60年代に米コロンビア・レーベルからリリースしたソングバードたちが集結
多彩な顔ぶれと貴重な音源で彩られた華やかなコンピ

VARIOUS ARTISTS コロンビア・グルーヴィー・ソングバーズ ソニー(2018)

 ジャケットは、懐かしいヘアスタイルやファッションの女性たちで賑やかだ。それを眺めているだけでも、得をしたというか、幸せになったような気がする。そして、手に取ると、ワクワクしてくる。僅か直径12センチのプラスティックの円盤の中に、かれこれ50年以上も前の、華やかで、麗しき女性たちの歌声がキラキラしながら詰まっているのか、と、それだけでも嬉しくなってくるのだ。

 60年代に、コロンビア・レコードから発売された女性ポップスシンガーたちの歌声が、合計24曲集めてある。いわゆる、コンピレーション・アルバムだ。ドリス・デイにジョニー・ソマーズにパティ・ペイジと言った有名どころから、スーザン・クリスティにエイプリル・ヤングといったように、余り馴染みのない人たちまで(ぼくが知らないだけかもしれないけど)、顔ぶれが多彩というのも楽しい。

 しかも、当時プロデューサー、アレンジャーとして活躍していたテリー・メルチャー、ジョン・サイモン、ジャック・ニッチェなどがかかわった曲があったり、シンガーに限らず、ソングライター、コンポーザーも含めて、裏方の仕事ぶりにも光をあて、その楽曲をいろんな角度から楽しませてくれるのも、このコンピレーションの憎いところだ。

 例えば、ドリス・デイが、さすがというか、落ち着いた趣きできかせる“レインボー・エンド”は、息子のテリー・メルチャーのプロデュースで、ジャック・ニッチェのアレンジだ。ジョニー・ソマーズの“ネヴァー・スロー・ユア・ドリームズ・アウェイ”にはうっとりさせられるし、ラニー・シンクレアが、軽快にジャズを奏でる“ウェイリング・ワルツ”には心が弾むし、ルグラン・メロンの“グロウイン・マイ・オウン”には、枯葉が舞い、そこに哀愁が寄り添う。

 17才のリズ・ヴェルディが、パンチの効いた歌声をきかせる“ユー・レット・ヒム・ゲット・アウェイ”なんかも貴重だ。彼女が残した唯一のシングルらしい。貴重と言えば、日本に限らず、世界でも初CD化という曲も、少なくない。その中の一つ、スーザン・クリスティの“アイ・ラヴ・オニオンズ”の囁きにも笑みがこぼれる。エイプリル・ヤングの“ディス・タイム・トゥモロー”には、60年代の女性ポップスの典型を見る思いだ。タイトルになっている〈ソングバーズ〉とは、もちろん、〈女性歌手〉、〈歌姫〉を意味する。