INTERVIEW

5lack『KESHIKI』 変わり続ける風景と心象を描いた久々のソロ・アルバムを語る

5lack『KESHIKI』 変わり続ける風景と心象を描いた久々のソロ・アルバムを語る

流れる景色を前に佇んで、いまその眼は何を映している? 変わり続ける風景と夢から覚めた心象を描いた久々のソロ・アルバム『KESHIKI』——この男はやはり格が違う!

変わらず、変わり続けてる

 「自分の人生ってずっと変化してきたんですよ。変化しないことってもったいないっていうか、完成してるなら生きる理由って何だろというか、逆に辛そうにも思うし。だから変わり続けてるということに関して(自分は)変わってない。自分から見たら、変わっていっているのは景色のほうなんですよね」。

 毎日がたとえ同じことの繰り返しのように見えたとしても、それを積み重ねていくなかで、人の気持ちや見える景色は変わりうる。ましてや日々、さまざまな状況に身を置く立場であればなおさらだ。春のLIQUIDROOMワンマンに始まり、夏はソロで初の〈フジロック〉出演、そして10月にはBLITZ赤坂でのワンマンと順調に続いたライヴ。また自身のリリースでは、Olive Oilとの共作『5O2』と、総合プロデュースを務めたスケボーDVDのサントラ盤の相次ぐ発表に加え、シングルのみならず過去作の配信/ストリーミングを一挙に解禁するなど時代に即した動きも模索。さらにkZmの楽曲への参加に、アディダスのキャンペーンモデル/楽曲提供——2018年だけに限定してみても5lackは活動の幅をますます広げた観がある。ソロのアルバムとしては『夢から覚め。』(2015年)以来となる新作も、そうした日々のさまざまから生まれた軌跡ということになろう。前作リリース後、2年あまりに渡って制作され、ここにようやくまとまった新作のタイトルは『KESHIKI』、すなわち〈景色〉。〈歩き方を変えずとも〉〈常に変わり続ける〉景色を写し取ったその一端は、Fumitake TamuraやLISACHRISらのプロデュース参加や、以前シングル・リリースされていたKOHHやRUDEBWOY FACEとの共演曲という形でも表れた。彼らを迎えた経緯について、5lackはこう説明する。

5lack KESHIKI 高田音楽制作事務所(2018)

 「Fumitake TamuraさんもLISACHRISもアーティストとして魅力的なことはもちろんだけど、5lackとやるとは誰も想像できなかったものをかなりの威力でやりたかったんです。RUDEBWOY FACEさんやKOHHなんかもそうかもしれません。ビートが出来て自分が1ヴァース目を乗せた後に急にアイデアが降りてくるんですよね。〈これにあの人が合いそう!〉みたいに。料理みたいな感じで、〈今日のスープには何だかセロリが合いそう〉とか。KOHHは昔から知っていて進化していく姿を遠目からですがワクワクして見ていたし、いずれは一緒にやりたいと思っていた。RUDEBWOYさんはずっとファンで、レゲエとヒップホップのセッションも新鮮になりかけていた時期だったから、お互いのジャンルの奴らにかますキッカケになったかな」。

 流行りには左右されぬ懐かしさや温かさと、瞬間瞬間の自分が映った音がモットーと言う自身のトラックメイクにおいても、今回は新たな面が打ち出されている。

 「今回の作品はビートに関して、サンプリングを使用してるものが一切なくて……単音に関してはまぎれてるのかな? まあ、大体がオリジナル音源で作られてるんです。なので、トラックメイクに関しては進歩があったような気がします。あとは独特な音質ですかね? 綺麗なら綺麗なほどいいってわけではないので、ミックスもこだわってやらせてもらってます」。

 

同じ場所にはいられない

 さらに、常に新しさを意識しているというラップ/ヴォーカルはもちろん、歌詞の面でも新たな試みが。

 「最近のトラップ的なノリも採り入れつつ、90年代のスタイルを活かしたり。歌唱に関しては新しいんだけど、癖になるようなメロディーラインをつけてみた。ほぼリリックを書かないでパンチイン・スタイルで録音したので、思いもよらない言葉が出てきたりしてるかも。重い言葉もフロウに乗せればすんなり出てきたりして」。

 リヴァーブの効いたトラックにこびりつくような歌唱を纏わせた“Twilight Dive”、シンプルながらも力感の溢れるLISACHRISのビートに自在な譜割でフロウの幅を見せつける“SITT”やKOHHとの“24365”、メロウなトラックに〈考えないのは後が辛い/考えながらじゃ辛くて歩けない〉とのラインがリアルな“Last Day”……迷いや不安を受け止めてなお前向きな意志を見せたOlive Oilとの『5O2』を経て、5lackは本作のラスト“進針”で〈俺らはどこに行くの?〉と問う。迷いつつも一方でそれを過ごすこともできたソロ前作『夢から覚め。』の軽やかさは後退し、ここでの彼は、先の問いを発しつつも答えの出ない虚ろな生(=今)をそのまま受け止めているようにも見える。「どうでもいいことをラップするほうが難しくはなってきているのかもしれない。時代とかもあるのではないでしょうか、やらなきゃいけないことがたくさんあるし、これ以上ごまかしてはいられない」という彼の言葉はその答えになっているだろうか。

 「基本的にアルバム作品は、僕のダイアリーでもあるので、そういう意味でも年齢的な変化や感じ方の変化はあるのかもしれないですよね。あと感情表現が上達してきているのかもしれません。してたら良いです(笑)」。

 もっとも、本作には「俺の身の回りのうまくいかない現状を抱えた仲間がモデルになってる曲」が少なくないともいう。「基本は楽曲の良さに集中していただけたら幸いです。歌詞は自然と入ってくる部分だけでいいのかもしれません」と彼は続ける。

 「今回のアルバムは本当の意味でポジティヴ(前向き)ではあると思います。 後輩たちの世代が生きやすい世の中になることが、自分たち世代付近にあったネガティヴへの復讐かもしれませんね、嘘です(笑)。でも何か本当に良いものが生み出されるきっかけになれるなら嬉しいですし、(聴く人の)何かおかしくなっている部分を調節できたら。そんでまた遊びに出かけてきてください」。

 「ひと段落したので、いったんフラフラしてきます」——そう語る5lackの姿に変わらぬフットワークの軽さが戻った。

 「人は歳を取っていくし、いつまでも同じ場所にはいられないと思うので。しっかり今を味わって、さっさと次の場所に行って、そこでまた新鮮な何かに取り組みたいですね」。

5lackが客演した近作を一部紹介。

 

『KESHIKI』に参加したアーティストの関連作を一部紹介。

 

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