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UKロック・ファン悶絶……リヴァプール発スピンのインディー愛に溢れた青春日記的ポップ!

スピン『Yer Dar』

UKロック・ファン悶絶……リヴァプール発スピンのインディー愛に溢れた青春日記的ポップ!

UKロック・ファンは懐かしさと気恥ずかしさで悶絶

まずはシングル曲“Who You Are”のミュージック・ビデオを観ていただきたい。25秒のイントロだけでいい。それだけで十分だから。キュアーのロバート・スミスやスミスのモリッシーに重なるフロントマンの身のこなしといい、彼だけでなく全員それぞれにキャラが立ったメンバーの佇まいといい、こぼれおちるマジカルなギターの音といい、ルーツはビートルズなのかマッドチェスターなのか。ギタリストの衝撃的なマッシュルーム・カットといい、とにかく自分たちの音楽的・美的DNAを明快に打ち出す、シンプルにして強烈な映像である。

かつ、一定年齢以上のUKロック・ファンなら、懐かしさと気恥ずかしさが入り混じった気分で一杯になること間違いなさそうだ。それに、〈うわ、こういうの、ダメかも〉と思ったなら、無理に引き止めはしない。それくらい直感的に好き嫌いが分かれるだろうし、逆に〈これ、好き!〉と思ったなら、あなたはこの先長く付き合うことになる〈マイ・バンド〉を見つけたのかもしれない。

 

リヴァプールから登場! UKツアーも完売続出するなか早くも初来日

どちらにせよ、リヴァプールから現れたスピンとは、つまりそういうバンドである。ちなみに綴りは、Nがふたつある〈SPINN〉だ。いまから3年ほど前にジョナサン・クイン(ヴォーカル/リズム・ギター)、アンディ・パワー(リード・ギター/キーボード)、ショーン・マクラクラン(ベース)、ルイ・オライリー(ドラムス)の4人が結成。地元を中心にライヴ活動を始め、2016年に入ってデビュー・シングル“Green Eyes”を発表した。

口コミで人気を集めて、去年の夏に初の全英ツアーを敢行し、インディー・レーベルのモダンスカイ・UK(ほかにも注目新人のブラインダーズや、中国発のポストパンク・バンド、レトロズらが所属)と契約して、今年の4月に4曲入りのファーストEP『SPINN EP』を発表……と、昔ながらの地道なルートを歩んできた。9月に行なった初のUKヘッドライン・ツアーでは地元はもちろんロンドンやブリストル公演もソールドアウトにし、いよいよ波に乗っている彼らは、日本でもこの度、『SPINN EP』に4曲を追加した限定盤『Yer Dar』をリリース。10月後半に早速の初来日を果たそうとしている。

SPINN Yer Dar Rimeout(2018)

インディー・ロックへの愛情を隅々にまで行き渡らせた甘酸っぱい青春日記

そんなスピンを、ここにきてギター・ロック復興期を迎えている英国において他と差別化しているのはやっぱり、前述したDNAだ。例えば最近の新進バンドに目を向けてみると、シャーロックスやアマゾンズみたいな直球系、アイドルズキャベッジみたいな左派レベルスたち、ゴート・ガールシェイムみたいな都市の猥雑さを体現するサウス・ロンドン勢などなど、(かなりアバウトではあるが)いくつかの傾向が浮かび上がる。昨今の政情を作品に反映させる面々も増えているが、スピンの4人はどうやら、浮き世から自分たちを切り離し、ベッドルームに籠もって独自の世界に浸っていたようだ。

冒頭でも触れたスミス(『Yer Dar』にも収録の“Home”をスピン版の〈There Is A Light...〉と呼ばずして何と呼ぶ?)やキュアーから、オレンジ・ジュースらポストカード・レコーズ系まで、ポストパンク期のインディー・ロックへの愛情を隅々にまで行き渡らせた甘酸っぱい青春日記を歌うことに余念がない。何しろSNSをチェックしてみると、自分たちのジャンルをあっけらかんと〈ジャングリー・ドリーム・ポップ〉と区分けしているのだから、誰が反論できよう? 『Yer Dar』を満たすのはまさに、インディー・ディスコで独りで踊りたい気分にさせる、ジャングリーでドリーミーでキラキラと瞬くギター・ポップなのだ。

もっともスピンのジャングリー・ドリーミー・ポップは、3年間みっちり鍛錬したバンドが鳴らしているだけに、演奏力も曲のクォリティーも申し分ない。シンプルなようで緻密に絡み合うアンサンブルには、〈お? 〉と思わせるディテールがあちこちに潜んでいる。絶妙なタイミングで投入されているストップ&スタート、“After Dark”のアウトロの名残惜しそうなシューゲイズ的残響、“November”が包含するミニマルとマキシマムのコントラスト、“Lana”のファンク・グルーヴ……といった具合に。秘密の音楽的ヴォキャブラリーを共有しているバンドならではのフレキシビリティーや遊び心が、コンパクトなEPから伝わってくるというものだ。

しかも、『SPINN EP』が登場してから半年間に彼らはさらなる新曲を次々に公開しており、そろそろ影響源から巣立って、次なる一歩を踏み出しているように感じさせる節もある。そう遠くない将来聴けるのだろうアルバムが届くまでに、まだまだ柔らかくて伸びしろがたっぷりある若きリヴァプールっ子たちには、もう一回りか二回りの成長を期待できそうだ。

今年の8月に発表した新曲“SHALLOW”

 


〈Spinn Live In Japan 2018〉

〈15th International Music Market Live〉
10月23日(火)東京・渋谷TSUTAYA O-EAST
開場/開演:17:45/18:30
料金:前売 2,000円 ※入場の際ドリンク代別途必要
出演:スピン....etc ※複数アーティストが出演するショーケース・イヴェント

[前売りチケット取り扱い]
チケットぴあ(Pコード : 128-666)
ローソンチケット(Lコード : 71858)
イープラス
ライブポケット
[問い合わせ先]
HOT STUFF PROMOTION (03-5720-9999)

 

〈Spinn Live in Japan 2018 in Tokyo〉
10月26日(金)東京・新代田FEVER
開場/開演:19:00/19:30
料金:前売 3,000円/当日 3,500円 ※前売り券、当日券共に入場の際ドリンク代別途必要
出演:スピン/Luby Sparks

[前売りチケット取り扱い]
チケットぴあ(Pコード : 130-701)
ローソンチケット(Lコード : 73654)
イープラス
※ 前売りチケットは9月29日(土)から発売開始
[問い合わせ先]
FEVER (03-6304-7899)

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