2017年12月に発売したセカンド・アルバム『THANK YOU BLUE』より約11 ヶ月、溢れる才能と湧き出るアイディアによって驚異的なスピードで待望のサード・アルバムの発売が決定! その豊かな表現はさらに進化し続ける。

DAOKOの名をお茶の間レベルまで知らしめた米津玄師のプロデュース曲“打上花火”。複数の配信チャートやストリーミング/サブスクリプション・サービスのチャートでも1位を獲得し、ミュージック・ビデオの再生回数は2億回超……と、“打上花火”の成功は、もはやこうして書き連ねるまでもないことだろう。

むしろ、DAOKOのアーティストとしての実力をはっきりと示したのは、同曲を含む『THANK YOU BLUE』という作品であるはずだ。インディーズ時代を総決算しながら次なる一歩を確実に示したメジャー・デビュー・アルバム『DAOKO』(2015年)を経て、昨年12月にリリースされたセカンド・アルバム『THANK YOU BLUE』は、そのセンセーショナルなアートワークも含め、表現者としての姿を力強く打ち出してみせた。

それには、STUTSやD.A.N.、RHYMESTERのMummy-DからGOTH-TRADまで、ジャンルも世代もシーンも異なる数多くのアーティストたちとの共演・共作も大いに関係していただろう(その極めつきは、ベックとの“Up All Night”だ)。『THANK YOU BLUE』に結実するその経験が、DAOKOの音楽表現それ自体を先鋭化させ、音楽家としてのアイデンティティーを強固に凝縮させたことは、想像に難くない。

DAOKO 私的旅行 Toy's Factory(2018)

そんな前作から約11ヶ月、待望と言うべき3作目のアルバムが、この度リリースされる『私的旅行』だ。まず耳に留まるのは、ヴォーカリストとしての深化。ラップから歌唱まで、ヴォーカル表現のオールマイティーな才能を武器とするDAOKOだが、かつてのトレードマークだったウィスパー・ヴォイスはもはや表現の引き出しの一つにすぎず、力強い歌で聴かせる楽曲が増えている。例えば、ファンキーなシティ・ポップ調の、神山羊とのデュエット“24h”やジャジーな“オイデオイデ”。しかし、その歌の力をもっとも強烈に実感するのは、“打上花火”のソロ・ヴァージョンだ。心を打つストレートな歌に、DAOKOの表現者としての真価を聴ける。

もちろん、参加アーティストは実に豪華で、かつユニークな人選だと言える。任天堂とCygamesが共同運営するスマホ・ゲーム「ドラガリアロストTM」の主題歌である“終わらない世界で”は、名匠・小林武史がプロデュース。DAOKOの歌/ラップを見事に活かした、J-Popの王道を行くドラマティックな楽曲となっている。

J-Popの王道といえば、“サニーボーイ・レイニーガール”の作曲が、水野良樹(いきものがかり)というのもより本作がヴァラエティに富んでいることを証明している。BOOM BOOM SATELLITESの中野雅之が手掛ける“NICE TRIP”は、静かに高揚していくテクノ・チューン。新進気鋭のボカロP・羽生まゐごとの“蝶々になって”では、繊細なヴォーカル表現と和楽器の音色が唯一無二の世界観を形作る。拡張し続けるDAOKOの音楽世界とアーティストとしての進化/深化――それを見せつけられるのが、この『私的旅行』という力強い作品だ。