DISCOGRAPHY
クイーンが残した華麗なる名盤たち

QUEEN Queen EMI/Virgin EMI(1973)

ジョン・アンソニーとロイ・トーマス・ベイカーがプロデュースしたファースト・アルバム。71年のジョン・ディーコン加入後からデモ制作を始め、ストーンズやボウイら大物たちの録音の合間にスタジオを使っていたためレコーディングに長い期間を費やしたのは有名な話。本国ではレッド・ツェッペリンの亜流と見なされたものの、ブライアンのギターが奏でる特徴的なハーモニーは幕開けの“Keep Yourself Alive”からすでに全開だった。邦題は〈戦慄の王女〉。

 

QUEEN Queen II EMI/Virgin EMI(1974)

初作のリリース後すぐに短期間で録音されたセカンド・アルバム。ブライアン作のナンバーを中心とするA面の〈白〉とフレディのペンによる楽曲で固めたB面の〈黒〉の2部構成で、組曲/メドレー的な作りも含めて同時代のプログレ作品からの影響も感じられる。昂揚感に溢れた出航を告げるような“Seven Seas Of Rhye”(前作の終わりにインストの小品で収録されていた)がシングル・カットされて初の全英TOP10を記録し、本国での快進撃もようやく始まった。

 

QUEEN Sheer Heart Attack EMI/Virgin EMI(1974)

全英2位を獲得して完全に本国での評価を引っくり返したサード・アルバム。“Brighton Rock”や“Now I'm Here”などブライアンらしいハード・ロックも緩急自在ながら、フレディ作のシングル“Killer Queen”が全英2位を記録してクイーンならではの壮麗さはいよいよ次のステージへ。一方でジョンの書いた“Misfire”も採用となり、初めて4人の楽曲が並んだアルバムでもある。全米チャートでも12位まで上昇し、USでのブレイクの足がかりとなった。

 

QUEEN A Night At The Opera EMI/Virgin EMI(1975)

“Bohemian Rhapsody”を収めたキャリア最高傑作とされることも多い一枚で、各人の実験精神と莫大な制作費を注ぎ込まれた英国ロックの金字塔だ。シングルもアルバムも初めて全英1位を獲得。指折りのバラード“Love Of My Life”もあって総合的にフレディの色合いが濃いドラマティックな出来映えながら、ジョンによる上品なポップソング“You're My Best Friend”も忘れてはいけない美曲だろう。ブライアンは“Sweet Lady”でロック色を補足している。

 

QUEEN A Day At The Races EMI/Virgin EMI(1976)

前作と対になるイメージで制作された5作目。欧州各国でNo.1に輝いたほか、日本でも初めてチャート1位を獲得するなど、前作の延長線上で世界的にヒットした。聖歌のようなコーラスに圧倒される“Somebody To Love”やエレガントな“Good Old Fashioned Lover Boy”などフレディ作のナンバーがここでも中心。ハードな“Tie Your Mother Down”や親日家ぶりの表れた“Teo Torriatte(Let Us Cling Together)”などブライアン作の楽曲も光る。

 

QUEEN News Of The World EMI/Virgin EMI(1974)

パンク・ロック隆盛を迎えたシーンの様相も睨んで前2作の作り込みから揺り戻し、従来よりシンプルな意匠で制作された転機の一作。オープニングの“We Will Rock You”と続く“We Are The Champions”の勇壮なスケール感は、その後のスタジアム化を導く前ぶれとなった。一方でジョンらしい美メロの“Spread Your Wings”がコーラスなしだったり、ロジャー自作自演の実質的なソロ曲“Fight From The Inside”もあって作りは多様化している。

 

QUEEN Jazz EMI/Virgin EMI(1978)

数作ぶりにロイ・トーマス・ベイカーをプロデューサーに呼び戻すもメンバー個々の曲志向はさらに拡散。グルーピーを歌ったブライアン作の大味なロック“Fat Bottomed Girls”、ロジャー主導のマッチョなディスコ“Fun It”など、曲ごとの意外性がアルバムとしての佇まいを散漫にしている。いまも人気のピアノ・ロック“Don't Stop Me Now”、奇想天外な自転車オペラ“Bicycle Race”といったフレディ作のヒットも妙に躁状態なのがおもしろい。

 

QUEEN The Game EMI/Virgin EMI(1980)

初のライヴ盤『Live Killers』を間に挿んで2年ぶりのオリジナル作となった、80年代最初のアルバム。インスタントなエルヴィスへのオマージュ“Crazy Little Thing Called Love”とジョンがシックを模倣した“Another One Bites The Dust”という2つの全米No.1ヒットを生み、アルバムも初の全米1位へ駆け上がった。フレディらしい“Play The Game”とブライアンの“Save Me”という従来色の強いナンバーを冒頭と終幕に置きつつ中身は多彩。

 

QUEEN Flash Gordon EMI/Virgin EMI(1980)

前作から半年後に登場した本作はSF映画「フラッシュ・ゴードン」のサントラ。いずれもブライアン作となるシングル・ヒット“Flash's Theme”とラストの組曲的な“The Hero”を除けばすべてインストの楽曲だ。前作で大胆に導入したシンセを大幅に使用した創作は、彼らならではの80年代サウンドを手繰り寄せるきっかけになったかもしれない。

 

QUEEN Hot Space EMI/Virgin EMI(1982)

ジョンとフレディ主導でさらなるディスコ~ブラック・コンテンポラリーへの系統を見せた異色のアルバム。先行で全英1位を獲得していたデヴィッド・ボウイとの“Under Pressure”を除けば、シンセ・ベースを用いた“Body Language”などのシングルが軒並み不発に終わったのもファンの反発を物語る。ただ、ジョンとフレディが珍しく共作した“Cool Cat”は全編ファルセットのスウィートなソウル曲だったり、ジョン作の“Back Chat”は曲も唱法もマイケル・ジャクソンまんまで微笑ましかったり、ユニークな成果もあるのは確か。

 

QUEEN The Works EMI/Virgin EMI(1984)

前作の反動から『The Game』期のバランスに回帰しつつ、ニューロマなどの流行とも同時代性を見せたポップな快作。いかにも80年代的なリズム・ワークをロジャーが施した“Radio Ga Ga”、女装MVも話題になったジョン作の“I Want To Break Free”に加え、初期クイーン風の哀感を帯びたフレディ作の“It's A Hard Life”、ブライアンらしい拳骨ロック“Hammer To Fall”もシングル化。印税で揉めないため……という理由はともかく四者四様な才能の凄さは明白だ。

 

QUEEN A Kind Of Magic EMI/Virgin EMI(1986)

〈ライヴ・エイド〉で関係を修復した4人が手を取り合った力作で、久々に全英1位に復権。バンド名義で書いたスタジアム仕様の“One Vision”やフレディ&ジョン共作のしみじみ系“Friends Will Be Friends”のほか、ロジャーのモダン・ポップ路線“A Kind Of Magic”と“Don't Lose Your Head”がハマっている。本作に伴うツアーの模様はこの年のうちにライヴ盤『Live Magic』にまとめられるが、そこでも聴けるネブワースでのショウが4人で最後の演奏となった。

 

QUEEN The Miracle Parlophone/Virgin EMI(1989)

それぞれのソロ活動を挿んで3年ぶりに4人が集結した全英No.1アルバムで、民主的に曲作りが進められた結果、全曲がクイーン作でクレジットされている。デヴィッド・リチャーズを共同プロデューサーに迎え、仰々しい初期のスケール感とストロングな80年代路線のマナーを融合したような雰囲気はヴェテランならではの総合力か。骨太ロックな先行カット“I Want It All”やスピード感に溢れたスリリングな名曲“Breakthru”がヒットした。

 

QUEEN Innuendo Parlophone/Virgin EMI(1991)

フレディを含む4人で完成させたという意味においての、実質的なラスト・アルバムだ。待望感も手伝って全英No.1を易々と記録し、クラシックやフラメンコを“Bohemian Rhapsody”風に展開させたプログレっぽい表題曲も全英チャートを制覇。ブライアン主導のカラッとした直球ロック“Headlong”もありつつ、情感のこもる“These Are The Days Of Our Lives”や悲痛なまでのラスト・ナンバー“The Show Must Go On”などは状況を窺わせる。

 

QUEEN Made In Heaven Parlophone/Virgin EMI(1995)

『Innuendo』制作後にマウンテン・スタジオで行われたセッションにおけるレコーディング素材などを元に、残ったメンバーで編集作業を行って仕上げられた一枚。フレディのソロ作『Mr. Bad Guy』(85年)収録曲など素材の出所はさまざま。フレディ最後のヴォーカル録音だという“Mother Love”や彼が書き下ろした最後の曲となる“A Winter's Tale”など、バラード調の曲を軸にまとめた清らかなヴォーカル・アルバムだ。