは、私たちの共通点としてありますね」

――Manamiさんがアニソンを好きになった理由というと?

Manami「幼い頃からアニメが好きだったんですが、昔は曲にまではあまり興味がなかったんです。オープニングのあいだに用事を済ませておいて、本編が始まったら観る感じ。そこから楽曲にまで興味がいくようになったきっかけは、それこそ林原めぐみさんでした。『シャーマンキング』のオープニング曲を聴いたときに〈かっこいい!〉と思って。それが音楽を好きになったきっかけでもあったんです。

それから今まで観ていたアニメの曲も、友達からCDを借りて聴きはじめたんですが、アニソンに関しては作品ありきで好きになることが多いですね。〈この曲が好き〉〈このアーティストが好き〉というよりは、〈この作品のこの曲が好き〉ということが多いです」

「シャーマンキング」の後期オープ二ング曲である林原めぐみの2002年のシングル“Northern Lights”
 

――MASUMIさんはアニソンのどんなところに惹かれますか?

MASUMI「僕ももともとアニメがすごく好きだったんですが、例えばオープニングという短い時間内で、その作品のイメージに合う曲調や歌詞の内容であったり、歌い方であったりで、そのアニメを表現しているのがアニソンのすごいところだと思っていて」

――確かに89秒で内容をきっちり伝えるという意味では、アニソンは作品にとって究極の〈名刺〉というか。

MASUMI「そうですよね。ドラマに比べてアニソンはそういう要素が強いので、好きな人とそうでない人の両極端になると思うんですけど。ただ、『(新世紀)エヴァンゲリオン』って、内容を知らなくても曲は知っている人は多いじゃないですか? 『SLAM DUNK』とかも。それって曲として素晴らしいなと思っていて。アーティストとか関係なく、曲を聴いただけでどういうアニメなのかがわかる。アニソンのそういうところに惹かれますね」

――そんなお2人が始動させたInnocent Materialですが、今回リリースされる『Fragments of Memories』を制作される際に、構想やコンセプトはありましたか?

Manami「今回収録している“Acid ~Until the End of Time~”“EX-tatic Trap”“UTSURO”は、すでにライヴでやっていたんですよ。その曲は入れたいと思っていたんですが、その3曲はそこまでメタルな感じではないので、もうちょっとそういう方向に寄ったものがほしいというお願いを、MASUMIさんにはしました」

Innocent Material Fragments of Memories Walkure(2018)

――そのオーダーを受けて、MASUMIさんが楽曲を制作されたと。

MASUMI「曲自体は、昔作ったものと新しいもの半々という感じなんですが、曲をすべて並べてみて、最終的にどういうふうにバランスを取るのかすごく考えましたね。これが1枚目になるので、それこそ名刺になるようなもの。道しるべというか、この作品がInnocent Materialのスタート地点になればいいなと思っていました」

Manami「あとは、EPの印象を持っている方もいらっしゃると思うので、そこは崩したくなかったんです。だから、EPでのアニメチックな雰囲気も残しつつ、プラスもうちょっとメタルっぽい激しいものをというイメージがありました」

――その〈アニメチック〉というのは、アニソンが好きなお2人によるInnocent Materialにとって重要な要素なんでしょうか?

Manami「いわゆるアニソンみたいなものを作りたいわけではないんですが、日本のメタルって、歌のメロディーが日本の歌謡曲的な感じがあったりするじゃないですか。アニソンにもそういう部分が共通点としてあると思うんですけど、ああいった日本らしさを出したいなと思っていたんですよね。MASUMIさんが作る曲は、まさにそういう感じの歌メロですし。だから、アニソンが好きな人にも聴いてもらいたいし、日本のメタルが好きな人にも聴いてもらいたいという、欲張りな思いからこのバランスになりました」

『Fragments of Memories』トレイラー
 

――収録曲はヴァラエティー豊かでどれも個性的ですが、その中で“Fragments of Memories”をタイトル曲にした理由というと?

Manami「“Fragments of Memories”をタイトルトラックにしたのは、速くてメロスピ的というところもあるんですけど、アルバムタイトルを『Fragments of Memories』にしたかったからなんです。個人的には“眠れる森のロザリア”をタイトルトラックにするのもいいなと思ったんですよ。2曲目ですし、ジャケットでイメージしたのはこの曲だったので」

『Fragments of Memories』ジャケット
 

――確かに、まさにそのものといった感じですね。

Manami「でも、〈Fragments of Memories〉って、要は〈記憶の欠片〉という意味じゃないですか。1枚目のアルバムなので、この作品が聴いていただいた方の記憶の欠片として残ってもらえたらいいなという想いや、収録曲の歌詞も〈出会いと別れ〉を書いたものが多いんですが、それぞれの曲が記憶の欠片みたいなイメージもあって。そういったことをまとめて、このタイトルに決めたところもありました」

“Fragments of Memories”

 

暗い中での希望を感じられたらいいな

――歌詞はManamiさんがすべて手がけていますが、MASUMIさんから届いた楽曲のイメージを受けて書くことが多いですか?

Manami「そうですね。MASUMIさんのデモにはいつも仮タイトルがついているんですけど、そこからイメージして書くことも多いです」

――本作でいうとどの曲ですか?

Manami「“Acid ~Until the End of Time~”“EX-tatic Trap”“Falling”“UTSURO”“は、仮タイトルそのままですね。あと、“The Final Count Down”が……」

MASUMI「“The Final Count Down”の仮タイトルは、“The Final Count Up”だったんですよ(笑)。80年代メタルが好きなので、ヨーロッパの曲をもじったものにしようと思って。そしたら結局元ネタのタイトルに戻ってた」

北欧メタルを代表するヨーロッパの86年作『The Final Countdown』、日本含め25か国のシングル・チャートで1位を獲得したタイトルトラック
 

Manami「歌詞を書いた後に、何か別のタイトルにしようかなとは思うんですけど、なかなか変えるのが難しいんです。“UTSURO”だったら、曲を流した瞬間に〈虚ろげに〉という言葉が聴こえてきてしまったので歌詞にしてしまいましたし、“Falling”もそうで、サビに〈Falling〉と入れてしまったから、もう変えようがなくて(笑)」

――それぐらい曲のイメージに仮タイトルがハマっていると。

Manami「でも、仮タイトルがついているものと、私が書きたい内容や曲を聴いたイメージとちぐはぐだったりすると、すごく悩みます。MASUMIさん的に、そういう内容で書いてもらいたくなかったと思われたらどうしようって」

――歌詞を書くのであれば、作曲されたほうも満足のいくものにしたいという、いい意味でのプレッシャーというか。

Manami「そうです。それに、仮タイトルって別にそういう歌詞にしたいわけでもなくついているときがあるじゃないですか。たとえば“眠れる森のロザリア”は、仮タイトルが〈マッスルミュージアム〉だったんですよ(笑)」

――インパクトがすごいですね(笑)。確かに、“眠れる森のロザリア”は全パートが超攻撃的な演奏ですけど、そのイメージを受けて〈マッスルミュージアム〉にしたんですか?

MASUMI「いや、仮タイトルをつけるときって、実は曲の雰囲気とかを全然考えていないんですよ。iTunesをザーッと見たり、〈中二病 単語〉とかで検索したりしてつけているので、適当と言えば適当ですね(苦笑)。この曲は……3〜4年前ぐらいだったかな、池谷(直樹)が地方のお祭りとかで跳び箱を飛ぶ営業をしているのを、たまたまTVで見たんです。それで、なんとなく〈マッスルミュージアム〉かなって(笑)。で、つけたらつけたで(曲の雰囲気に)合ってたし」

――謎に馴染んでしまったと(笑)。歌詞は〈出会いと別れ〉を描いていることもあって、どれも切なげな雰囲気がありますね。

Manami「小説や漫画、映画、アニメもすべてそうなんですけど、私はただ明るいだけの話、ただ暗いだけの話よりも、その両方があるものが好きなんです。ずっと安定感があるとあまり物語性を感じないなと思っているので、そうならないように、全体的には明るいんだけど、ちょっと儚げな言葉を入れてみたりはしていますね」

――暗いムードの作品が好きな人の嗜好として、暗さの中に明るいものはいらないと思われる方も多いのかなと思うんですが。

Manami「ちょっと希望が見え隠れするようなものが好きなんです。Innocent Materialというぐらいなので、光というか、暗い中での希望を感じられたらいいなと思っていますし、MASUMIさんが作ってくれる曲も、明るいけどメロディーは儚い感じだったりするので、そういうところにテンションを合わせられたらなと思って書いています」

――また今作は、作品を通して、ひとりの女性が出会いと別れを経験して強くなっていくようなイメージもありました。

Manami「歌詞に〈私〉という単語は出てくるんですが、Innocent Materialでは性別を設定していない曲も多いんです。収録曲の中で女性目線で書いたものというと、“With You”と“EX-tatic Trap”ぐらい。“眠れる森のロザリア”は男性視点なんですけど、この歌詞は実在のモデルがいて、ロザリア・ロンバルドちゃんをミイラにした彼女のお父さんのことを歌詞にしているんです。このお話、有名ではありますけど、ロザリアちゃんのことを知ったときに、もっとみんなに知ってほしいと思ったんですよね。だからもう泣きながら〈これは絶対に書きたい!〉と思っていたところに来たのが、〈マッスルミュージアム〉で(苦笑)」

※イタリア・パレルモのカプチン・フランシスコ修道会の地下納骨堂内にある聖ロザリア礼拝堂にミイラの状態で葬られている、1920年に肺炎によって2歳未満で亡くなった少女。死後1世紀近くたっても生前と変わらぬ姿が神秘的であると〈世界一美しい少女のミイラ〉〈眠れる森の美女〉とも呼ばれる

MASUMI「そう考えると仮タイトルって大事ですよね……今後は気をつけます(笑)」

Manami「いえ(笑)、すごく楽しいので全然大丈夫です! それに、〈マッスルミュージアム〉を超えるものはそんなに出てこないと思うので(笑)」

 

すぐに次を作りたい

――充実の1枚を完成させて、今後はどういう活動をしていきたいですか?

Manami「やっぱりこのプロジェクトを長く続けていきたいと思っていて」

――スタート当初からそう考えていたんですか?

Manami「いえ、最初はまったく考えていなかったです。とにかくCDを出さなきゃというところから始まったので、わりと目先のことを考えていましたし、みずから音楽活動を始めるということも初めてだったので、手探り状態だったんですよね。だけど、今はセカンド・アルバムを早く出して、みなさんの中にある〈記憶の欠片〉を忘れられないようにしたいなと思っています」

MASUMI「自分は元々CROSS VEINなど別のバンドをやっているというのもあって、そっちで作っている曲とは違うものを楽しんでもらえたらいいなと思っています。あとはInnocent Materialではサウンド面をすべて自分が統率しているので、自分のミュージシャンとしてのレヴェルアップにも繋がるというか。刺激を受けるところも多いので、僕もすぐに次を作りたい気持ちでいますね」

CROSS VEINの2018年作『Gate of Fantasia』収録曲“Graceful Gate”
 

――サウンド的に、次に挑戦してみたいものはありますか?

MASUMI「僕、やりたいことが数日単位でコロコロ変わるんですよ。例えば、ギター、ベース、ドラムだけでゴリゴリのものをやろうかなと思っても、その後でやっぱりピアノも入れたほうがいいかなとか、速い曲をやらなくてもいいんじゃないかな、とか」

――でも言い換えれば、それだけ曲の元になるものが日々生まれているというか。

MASUMI「そうですね。自分の感性が鈍らないように、常に音楽は聴いてます。音楽を聴いていると、自分もこういうものがやりたかったな、悔しいなと思うことが多くて、それが制作にも繋がりますね。最近だと……ワルキューレっていうアイドル・グループとか」

Manami「〈マクロスΔ〉の?」

MASUMI「そうそう。〈マクロス〉の音楽は昔から好きなんですけど、昔の古い感じも残しつつ、サウンド面がすごくキッチリしているなと。あとは、これもアニソン系になりますが、ナノとか。ピアノやストリングスも入っているんだけど、激しさとおしゃれのギリギリなラインの音になっていて、悔しいなって。それをオマージュするわけではないですけど、自分もそういうかっこいい音楽を生み出したいんですよね。だからまあ……(Manamiに)頑張ろうね(笑)。続けられるように」

ナノの2018年のシングル、TVアニメ「かくりよの宿飯」のオープニング曲である“ウツシヨノユメ”
 

Manami「そうですね(笑)。アニメやゲームの主題歌をやりたいという目標もありますし」

MASUMI「それができたら、もうこの上ない喜びだよね(笑)」

 


Live Information

Innocent Material presents“Fragments of Memories Release Live”
Innocent Material&MAHATMA 2 Man Live!

日時:2018年12月2日(日)
会場:東京・渋谷RUIDO K2
出演:MAHATMA、Innocent Material
チケット:前売3,500円/当日4,000円(要+ドリンク)
e+チケット購入ページ(PC・モバイル共通)はこちら

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