〈ポップであること〉を身上に、さまざまなカラーの楽曲を提示してきた4人。そのヴァリエーションを広げつつ、改めて〈踊れる音楽〉にフォーカスした新作が到着!

〈踊れる曲〉を軸に

 昨年のレーベル移籍以降、〈ポップでポップなバンド〉から〈ハイブリッドポップスバンド〉へとプロフィールを変更し、ヴァラエティーに富んだ楽曲を収録した2作品『SHUFFLE!! E.P.』『KICK UP!! E.P.』を発表してきたShiggy Jr.。そのチャレンジを踏まえつつ、改めてみずからの核を見つめ直して制作されたのが、2年ぶりのフル・アルバム『DANCE TO THE MUSIC』だ。ディスコ・ポップを軸に、ストリングスとホーンで彩られた〈踊れる音楽〉が詰まった一枚である。

Shiggy Jr. DANCE TO THE MUSIC ビクター(2018)

 「〈Shiggy Jr.の核って何だろう?〉って改めて話したときに、自分たちは最初に『LISTEN TO THE MUSIC』(2014年)で話題になったから、ダンスっぽい印象があるのかなって思って、そこから今回は〈踊れるアルバムにしよう〉って話になったんです。ただ、〈昔に戻ろう〉みたいな話ではなく、2枚のEPでやってきた洋楽っぽい要素とかも移植して、一連の流れがいい感じで収まったと思います」(原田茂幸、ギター/ヴォーカル)。

 「これまではオムニバス的な作品が多くて、今回もジャンルや曲調はいろいろなんですけど、〈踊れる曲〉っていう軸ありきで作ったのは私たち的には新鮮で。アレンジャーさんも、前まではいろんな人にお願いしてたけど、今回は“サマータイムラブ”のときにお世話になった釣さん(agehaspringsの釣俊輔)に全編で関わっていただきました」(池田智子、ヴォーカル)。

 「新たな名刺代わりになる作品が出来たと思っていて、〈これで勝負するぞ〉って、チーム全体がそういう雰囲気になってますね」(森夏彦、ベース)。

 「いろんなシーンで活躍できる曲たちが揃ってると思うから、ライヴを想像しながら聴いてもらえたらおもしろいと思います」(諸石和馬、ドラムス)。

 

よりクラブの雰囲気も

 本作の幕開けを飾るのは、ドラマのタイアップにも起用された真骨頂のディスコ・ナンバー“ピュアなソルジャー”。さらには、ハウスのトラックとキャッチーなメロディーが組み合わさったキラー・チューン“TUNE IN!!”へと続き、〈踊れる音楽〉というコンセプトをさっそく印象付けると共に、生演奏と打ち込みを横断するShiggy Jr.らしさも提示している。

 「ステージに立ってると、みんながライヴを楽しみに来てくれてるのをすごく感じるんです。日常では学校や仕事や家庭でそれぞれの戦いがあるけど、自分を解放する場所としてライヴに来てくれてるのかなって。そういう人たちに前向きな気持ちになってもらえるように、“ピュアなソルジャー”を歌いました」(池田)。

 「“TUNE IN!!”は弾き語り状態のサビと、マイナーな感じの4つ打ちをくっ付けたら、サビで転調してるのがすごいハウスっぽくて、おもしろい形になったなって」(原田)。

 アシッド・ジャズ風の軽快な“シャンパンになりきれない私を”や、ホーン・セクションを配した“サングリア”では、〈夜〉のムードが少し大人になったバンドの現在地を示しつつ、アコギで生の質感を加えた王道のポップス“magic of the winter”からは、変わらないJ-Pop愛が感じられる。

 「“シャンパンになりきれない私を”はジャミロクワイっぽい、スピード感のあるアレンジもいいんですけど、まずタイトルがいいですよね。妙なバブリー感があるというか、〈東京カレンダー〉とか〈港区女子〉みたいな感じで、ドラマっぽい。〈薄暗いカウンターで君を見つめて〉とか〈一晩限り味わってみて〉とか、弦のスリリングな感じと、歌詞のスリリングな感じもマッチしてるなって(笑)」(森)。

 アルバムの中盤には、ふたたびアッパーな楽曲が並ぶ。〈もともとのイメージはジェス・グリン〉というEDM風の“DANCE DANCE DANCE”から、〈ダフト・パンクの“Get Lucky”以降〉を感じさせる“we are the future”へと続き、フェイドアウトの曲が多い点もクラブの雰囲気を連想させる。

 「自分の声は格好良い曲にハマらないなってずっと思ってたんですけど、“DANCE DANCE DANCE”とかは、自分の声を素材としておもしろくなればいいなって。ロックっぽい曲以外ではここまでサウンドが強い曲ってなかったし、タイトルのリンクも含め、アルバムを象徴してる一曲だと思います」(池田)。

 

みんなで楽しめるものに

 そして、後半では原田のヴォーカルもフィーチャー。ピアノとクラップを組み合わせたジャジーな曲調の“you are my girl”ではソウルフルな歌声を聴かせ、シンセ・ファンクな“どうかしちゃってんだ”ではラップを披露するなど、八面六臂の活躍を見せている。

 「“you are my girl”は、歌もギターもほとんどを自分の家で録っていて、商業スタジオに入らずとも今っぽい音にできたかなって。“どうかしちゃってんだ”はもともとブレイクビーツみたいな感じで、ベースも生で、ランDMCみたいな感じだったんですけど、〈踊れる音楽〉っていうコンセプトを踏まえてこのアレンジになりました」(原田)。

 アルバム終盤のハイライトは、本作で唯一のバラード“looking for you”。深いリヴァーブのかかった音像や、ギター・ヒーローのようなソロなど、80年代のロック・バラードを連想させつつ、電子音も加えて絶妙な落としどころを見つけている。

 「まったりした曲だけど、ドラムがしっかり16でいないと、他の楽器のモタリがわからず、ただ引っ張るだけになっちゃうんですよね。なので、ハイハットはずっと同じ音を出そうと努力して、キックとスネアは80年代のハード・ロックみたいな感じを表現するために、音作りにもこだわって。ドラムの音自体は超デッドにして、ゲートリヴァーブの処理で無理やり膨らませると、こういう感じになるんです」(諸石)。

 『SHUFFLE!! EP』にも収録されていた“誘惑のパーティー”がラストに据えられ、池田の〈let's dance〉という声と共に本作は締め括られる。来年1月からスタートする過去最大規模のワンマン・ツアーでは、各地で熱狂的なダンス・フロアが生まれるはずだ。

 「アルバム全体を通して、ずっとノれるような作りになってるので、ライヴもそうなると思うんですけど、歌や演奏でちゃんと魅せることも可能な曲たちだと思います。ライヴもちょっと大人になってきたというか、みんなにも無理なく楽しんでもらえるものになると思うので、ぜひ遊びに来てもらいたいです」(池田)。

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