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七尾旅人のボーダレスな立ち位置を確認できる外部参加作品たち

 デビュー以来、ソング・ライティングや歌唱法、活動スタイルにおいてもフリーフォームな佇まいを貫いてきた七尾旅人。その影響は後人たちにも及び、直近で言うならP35の年末特集内でも〈2018年の100枚〉として紹介している中村佳穂など、新たな個性を生み出している。

 そこに加え、七尾のシンガー・ソングライターとしての柔軟性は、彼がこれまでに参加してきた外部作品からもあきらかだ。ここでは、シーンを跨いだその音楽たちを近年に絞って紹介しよう。

 まずは、GAGLEの配信シングル“聞える(Good to Go)”をリアレンジしたものに七尾がフックとして参加した“聞えるよ”(2014年)。アルバム『VG+』のラストに置かれたナンバーだが、聴後のメロウな余韻にも貢献するソフトな歌唱が印象的だ。続いては、あふりらんぽの片割れ、PIKA☆による初のスタジオ録音盤に収められた“線”。幽玄な物語のなかに迷い込んだような感覚に陥るデュエット・ソングだが、鳥の鳴き声の如き効果音すら〈声〉で表現するヴォイス・パフォーマンスが圧倒的だ。そして翌年には、オープンリールを使用したアート集団、Open Reel Ensembleの〈声〉をテーマとした作品『Voal Code』へ招聘。ここでは、どこか谷川俊太郎「朝のリレー」を想起させる脳内旅行シンセ・ポップ“回・転・旅・行・記”に無垢な歌声を寄せている。

 そして2016年には、ソウル・フラワー・ユニオンとニューエスト・モデルのトリビュート盤で“寝顔を見せて”のカヴァーを披露。アイリッシュ・トラッドな原曲を弾き語りで表現してその情緒を際立たせると、続いては新作『Stray Dogs』に助力したKan Sanoの“C'est la vie”にフィーチャリング。アーバン&エレガントなKan Sanoらしいこの曲では歌唱のみならず作詞にも関与しているが、ジェントルな歌い口のぶん、切ない詞がグッと胸に迫る歌世界を立ち上げている。さらに、作曲としてはテンテンコの愛らしい魅力を引き出した“流氷のこども”なども。

 また、昨年から今年にかけては、NORIKIYO“Memories&Scars”と冨田ラボ“rain on you”にも七尾の歌声が登場。ピアノのフレーズを基調としたシネマティックな前者では、シリアスなリリックから滲む哀愁の一端を担い、従来の冨田ラボを想起させる後者では、ラグジュアリーなミディアムに人肌の温もりを与えている。 *bounce編集部