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世代を超えて巻き込んでいきたい

 年明けにリリースされるセカンド・アルバム『Sympa』は、猛スピードで成長を続ける彼らの現在を正確に映し出した作品になった。配信ヒットの“Flash!!!”やMV公開済みの“It’s a small world”、TVアニメ「BANANA FISH」のエンディング・テーマとなったシングル“Prayer X”という先行曲を含む13トラックを一聴して気付くのは、音像のヴァリエーション、メンバーのプレイヤビリティーが長足の進歩を遂げていることだ。

King Gnu 『Sympa』 ARIOLA JAPAN(2019)

 「“Flash!!!”ぐらいからガッチリ組み合った感覚があるんですよ。“Flash!!!”はストレートなロックのビートにブラックなベースラインをぶつけていて、“Prayer X”にもそういう要素があるし、どの角度から見てもぶつかり合って火花を散らす、それがこのバンドの魅力になってると思います」(新井)。

 「King Gnuは生バンドと打ち込みのビート・ミュージックとの間にいるバンドで、それが自然と馴染んできた感じがありますね。もともと小さい会場でセッションしてきたメンツだけど、よりデカい会場にチューンされてきて、細かい手数が減った代わりにもっと大きく気持ちいいものが増えてきた感じはあります」(常田)。

 アルバムは、〈所詮ロックンローラーは愛と人生しか歌えないんだ〉というパンチラインが光る攻撃的なオルタナ・サウンドの“Slumberland”で幕を開け、中盤にはゴスペル・ライクなミディアム・バラード、ストリングス・アレンジの美しいバロック・ポップ、ヘヴィーなヒップホップ・ビートなどを配し、ラストは壮大なバラードで天へと昇る。バンド・サウンド、打ち込み、コーラス、弦など、楽曲の魅力と才気溢れるアレンジの見事さも、前作から大きく飛躍したポイントだ。

 「アルバムの中でキーになってるのは“Slumberland”と最後の“The hole”で、そこに伝えたいことが凝縮されてると思ってます。このバンドにはビート・ミュージックの王道さがあって、それが“Slumberland”には強く出てるし、逆に“The hole”はこの一年、J-Popの名曲と言われるものをたくさん聴いてきたなかで自然と出てきた曲で、ここまで骨の太いバラードを作れたのは初めてかもしれない。King Gnuはこういう曲もできちゃうし、パンク的なアティテュードのものも孕んでいる。両面あるんですよ」(常田)。

 「“Hitman”はライヴでやっててすごく気持ちいい曲。音源のギター・ソロもヤバイことになってるし、全体の音像から色と景色が見えてくる。理の歌うメロディーがポップで、しかも重心が低いサウンドになっているという、イイ曲ができたなと思いますね」(新井)。

 「“Bedtown”みたいな、ファンキーな勢いのある曲が好きな人もいるだろうし」(勢喜)。

 「これだけ楽曲の幅があるから、いろんな世代の人が自分なりに好きなポイントを見つけられる、受け皿の広さがあるなと思いますね。世代を超えていきたいです」(常田)。

 『Sympa』=シンパとはその思想に共鳴する同志を指す言葉で、そこには年齢制限もジャンルの壁も何もない。King Gnuは音楽であり、思想であり、行動であるという斬新なアート・フォーマットを用意して、あなたの参加を待っている。

 「めざすのは、シンパを募ってどんどん広げていくこと。King Gnu自体がそういうコンセプトで作ったバンドなので、どんどん巻き込んでデカくしていきたいなと思います」(常田)。

 「これだけ歌ものとバンドの強みが同居しているアルバムは他にないと思うので。〈これはいままで聴いてきた音楽ではないぞ〉って潜在意識に訴えかけて、音楽の聴き方がちょっと変わったりするんじゃないかなと思います」(井口)。

King Gnuの作品。