フランスの哲学者ジル・ドゥルーズが記した大著『シネマ』の解説書である。本書の最大の特徴は、ドゥルーズについても、哲学についても、映画理論についても知らずに読むことを前提とした「ゼロから」の入門書である点で、例えば映画監督名や作品名すら殆んど登場しない。ドゥルーズの哲学の難しさをレベルを下げて安易な分かり易さに貶めることなく、ロジック自体の面白さをダイレクトに伝える刺激的な1冊! 図式を活用したり、おもしろい具体例をあげて読み手を置いてきぼりにさせないなどという20代の大学院生である著者の“気配り”が独特なドライヴ感を生んでいる。