2018.10.18

〈ドリーム・ポップ〉と形容されるサウンドの先駆者的な存在としても名高いNatural Calamityの首謀者にして、TICAの石井マサユキとのギター・デュオ=GABBY & LOPEZの片割れとしても知られる森俊二。そして、生演奏とフィールド・レコーディングした素材を混ぜつつ、映像を重ね合わせることで聴き手の多様な感情を喚起するグループ、CINEMA dub MONKSの曽我大穂。彼ら2人が新たに結成した即興音楽ユニット、DAMOがファースト・アルバム『I.T.O.』をリリースした。もともと聴き手を別世界へと運ぶサウンドメイキングが共通している両者だけに、相性の良さは想像しやすいが、その化学反応ははたしていかに……?

その答えは、やはり〈バレアリック〉と言えるだろう。ある意味では予想通りのチルさで、それぞれの音楽を愛聴してきた者の期待を裏切らない、穏やかで滑らかなサウンドが心地良い。キラキラと輝く波面をなでるかのようなギター、物悲しいピアニカの音色があちこちを漂い、深い残響やスペーシーなエフェクトが、まるで胎内にいるかのごとき安堵感を与えてくれる。その音作りを指して〈サイケ〉と形容することもできようが、ヒッピー/トラヴェラー的なマザー・ネイチャー感は希薄。どちらかといえば密室的なサウンド構築が印象的だ。

近年、ニューエイジやアンビエントの新たな解釈と並行して、バレアリックも再定義されてきており、そうした視点から本作を位置付けることもできよう。たとえば発掘が進むイタリアの音楽家、ジジ・マシンの作品は、チルアウトやメロウといった文脈のみならず、〈新しい室内楽〉としても評価されているが、DAMOのサウンドが持つシネマティックな表現力、冷ややかな緊張感は、彼の音楽とも重なる。沈む夕日を眺めながら海岸で黄昏るのではなく、明かりを消した部屋で己の内面と向き合うための〈バレアリック〉。つまり、本作は全6曲40分強の、厳かなインナー・トリップなのだ。

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