アンドレ・メマーリによって最大限に引き出された魅力が眩しい2作目

 叔父トニーニョ・オルタ、父ユリ・ポポフの才能を余すことなく受け継ぎ、誰もが〈ミナスの宝〉と賛辞を贈るSSW ヂアナ・オルタ・ポポフ。けして言い過ぎでなく宣伝文句でもなく、春の麗のような、その中を舞う水しぶきの煌めきのような音楽の美しさは誰の目から見ても比類のない才能である。しかしそれはエレクトロニクスを用いてミナスらしい旋律に新しい手触りをもたらし、あのイヴァン・リンスがレビューまで書いた前作『Algum Lugar』ですでに証明済みだったと思ったのだが、この2作目の素晴らしさはなんだろう。目から鱗というか、いま初めてヂアナの魅力に出会った気さえする。

DIANA HORTA POPOFF アモール・ヂ・ヴェルダーヂ Musas(2018)

 今回はかねてからの知り合いでイヴァンに負けず劣らず彼女を絶賛しているピアニスト、アンドレ・メマーリが自らレコーディングを牽引。もちろんヂアナ自身が成長したからこそではあるが、繊細でいて柔らかで自然な甘味を含んだ歌声の際立ちや、その解像度の向上、楽曲に含まれる瑞々しさはメマーリが彼女の魅力を最大限活かすため手腕を発揮し全面的に参加したことが大きい。彼の音楽に対する美意識が起こした相乗効果はファン・キンテーロの時と同等かそれ以上かもしれない。

 それに今回はここ数年活動を共にしているドラマーのクリストフ・ブラスに加え夫でありベーシストのマティアス・アレマーニュという最も気心の知れたメンバーでのレコーディング。終始リラックスしたムードの中でオリジナル曲や、ミルトン・ナシメント“Ponta de Areia”の素晴らしいカヴァーから前作にも収録していた“Toda Menina”のメドレーなど全編を通しサンバ、ジャズ、ボサノヴァといったリズムや独創的なメロディとミナスの伝統を受け継ぐ洗練されたハーモニーが創造的に解放感いっぱいに躍動している。

 毎日のように優れた音楽が、才能が誕生するブラジルの中でこれほどの驚きと感動を与えられる存在はまさに奇跡。