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【Next For Classic】第8回 Masayoshi Fujita再考――ポスト・クラシカルの異端が音楽家としての道のりを語る

おもしろいことをやろうというよりは、純粋に良い音を求めています

――Fujitaさんは度々エレクトロニカからの影響を話されていますが、自分にとっては〈エレクトロニカっぽい質感をヴィブラフォンの生演奏でやろう〉と取り組まれているのかなという印象です。プリペアド奏法をはじめとしたさまざまな奏法を取り入れることで、そういった質感を出すことにこだわりがあるように感じます。

「特にエレクトロニカの質感を取り入れようと意識しているわけではなくて、自分のなかではっきり分かれていますね。ピアノなんかは歴史も長いし弾いている人も多いので、プリペアドなんかもいっぱい試されて、もうすべてやり尽くされている感がなくもないじゃないですか。でも、ヴィブラフォンはホントにやっている人も少ないし歴史も浅いので、まだ全然開拓されてないと思うんですよね。上になにかを乗せて弾くこと自体、新しかったりする。

自分がプリペアドをやっているのは、以前けっこう実験的なバンドにも参加したりして、そのときのドラマーがドラムの上に物を乗っける一方で、弓でシンバルを弾いてみたりだとか、なんでもかんでもいろんなところを叩いてみたり引っ掻いてみたり、そういうことをやっている人で、ヴィブラフォンでもいろいろ試してみない?って言われたんですよ。それがきっかけで、僕もそういうことをヴィブラフォンでやったんです。ヤンとやったときもいろいろと試しています。そうやって産み出された音は、ほんとにノイズっぽい音がいっぱいなんですけど、そのなかでも綺麗だなと思った音を自分のソロのほうには取り入れています。変わった音とかじゃなく、そういったプロセスで産み出された音楽的に綺麗なサウンドは、使えるんじゃないかなというつもりでやっていますね」

――実験のための実験という感じでは全然ないのですね。

「ですね。実験のための実験は昔、散々やったので。おもしろいことをやろうというよりは、純粋に良い音がするものを求めています。というのも、いまはドラムとかでも、スネアなんかの裏にスナッピーを付けているじゃないですか。あれなんて昔は相当実験的なことだったと思うんですよ。でもいまとなってはスタンダードじゃないですか。シンバルにシズルがついていたり。まぁそういう可能性がヴィブラフォンにはあるんじゃないか。特にビーズを置くのなんて市販で付けちゃってもいいんじゃないかと思っています。良い音だと思うし、そのうちスタンダードになるんじゃないかな」

――『Apologues』はイレーズド・テープスからのリリースですが、そうなった経緯を教えてください。

「もともとイレーズド・テープスは好きなレーベルで、そこからリリースしているアーティストもよく聴いていました。何年か前にニルス・フラームのコンサートがベルリンであって、そのとき僕も観に行って、そこにレーベル・オーナーのロバート(・ラス)がいたんですよね。そのときに一回話して、それ以来デモができる度に送っていたんです。で、2013年の10月くらいに、デモが出来たときに送ったら気に入ってもらえたので、リリースしてくれることになりました」

『Apologues』収録曲“Tears of Unicorn(Vibraphone Version)”
 

――イレーズド・テープスはポスト・クラシカルの中心的なレーベルとして日本でも人気がありますけど、Fujitaさんはどういう印象を持っていますか?

「僕があのレーベルを知るきっかけになったのは、ニルス・フラームとかピーター・ブローデリックとかだったんで、そういうことをやっているレーベルという印象が最初にあって。その後に、ライヴァル・コンソールズやキアスモスなどエレクトロニックに振れた音も出していることを知りました」

――レーベルの所属ミュージシャンとは交流が合りますか?

「結構ベルリンに住んでいる人も多いので、ニルスには前のアルバムのマスタリングをやってもらいましたし。彼とはそれ以来ちょくちょくやりとりをしていますね。あとはマイケル・プライスとフェスで会いますし、ライヴァル・コンソールズのライアンとも結構交流があります。ピーター・ブロデリックもライヴ会場で会うことが多いです」

 

聴いている人と演奏している人の間には距離を作りたい

――『Apologues』の話に戻りますと、本作にはヴァイオリンやチェロ、フルートなどさまざまな楽器を入れていますが、今回なぜそういったアプローチを取ろうと思ったのですか?

「前作の『Stories』はヴィブラフォンのソロが中心だったんですけど、作品を作り終えていく段階で、次はいろいろと楽器を足してアレンジしてみたいなと思ったんです。それの練習じゃないけど、テストみたいな感じで前作でも2曲だけ――“River”、“Story Of Forest”にはヴァイオリンとチェロを入れてみました。やってみて自分的にもすごくおもしろかったし、感触も良かったので、その前作からの発展形という形で今回はもっといろいろな楽器を使おうというアイデアが最初からありました」

『Stories』収録曲“Story of Forest”
 

――ヴィブラフォンのソロと、多様な楽器を導入した楽曲とでは、曲の仕方も全然違うのではないでしょうか?

「ケースバイケースですね。最初から大きいアレンジにしたいと思ってはじめた曲もあるし、“Swallow Flies High In The May Sky”はクラリネットの音からインスピレーションを得て、それを曲にしたいと思いました。一方で、ソロのときと同じように自分のソロから作って、そのあとにアレンジを足してくという曲もありました」

――すごく曲を作りこんでいるイメージがあるんですけど、Fujitaさんのオーソドックスな作曲のプロセスは?

「ヴィブラフォンを練習する合間に適当に弾いていたら、良い感じのフレーズやコード、メロディーが出てくることがあって、そのときは何回も繰り返してスケッチ的に録音しますね。そういうのをこねくり回していくうちに曲が出来ていきます。最初の音を良いなぁと思うときってだいたい絵的なイメージが浮かぶんですよね。そのイメージをこねくり回して耕していくと音とストーリーが膨らんできて……みたいなことが多いですね」

――『Apologues』はアナログ的でもデジタル的でもあって、さらにその境目がすごく曖昧な面も多く、その音響デザインが素晴らしいですね。サウンド・プロダクションにおいてはどのようなことを意識しましたか?

「あんまり近すぎないというのは意識していました。全体として聴こえるようにしたいというのはあって、オンマイクで全部録るというのじゃなく、聴いている人と演奏している人の間に距離があるような感じ。オンマイクで録ると、演奏している人の人となりが出てくるような感じがして、自分の曲、ストーリーを聴いてもらったときに、聴き手それぞれのなかにある絵的なものを想起してもらいたいという欲求と合わないんです」

――Fujitaさんは、この2作で日本人のアーティストを起用していますが、今後コラボしてみたい日本人の音楽家はいますか?

「歌手とはやったことがないので、やってみたいですね。クワイアっぽくしたいなと。以前ツアーをしたときに、ハチスノイトさんにお会いしたんですが、独特の声とスタイルでおもしろいと思いました。あと(『Stories』の日本盤をリリースしていたレーベルの)flau関係ではpredawnさんは素敵な声だなぁと思います。そういう方々と何かやりたいですね。ただ、歌詞は難しいですよね。歌詞とストーリーの関係性が自分でも消化できてないので、考えながらですね」

ハチスノイトがイレーズド・テープスよりリリースした2018年のEP『Illogical Dance』収録曲“Illogical Lullaby(Matmos Edit)”
 

――同時代で刺激を受ける音楽家はいますか?

「ニルス・フラームのやっていることは、音楽はもちろんですがミュージシャンとしての姿勢もすごくおもしろいと思ってます。インタヴューを読んでの印象ですけど、反骨精神が旺盛だし、けっこうパンクなところがあると思いますね(笑)。でっかいピアノで弾いてみるとか、ああいうのはおもしろいです」

――最後に、日本の音楽家が海外でチャレンジすることはオススメですか?

「ヨーロッパは近くにいろんな国があって、飛行機で1時間や2時間飛べばいろんな国に行けてライヴの機会が多いので、日本にいるよりもライヴできるんじゃないかなと。日本だけだと1年に何回も行けないじゃないですか。その辺ヨーロッパだといろんな国があって、いろんなフェスがあって続けて行ったりもしやすいし、そういった点で大きく違うのかなと思いますね。あとはいろんな人に会えて刺激を受けることが多いのもありますね。大変なことも多いですけど、興味があるならぜひ出てったら良いと思います。日本にいたらダメというわけじゃ全然ないですけど、世界を意識して作るというのは良いことなんじゃないですかね」

2016年のライヴ映像

 


Live Information
〈Masayoshi Fujita Japan Tour 2018〉

■奈良公演
日程:2018年11月2日(金)
会場:sonihouse(奈良市四条大路1-2-3)
開場 18:30 / 開演 19:00
料金:前売3,000円 / 当日3,500円
【前売りメール予約】
info@sonihouse.net (sonihouse)まで 件名を「11/2 Masayoshi Fujita予約」とし、
お名前/人数/連絡先を明記の上、送信ください。
https://www.sonihouse.net/journal/? 

■京都公演
日程:2018年11月3日(土)
会場:恵文社一乗寺店 COTTAGE (京都 左京区一乗寺)
時間:開場 16:30 / 開演 17:30
出演:Masayoshi Fujita、There is a fox
料金:前売3,000円 / 当日3,500円
【前売りメール予約】
info@nightcruising.jp (night cruising)まで 件名を「11/3 恵文社」とし、
お名前(カタカナ フルネーム)/人数/連絡先を明記の上、送信下さい。
3日以内にご予約確認の返信メールをさせていただきます。
主催:night cruising

■東京公演
“MUTEK JP”
日程 : 2018年11月4日(日)
会場:日本科学未来館 7F イノベーションホール
https://mutek.jp/

★ツアーの詳細情報はこちら

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