近年は青い果実としても活動しているビートメイカー/MCのソロ新作は、まったく異なる内容のラップ盤とインスト盤で構成された2枚組。前作『prelude』(2015年)でも自身の演奏をサンプリングに用いていたが、今作ではその後に入手したというフェンダー・ローズの快楽的な響きを前に出し、生演奏の割合をグッと増している。ラップ盤ではACHARUとのレイドバック・ソウルやL ANDRE、勝といったゲストとの絡みもありつつ、メロウ&スペイシーな音像に馴染む落ち着いたトーンの語りを聴かせる。インスト盤ではさらにドープな領域へ踏み込み、鍵盤とファットなビートが織りなす漆黒の音世界は宇宙の深淵に届かんばかり。昨今の越境ソウル~ジャズとも意図せずしてリンクする、まさにノー・ボーダーな傑作だ。