INTERVIEW

Opus Inn『Time Rolls On』 さまざまなスタイルを消化して描き上げた都会のサウンドトラック

Opus Inn『Time Rolls On』 さまざまなスタイルを消化して描き上げた都会のサウンドトラック

このイメージやアートワークがその音風景を如実に物語っている? ここ数年のさまざまなスタイルを消化した2人組が描き上げる、洗練された都会のサウンドトラックとは……

 もしあなたがyahyelやPAELLASの楽曲を好きなら、ここで紹介するOpus Innの作品もきっと気に入ることだろう。神戸で結成されたこのユニットは、メロディーと歌詞、曲の構成を手掛ける堀内美潮(ヴォーカル)、トラックメイク全般を担当する永田誠(ギター)の2人組だ。ユニット名は山下達郎のライヴの舞台セットに描かれていたモーテルの看板の文字から拝借したもの。まだ両者とも20代半ばながら、はっぴいえんどなどの昔の邦楽から海外の最新のポップスまでを並列で聴き漁るお互いの音楽的嗜好が合致し、ユニット結成に至ったという。

 「自分と永田はもともと別々のバンドで活動してたんですけど、たまたま同じ日に二人とも脱退しちゃって。で、その頃は二人で神戸のシェアハウスに住んでたので、一緒に音楽を作るようになったんです。最初はチェインスモーカーズみたいなトラックとか、ジェイムス・ベイやエド・シーランっぽい曲とか、いろんなスタイルを試してたんですけど、“Grand Illusion”という曲が出来たときにそれがいちばんしっくりきたので、その方向性を軸に曲を制作してはSoundCloudにアップするようになって」(堀内:以下同)。

 昨年12月にはそれらの音源をまとめた初EP『Time Gone By』をリリース。件の“Grand Illusion”を筆頭に、アトモスフェリックな音響処理を施したシンセ主体のアレンジと、堀内のどこか憂いを帯びたセンシュアルな歌声、イラストレーターの永井博が描き下ろしたジャケットに象徴されるトワイライトなアーバン感の融合が、ブラッド・オレンジのようなR&B志向インディー・ポップの感性でまとめられた作品となっていた。

 「その頃はムラ・マサとかス・ルイス、ホンネみたいなイギリスのエレクトロ系の曲をよく聴いてたので、トラックメイカー的な志向が強かったんです。本当はヴォーカルも誰かをフィーチャーしたかったんですけど、歌ってくれる人がいなかったので自分で歌って(笑)」。

Opus Inn Time Rolls On OCTAVE(2018)

 以降もライヴ・オーディション〈TOKYO BIG UP!〉でグランプリを獲得し、アヴァランチーズやタキシードの来日公演をサポートするなど、名前を広めてきた彼ら。今回の新作EP『Time Rolls On』は、そういった追い風を受けてなお変化する自分たちの理想の音楽性を追求した、現代的なドリーム・ポップ集になっている。

 「自分はちょうど『Time Gone By』を出した頃に上京したんですけど、東京に出てくると自分の大人になった一面が見えてきたんですよ。それもあって前作よりも落ち着いた音楽になって。あと最近はダニエル・シーザーみたいなゆったりしたR&Bをよく聴いてたので、その影響も受けてると思います。また、全体的にも夜のイメージがありましたね」。

 その言葉通り、前作に比べて音数が絞られ、スロウテンポのじんわり浸透していくタイプの曲が増えた本作だが、以前からライヴで演奏していたという“Innside”は、『Time Gone By』の延長線上で今日的なシティー・ポップの波とも共振するようなナンバーだ。

 「この曲でサックスを吹いてもらった安藤(康平)さんは、以前にWONKのライヴを観た時のプレイが印象的で、いつかご一緒したかったんです。もともとギター・ソロを入れる予定だったところをサックスに変えたんですけど、アーバン感が出たし、頼んで良かったです」。

 さらにレゲトン要素がブレンドされたスムースな“Feel It”にはSIRUPが参加。堀内とのデュエットで徐々に熱を帯びていく歌声を届けている。

 「SIRUPは友達のように接せる音楽仲間で、今回は〈なんかエロい曲を作りたい〉みたいな感じで始まりました(笑)。SIRUPの日本語詞も違和感なくハマって最高ですよね。自分たちの音楽は日本語が乗せにくく、いまは全部英詞ですけど、自分もいつか日本語詞でやってみたいですね」。

 また、「自分は前にサイケデリックなロック・バンドをやってたので、その頃の雰囲気が出たかもしれない」という“Dim Light”では、遠くにいななくギターが白日夢めいた光景を描写。そこはかとなくブルージーな哀愁が漂う“Blue”を含め、生楽器の割合を増しているのも本作の特色と言えるのかもしれない。

 「自分たちはジャンルレスというか、人に〈どんな音楽やってるの?〉って訊かれてもパッと答えられないんですよね(笑)。今回のEPは自分の中で映画のサウンドトラックみたいなイメージが強いし、将来的には本物のサントラを作ってみたいとも思います」。

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