弱冠16歳とは思えない風格を纏う、話題沸騰中のシンガー・ソングライターによる初アルバム。前シングル同様、季節を綴った歌詞にも馴染む、一瞬で切ない情景を立ち上げる歌声はやはり絶品で、出だしの1秒で射抜かれる。さらに、時折入る巻き舌やガナリっぷりにはロック・スピリットを感じたりも。また、今いる場所から鳴らすSOSにも、見えない恐怖に立ち向かっていく覚悟にも聴こえる“国”は現代のブルースとしても機能するし、“塔と海”の〈模範的な夜の森林〉といった言語センスも素敵すぎ。独特のコード進行によるアコギの弾き語りがメインながら、“龍の子”ではみずからDTMに挑戦したそうで、甘美に響く奇矯ハウス~エレクトロに仕上げている。前野健太やスカートと近しくも異なる存在になるかも。

 


4歳でギター、小学校6年生で作曲を始めた16歳、高校1年生のシンガー・ソングライター。今年ネット番組で披露した歌とパフォーマンスが当時15歳とは思えないもので、SNS上で次々拡散。著名人も話題にしたことで一躍有名になった。番組で披露した“五月雨”を含む3曲を配信&シングルCDでリリースし、今作が待望のファースト・アルバムとなる。初めてDTMに挑戦した“龍の子”を収録しつつも、ギター1本と歌のみのスタイルはそのまま。鋭いストロークのギターが奏でる奇想天外なコード使いや、現実と空想を混ぜ合わせたような歌詞で、既製品に飽き飽きした音楽ファンを〈音楽って無限大なんだな〉と思わせてくれる。