©2018「SUKITA」パートナーズ

ロック・ファン必見! マーク・ボラン、デヴィッド・ボウイらを虜にした写真家のドキュメンタリー

 マーク・ボラン、YMO、寺山修司など、時代の顔ともいえるアーティスト達を輝きを捉え、デヴィッド・ボウイからは「巨匠(マスター)」と呼ばれた写真家、鋤田正義。『SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬』は、今年で80歳を迎えて、今なお最前線でシャッターを切り続ける鋤田の活動を追った初めてのドキュメンタリーだ。

相原裕美,鋤田正義 SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬 ハピネット(2018)

 映画では鋤田の軌跡を振り返りながら、同時に現在の仕事ぶりも紹介していく。福岡県直方市で生まれた鋤田は、高校の時に母親にカメラを買ってもらい、写真という“もう一つの時”があることを知って写真にのめり込むようになった。当時、母親を撮ったモノクロの写真が紹介されるが、そこに早くも独自の美意識を感じさせることに驚かされる。そして、65年に上京。広告写真の世界で注目を集めた鋤田は、フリーになると海外に飛び出していく。そんななかで出会ったマーク・ボランやデヴィッド・ボウイ、イギー・ポップなどとのエピソードは、ロック・ファンにとってはたまらないものがある。

 また、鋤田はサディスティック・ミカ・バンド 『黒船』のジャケット写真で注目を集め、日本のミュージシャンとの交流も広がっていく。YMOの3人がそれぞれにインタヴューに応えているのも豪華だが、なかでも、細野が鋤田のことを「刀を持たないお侍さん」と表現しているのが面白い。相手に緊張感を抱かせずに、すっとその懐に入る。それが鋤田の才能のひとつなのだろう。さらに本作では、『ミステリー・トレイン』や『ワンダフル・ライフ』など映画のスチル写真を手掛けた時のエピソードを含め、鋤田の仕事を幅広く紹介。写真家としてだけではなく、ひとりの人間として、鋤田の魅力を浮かび上がらせている。

 糸井重里は鋤田を「柔らかさの見本」と讃えるが、常に新しいものを受け入れる柔軟性を持っていることも鋤田の強みだ。デジタルカメラをいち早く導入するなど時代に敏感で、新しいアーティストとも積極的にコラボレートする。鋤田は自分のことを「ミーハー」と言って笑うが、好奇心と愛情が被写体との関係を支えているのかもしれない。眉間に眉を寄せた巨匠、ではなく、鋤田の人懐っこい笑顔が印象に残った。

 


TOWER RECORDS INFORMATION

発売記念 鋤田正義(司会:菅付雅信)トーク&サイン会
○12/15(土)16:00開演 タワーレコード渋谷店   4Fイベントスペース
※観覧フリー。サイン会には、対象店舗(渋谷店・新宿店)にて本作をご予約、またはご購入(ご予約優先)いただいたお客様に先着でお渡しする「サイン券」をお持ちください。