過去の自分のかさぶたにも重ねながら〈今という痛み〉を放すなと歌う冒頭“尻サドル”に、変わらぬ苦悩を見る新作。〈朝方にあのラッパーが女の子をお持ち帰りする頃/俺は持ち変えるマイクから吊り革へ〉と歌う表題曲は、二足のワラジを履き続ける男の渾身の吐露と言えそう。やりきれなさにあがき吐き出すラップは、ヴァースを進むごとに身悶えするかのようだ。それでも心に火を灯し続ける35歳の戦いの記録。