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【Pop Style Now】ベイルート、トロ・イ・モア、ロイヤル・トラックスなど今週必聴の5曲

2018年10月19日~26日

【Pop Style Now】ベイルート、トロ・イ・モア、ロイヤル・トラックスなど今週必聴の5曲

天野龍太郎毎週金曜日にMikiki編集部の田中と天野がお送りしている〈Pop Style Now〉です。この一週間メタルしか聴いてなかったので、軌道修正に時間がかかりました」

田中亮太「そうだったんですね……。最近、黒い服ばかり着ているなと思っていました。特にオススメのバンドは?」

天野「(黒い服は着てないけど……)ハイ・オン・ファイア、ベヒーモス、アースレス、ピッグ・デストロイヤー、ヴェイン、〈Thou〉と書いてザウ、今年はデフヘヴンの新作も最高でしたし、書ききれません!」

田中「週末に聴きます。そんなわけで〈Song Of The Week〉!」

 

Beirut “Gallipoli”
Song Of The Week

天野「今週の〈SOTW〉はベイルートのカムバック・シングル“Gallipoli”です!」 

田中「ベイルートはニューメキシコ、サンタフェ出身のザック・コンドンが率いるバンドです。2006年のファースト『Gulag Orkestar』や2007年のセカンド『The Flying Club Cup』など、寡作ながらも傑作ばかりを残していますね」

天野「アーケイド・ファイアやスフィアン・スティーヴンスやなんかと共に、2000年代のインディー・ロックのリスナーにとっては思い入れのある存在なんじゃないかなと思います。ベイルートのサウンドはワールド・ミュージックのエレメントを取り入れているとよく言われますよね」

田中「ですね。コンドンはトランペットやフリューゲルホルンを演奏するんですが、管楽器や弦楽器をふんだんに使う編曲には、郷愁を誘う哀感があります」

天野「バルカン半島~地中海沿岸の民族音楽っぽい、ヨーロッパ的な雰囲気なんですよね。“Gallipoli”って曲名もトルコの地名から取られているみたいですし」

田中「確かに、自分もベイルートの音楽はエミール・クストリッツァの映画と同じフォルダに入れているかも。とはいえ、過去作に携わったオーウェン・パレットなどと同様に、音作りはモダンでもあるんですよね」

天野「そうなんですよね。この曲は、ベイルートが来年2月、約4年ぶりに発表するアルバム『Gallipoli』のタイトル曲です」

田中「折り重なったホーンやコーラス、泥臭いリズム、それに大きな部屋で一発録りしたかのような音像が感動的ですね」

天野「泣けます。ベイルートの音楽って、壮大な感じもありながら、すごく小さなコミュニティーのための音楽って感じがするんですよね。それこそアーケイド・ファイアみたいな。ちょっと文脈は違いますけど、日本のMaher Shalal Hash Bazやyumboにも通じる何かを感じるんです。そういうところに、すっごくグッときちゃうんですよね……」

 

Pom Poko “My Blood”

田中「次のポン・ポコは、ノルウェー出身の4人組。この“My Blood”は、来年の2月にUKのレーベル、ベラ・ユニオンからリリースされる初作『Birthday』の収録曲です」

天野「ベラ・ユニオンといえば、元コクトー・ツインズのサイモン・レイモンドが運営しているレーベルですね。Mikikiでは、設立10周年を迎えたタイミングでサイモンがレーベルが歩んだ道程や思い入れの深い作品について語ったインタヴューを掲載しました。いい記事なので、ぜひ読んで!」

田中「そうそう。なので、このポン・ポコは、ビーチ・ハウスやジョン・グラントをリリースしてきた目利きと言えるレーベルが、北欧で発見したニューカマーというわけです。それにしても、ほっこりするバンド名だ!」

天野「彼女たちはジブリ作品の大ファンらしくて、この名前もズバリ『平成狸合戦ぽんぽこ』から取ったみたいですよ」

田中「〈この映画は、私たちのコンサートがこうであってほしいという多くの瞬間をとらえています。エネルギーに溢れ、早いペースで、視覚と聴覚にたくさんの刺激を与え、そして最も大切なことは、クレイジーで楽しいということ〉とステイトメントを出していますね」

天野「そうなんだ。多摩に馴染みのある僕にとっても〈ぽんぽこ〉はオールタイム・フェイヴァリットです。高畑勲監督に合掌……」

田中「ポン・ポコに話を戻すと、確かにコケティッシュなヴォーカルとアグレッシヴなギターが刺激的ですね。テンションの高いダンサブルなパートとアンニュイで静かなパートが、矢継ぎ早にローテーションしていく構成も〈アニメーション的〉と言っていいかも」

天野「ギター・フレーズやリズムのトリッキーさも耳に残りますね。彼らはマリの音楽家、アリ・ファルカ・トゥーレなど、西アフリカのサウンドからの影響も公言しています。アフリカのサウンドって、いま、かなり影響力ありますよね」

田中「新作からは先に“Follow The Lights”という曲も公開されていたんですが、こちらもポスト・ハードコアな曲調のなかに、ファニーな打楽器(ウッドブロック?)の音やシャーマニックなコーラスを加えた不思議な楽曲。neco眠るあたりが好きなリスナーにもおもしろがってもらえそう。要注目ですよ!」

 

Royal Trux “Every Day Swan”

天野「なんとロイヤル・トラックスが18年ぶりに新曲を発表しました! この“Every Day Swan”とクール・キースをフィーチャーした“Get Used To This”の2曲を同時に公開しています」

田中「若者には知らない人も多いと思うので簡単に説明すると、ロイヤル・トラックスは元プッシー・ガロア(ジョン・スペンサーも在籍)のニール・マイケル・ハガティがジェニファー・ヘレマと87年に結成したガレージ・ロック・デュオ。ノイズまみれのトラッシーなギターと、ダウナーかつ野性味溢れるヴォーカルで、オルタナ・シーンでカリスマ的な存在感を放っていました」

天野「2001年に解散したんですけど、2015年に再結成。その後はライヴ活動は続けていたものの音源のリリースはなく、今回ついに新曲を出したというわけです。これは海外メディアもセンセーショナルに報じていましたね。僕もびっくりしました」

田中「先週、ファット・ポッサムのBandcampで、ロイヤル・トラックスの過去カタログが一気に取り扱いをスタートしていて、どういうことかと思っていたら、この布石だったというわけ」

天野「“Every Day Swan”はブランクを感じさせない……というか18年前とほとんど変わっていない、ヘロヘロでスカミーなロックンロール。いきなりガラガラ声で歌われる〈♪スワン~〉に吹いてしまいましたよ」

田中「クール・キース参加の“Get Used To This”も音はローファイなのに、ラップとウワモノのシンセには妙なスタジアム感があって、これもめちゃくちゃヘンな曲。でも、〈笑える〉ってのはロックに大事な要素ですからね」

天野「同感ですね。ビートルズの音楽にもユーモアはありましたし。みんなフランク・ザッパとか、ちゃんと聴くべきなんですよ!」

田中「爆笑できつつ、やっぱり格好良いのが最高です。アルバムのリリースも予定している模様!」

 

Toro Y Moi “Freelance”

天野「4曲目は、チャズウィック・バンディックのソロ・ユニット、トロ・イ・モアが来年の1月にリリースするニュー・アルバム『Outer Peace』から。いつになくダンサブルな、フロア対応チューンになっています」

田中「激ファンキーなグルーヴ! ブリブリのベースラインに思わず腰が動いちゃいます。チャズのキャリアのなかでは、レ・シンズ名義での作風に近い印象もあるかと。昨年発表の前作『Boo Boo』は、全編を通して強烈なメランコリアが漂う作品で、個人的には2017年ベスト・アルバムのひとつだったんですが、その反動もあるのでしょうか」

天野「前作の制作前にポートランドへと移住したそうで、『Boo Boo』は新しい街で感じた孤独感をとらえたものだったのかも。今回は、また慣れ親しんだオークランドに戻ってきて制作したとか」

田中「なる~。地元で羽を伸ばすことができたというわけですね。それにしても、この曲はホントに洒落てますね……。ギターのループやビットクラッシャーっぽいエフェクトのかけ方は、ちょっと90年代のフレンチ・タッチ感もあるような。エティエンヌ・ドゥ・クレイシ―やカシアス……京都・三条高倉のZESTでいっぱい12インチを買ったものですよ」

天野「遠い目をしている……。ダンサブルだけどローファイで、へなっとしているところがチャズならではの曲ですね。あとimdkmさんもブログに書いていらっしゃいましたけど、〈Freelance〉って曲名がちょっとウケる。新作には、アブラやウェットも参加しているそうで、どんなアルバムになっているか楽しみですね。早く聴きたい!」

 

Cardi B “Money”

天野「5曲目はご存知、カーディ・Bの新曲“Money”です。ド直球のタイトル!」

田中「彼女のことは、4月にデビュー・アルバム『Invasion Of Privacy』がリリースされたタイミングで、すでに〈Pop Style Now〉でも紹介していましたね」

天野「です。なので彼女について詳しく知りたい方はそっちの記事を読んでいただくとして、あれから女の子を出産、ミーゴスのオフセットと結婚と、吉報が届きまくってて。その一方でニッキー・ミナージュとのバトルは続いていたり、怒れる姉御感は健在であります。ちなみに愛娘の名前は〈カルチャー(Kulture)〉!!」

田中「出産と結婚という人生の一大イヴェントを経験しながら、ラップで客演しまくってるのもすごいですよね。なかでも、いま大ヒットしているのがマルーン5が彼女をフィーチャーした“Girls Like You”。ビルボードのチャートで現在、5週連続トップとなっています。あと、DJスネイクのヒット曲“Taki Taki”にもセレーナ・ゴメスと一緒に参加していましたね」

天野「“Taki Taki”、ラテン~レゲトンなカッコイイ曲ですよね~。そんな多忙なカーディですが、今回の“Money”は半年ぶりのソロ・シングルです」

田中「ピアノのリフや、スカスカだけど無骨でヘヴィーなプロダクションがクール。〈マニー〉という声ネタも中毒性があります」

天野「プロデューサーは、J・ホワイト・ディド・イット。出世曲“Bodak Yellow”も手掛けていた人です」

田中「曲の後半で〈ワカンダ・フォーエヴァー!〉ってラップしてるのがアツい!」

天野「『ブラックパンサー』ですね。僕もそこが超いいなと思いました。にしても、〈モーニング・セックスが好き/でも小切手ほど好きなものなんてこの世界にはないわ〉っていうコーラスのリリックがヤバい」

田中「カルチャーちゃんへのシャウトアウトもあったり」

天野「あとは〈バッド・ビッチが求めるものはマネーなのよ〉っていうのがいかにもカーディ。というわけで、今週はこのあたりで。また来週!」

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