元カンのイルミン翁による新作は使用楽器がピアノのみ、しかも一度きりの演奏を録音したまま編集なしで仕上げたという異色作だ。一般的なピアノの音色もさることながら、プリペアド・ピアノの鳴りが耳を惹き、予定調和を避けてスリリングに響く一音一音が緊張感を煽る。また微かな環境音も聴こえたりするが、それがむしろピアノの静謐さを際立たせる結果に。80歳を超えてなお実験精神溢れる姿勢には敬礼する以外ない。

 


イルミン・シュミットが新作のピアノ・ソロ・アルバムをリリースする、なんと心踊る事態だ。CANのメンバーとして先進的な音楽を創り続けたイルミンのピアノ独奏。たった一回の録音で〈自然な瞑想状態〉で〈エモーショナルに〉紡がれた5つの小品。重厚なコラールのような冒頭から始まる第1番はアンニュイなメロディを交えながら淡々と語ってくる。かと思えば第3番や第4番には雅楽への傾倒の残り香も感じられ、時にミニマリズムが顔を出す。たった一つのピアノという楽器で濾過されデフォルメされることで余計に浮き彫りになる。恍惚の音が彼の音楽観をダイレクトに伝えてくる。