4年ぶりの帰還となったネナ・チェリー。引き続きフォー・テットにプロデュースを委ねた本作では、さまざまな事柄を醜悪なヘイトで抑圧してくるこの世界において、自由な意思や思想が消えないよう戦う姿を見せてくれる。マッシヴ・アタックの3D参加曲“Kong”を筆頭に、レゲエ、ダブ、ヒップホップ、R&B、アフロビートなど多彩な要素から成るサウンドは、分断が叫ばれて久しい現在へ捧げる祈りのような静謐さを湛えたもの。だが、その音に乗る歌はとても力強い。心が引き裂かれるほどの悲しみ、徒労感、諦念に襲われたとしても、それに呑み込まれまいとする精悍な言葉が聴き手の心を高ぶらせる。そんなこのアルバムは、戦えばその美しさはひときわ輝くといったことを教えてくれる一枚だ。