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2018年のソウル復刻&発掘タイトル、私的ベスト10はこれだ! 選・文/林 剛

MARK IV Signs Of A Dying Love Cordial(2018)

ロイ・Cを後見人としたNYの男性4人組ヴォーカル・グループのアルバムは73年のマーキュリー盤のみだが、シングルはその前後に複数のレーベルから出されていた。うちオーティス・ブラウン主宰のOTB在籍中、75~77年に3つのセッションで録られた曲を集めたのがこれ。高値でも知られるグルーヴィーな表題曲のシングル(テンポ・アップしたヴァージョンも含む)は当時リリースされたが、大半の曲は未発表だったもので、雄大なシカゴ・ソウル風やスウィートなニュージャージー・ソウル風、ダンサブルなディスコなど、70sヴォーカル・グループの旨味を凝縮したような内容に惚れた。

 

VARIOUS ARTISTS For Discos Only: Indie Dance Music From Fantasy & Vanguard Records (1976-1981) Craft(2018)

ディスコのリイシューも相次いだ2018年、西のファンタジーと東のヴァンガード発となるダンス・クラシックを集めたCD3枚組(アナログは5枚組)は質と量、12インチ・ディスコ・ミックスのレア度という点で圧倒的だった。シルヴェスター、ブラックバーズ、サイド・エフェクトといった代表格のヒットをはじめ、アルフォンス・ムザーン参加のプセーによるテイスト・オブ・ハニー曲の換骨奪胎、アイク・ターナーが元妻ティナとホーム・グロウン・ファンクを迎えた猥雑なファンク、レインボウ・ブラウンのガラージ名曲など、ディスコ・サウンドの多様性を伝える快作。音質も良い。

 

WEST WING West Wing 20th Century/ユニバーサル(1975)

MURO監修の〈Diggin' Universal Music〉シリーズにてマーズの82年作と共に世界初CD化されたこれは、長年リイシューを待っていたバリー・ホワイト絡みの一枚。制作を手掛けたヴァンス・ウィルソンを含む4人組ヴォーカル・グループ唯一のアルバム(75年)で、バリーの“I'm Gonna Love You Just A Little More Baby”やトム・ブロックの“Have A Nice Weekend Baby”などがファルセット~テナーのリードで歌われる。洗練しきらないイナタさも味だが、ラヴ・アンリミテッド・オーケストラ流儀でフィリー・ソウルを真似た曲もあり、バリーの絶頂期を改めて実感した。

 

VARIOUS ARTISTS Stax '68: A Memphis Story Craft(2018)

68年にスタックスから出されたシングル全134曲を5枚のCDに収めたブック型ボックスは、メンフィスでのキング牧師暗殺から50年という歴史的な節目も意識して制作されたのだろう。アトランティック配給期と指マークの新体制期がまざる転換の年で、前年に他界したオーティス・レディングの“(Sittin' On)The Dock Of The Bay”を筆頭に、トリビュートを含めて亡きオーティスの影響が色濃く滲む曲が多いのも同年ならでは。ステイプル・シンガーズやソウル・チルドレンの登場とともに、スワンプ・ロック、ジャズ、フィリー・ソウルまで拡張していくおもしろさがある。

 

VARIOUS ARTISTS Eccentric Soul: The Saru Label Numero(2018)

近年はソウル系以外のリリースが目立つニュメロだが、オハイオ州クリーヴランドのローカル・レーベル、Saruのシングルを傍系のホロスコープやパイシーズなどの音源も含めてまとめた本盤は70年前後のモダンで熱いソウルが詰まった力作だ。彼の地を代表するルー・ラグランや初期のオージェイズにいたボビー・マッシーをブレーンとした楽曲は粒揃いで、熱血歌唱を聴かせるデヴィッド・ピープルズなどアーティストも実力派が揃う。クリーヴランド版ジャクソン5とでも言うべきポンデローサ・ツインズ+1の“Bound”はカニエ・ウェスト“Bound 2”で引用された名曲。

 

CAROL WILLIAMS Reflections Of Carol Williams Quality/BBE(2018)

サルソウル原盤となる76年のフィリー録音作で有名な歌姫が79年にカナダのクォリティから出したセカンド・アルバムの初CD化もディスコ・リヴァイヴァルがもたらしたものだろう。前年に自身のオーケストラ・アルバムでキャロルを起用した名匠トニー・ヴェイラーの制作(NY録音)で、サルソウル盤のイメージを踏襲しつつ、前作よりもBPM速めの流麗なディスコ・サウンドで主役を出迎えている。“Dance The Night Away”を筆頭に、快活なヴォーカルでエレガンスを振りまきながらダンス・ビートに乗る感じはテルマ・ヒューストンの如し。未CD化のディスコ名作はまだまだある。

 

LEON'S CREATION This Is The Beginning Studio 10/Acid Jazz(1970)

忘れ去られたベイエリア・ファンクの名作とでも言おうか。後にサンタナのヴォーカリスト/鍵盤奏者として活躍するリオン・パティーロが率いたサンフランシスコの男女/人種混成バンドのファースト(70年)。クリエイション名義による74年のアトコ盤より知名度は劣るが、サンプリングやレア・グルーヴ文脈で人気の“Mirage”など、スライ&ザ・ファミリー・ストーンとサンタナを繋ぐようなファンキーでポップな楽曲はこの時代にしか生まれ得ない熱気に満ちている。女声リードのやるせないスロウ・ファンクも上々の出来。英アシッド・ジャズのリイシューはいまも見逃せない。

 

VARIOUS ARTISTS Get down with the Philly Groove selected by Hiroshi Nagai ソニー(2018)

シグマ・サウンド・スタジオ設立50周年でもあった2018年。イラストレーターの永井博氏がフィラデルフィア・インターナショナルの音源を中心としたフィリー・ソウル曲からなるコンピを出したのも何かの導きだったのかもしれない。DJとしても活動する永井氏らしいモダンなダンス・ナンバーを有名・無名問わず並べた自由度の高い選曲で、カレイドスコープやロバート・アップチャーチなどのシングル曲も収録。本盤に登場する“Philly Jump”を収録したインスタント・ファンクの76年作『Get Down With The Philly Jump』が単体で世界初CD化されたのも快挙だった。

 

LALOMIE WASHBURN My Music Is Hot Parachute/Robinsongs(1977)

ハイ・ヴォルテージやラヴ・クラフトといったバンドで歌っていたレディー・ファンカーが77年に発表したパラシュート原盤の初作は今回が初の正規CD化。しかも7インチ・ヴァージョンなどを含む拡大盤で、ストリングスが響き渡るシングル“Two Sides”(78年)も収録された。Pファンクやノーマン・ホイットフィールドの向こうを張るようなサイ・ミッチェル制作のディスコ・ファンクを奏でたのは西海岸の腕利きで、そのファンキネスにワウ・ギターで貢献していたのは2018年に亡くなったワー・ワー・ワトソンだった。余裕な表情で歌うラロミーはもちろんカッコいい。

 

ARETHA FRANKLIN The Atlantic Singles Collection 1967-1970 Rhino(2018)

2018年の音楽界における最大の損失はアレサ・フランクリンの他界だろう。アトランティック初期にあたる67~70年のシングルA/B面(34曲)を発表順に並べたこの作品集は生前に企画されていたが、結果的に追悼盤となった。NYをベースにマッスル・ショールズやマイアミでも録音を行い、ジェリー・ウェクスラーの尽力によってアレサが〈女王〉の称号を手に入れたこの時期の楽曲はやはり至宝。全曲モノラル音源のリマスターとなる本盤では、キング・カーティス一派や南部の腕利きたちによるバック演奏とアレサのパンチのある声が塊となって響いてくる。続編にも期待。