EVENT & LIVE REPORT

中村佳穂はディープとポップの交差点で歌う

『AINOU』リリース・パーティー東京編で発見した、自由な音楽のかたち

東京へやってきた中村佳穂

2018年12月、『AINOU』リリース後のツアーとして、京都、名古屋、東京の三都市でのライヴが行なわれた。12月22日に東京で開催されたのは、下北沢440と下北沢club 251での昼夜2公演。『AINOU』に仰天した音楽ファンが、中村の演奏を間近で体験できる貴重な機会となった。この日初めて彼女の演奏を観る観客も多かったのではないだろうか。東京公演のチケットは早々に売り切れてしまい、ここにもアルバムの大きな反響を感じた。昼の下北沢440公演は、中村と音楽的に連帯する3名のミュージシャン、武徹太郎(馬喰町バンド)、尾島隆英ASAYAKE01が招かれ、それぞれ3曲ほどの弾き語り演奏をおこない、最後に中村本人のピアノと歌による演奏が行われた。

武徹太郎
 
尾島隆英
 
ASAYAKE01
 

ゲスト3名と中村に共通するのは、段取りや尺をほとんど気にせず、即興で思いついた言葉を歌い、話し、ときには踊り出し、好きなように演奏するという気負いのない姿勢だった。曲とMCの境界線があまり明確ではなく、話しているのかと思いきや曲はすでに始まっていたりもする。武にしろ、ASAYAKE01にしろ、おそらくその場で頭に浮かんだ内容を思いつくままに歌っているのだが、フリースタイル・ラップもかくやという即興性には感心してしまう。アドリブから始まるのは中村も同様であり、ときにはイントロだけを弾きかけて「この曲はいろんな場所で演奏した曲だから違うのにします」と言い、別の曲の演奏を始めてしまったりもする。演奏中に子どもが騒ぎ出せば、演奏を止めて話しかけていく。あるいは、前の演者が歌った曲を突然歌い出す。そのあまりに自由な姿に観客はただ驚くばかりなのだが、彼女が「京都からきました、中村佳穂です!」と自己紹介ソングを歌ったとたん、その声の持つエネルギーに圧倒され、観客は熱く反応する。最後は、中村佳穂BANDのメンバーを含む全員が参加、楽器を手に会場の中心まで歩いていき“そのいのち”を歌って終了となった。

 

バンド・メンバーと交わす、スリリングな音楽的綱引き

昼の部で中村の自由奔放な姿に触れて驚き、さてバンド形態ではどのような演奏になるのかと、夜の部へ向けての想像は尽きない。地下のライヴハウス、下北沢club 251は満員、多くの観客は未だ見ぬ驚異の新人の姿に期待で胸をふくらませている。バンドが登場し、中村の歌声と共に演奏が開始された瞬間の大きな歓声にもまた、期待度の大きさが感じられた。バンド構成は、ドラムスに深谷雄一、ギターに西田修大、キーボードに荒木正比呂、コーラスにMASAHIRO KITAGAWAの4名にくわえて、中村(キーボード)の計5人編成。途中でベーシスト(越智俊介、CRCK/LCKS)が数曲参加したが、それら以外のベース部分はキーボードで鳴らしていたようだ。

バンドの演奏が、音源の忠実な再現をめざしていないことはあきらかである。中村の即興はバンド形式であっても止まらない。曲の前振りや、作品を制作した経緯、バンドの紹介など、通常なら曲間のMCで語られるような内容が、ピアノの演奏と即興のメロディーでよどみなく歌われていく(彼女はこうした特殊技能をどこで習得したのだろうか?)。段取りに沿ってスムーズに進めること、ミスなく演奏することなど、たいていのミュージシャンが心配するであろう決まりごとにあまりとらわれない、中村の基本姿勢には驚かされるばかりである。

音源がポップな調整を施されたサウンドであるとすれば、ライヴは一気にディープな中村が解き放たれる場となる。冒頭のアドリブから彼女らしさは全開となり、“POiNT”“GUM”とアップテンポの曲でエネルギーは一気に炸裂する。“アイアム主人公”では、あたかもジェームス・ブラウンのごとき中村の合図でブレイク(キメ、トメ)が入り、演奏は白熱。前奏が延々と続いて、肝心の曲がなかなか始まらないという仕掛けもおもしろい。演奏されるどの曲も、メロディーやアレンジは自在に変えられ、音源として聴いていた曲とは違ったイメージが浮かび上がる。中村本人が「私自身がうおーっと行くタイプなんで、バンド・メンバーはそうじゃない人を選んだ」と語るとおり、ライヴでは自由に演奏する中村と、彼女の無茶振りにどうにか答えていくバンドのスリリングな音楽的綱引きが随所に見えた。最後は、“きっとね!”“AINOU”とアルバムの核となる曲を、アドリブも含めた自由な演奏で披露し、ライヴは終了した。

終演後、規格外のミュージシャンを目撃したと、多くの観客が興奮ぎみに会場を後にする。ツアーの締めくくりとなる東京公演は、彼女らしい歌と演奏に溢れたみごとなライヴとなった。中村ほどのポテンシャルがあれば、今後より大きな会場での演奏も間違いなく行われるだろう。バンドの演奏を通じて、アルバム『AINOU』が到達したポップ・ミュージックとしてのバランスのよさをあらためて噛みしめると共に、彼女は今後どのようにポップとディープのバランスを取っていくのだろうと、そればかりが気になるのだった。

 

中村佳穂 presents. 2nd album『AINOU』release party(昼公演)
~好きな人の音楽で旅立たせるの巻~
2018年12月22日 東京・下北沢440 

セットリスト

武徹太郎(馬喰町バンド)
1. 源助さん
2. 左右
3. タイトルなし

尾島隆英
1. Amy
2. タイトル未定
3. 本を読む

ASAYAKE01
1. YOU & I
2. ギター
3. LAST MAY 
4. SSW

中村佳穂
1. アドリブ ~ 口うつしロマンス
2. GUM
3. SHE'S GONE
4. get back
5. 永い言い訳(ヴァイオリン:磯部舞子)
6. You may they
アンコール
7. そのいのち(中村佳穂BAND含む出演者全員)

 

中村佳穂BAND presents. 2nd album『AINOU』 release party(夜公演)
2018年12月22日 東京・下北沢club 251

セットリスト
1. アドリブ
2. POiNT
3. GUM
4. Fool For
5. intro
6. 永い言い訳
7. SHE'S GONE
8. get back
9. You may they
10. アイアム主人公
11. 忘れっぽい天使
12. そのいのち
13. きっとね!
14. AINOU
アンコール
15. タイトル未定
16. 口うつしロマンス

バンド・メンバー
中村佳穂(ヴォーカル/キーボード)
荒木正比呂(レミ街/tigerMos、キーボード)
深谷雄一(レミ街/tigerMos、ドラムス)
西田修大(吉田ヨウヘイgroup、ギター)
MASAHIRO KITAGAWA(コーラス)

ゲスト
RyoTracks(ヒューマンビートボックス)
越智俊介(CRCK/LCKS、ベース)
ASAYAKE01(コーラス)

 

Live Information

〈音楽感謝 vol.14〉
2019年1月13日(日)京都・拾得 
OPEN 17:30/START 18:30

〈月のひなた7周年企画 ツキノポリタン〉
2019年1月20日(日)愛知・名古屋 TOKUZO 
OPEN 17:00/START 18:00

〈NEWWW vol.17〉
2019年2月19日(火)東京・渋谷WWW 
OPEN 18:30/START 19:30

〈GRAPEVINE SOMETHING SPECIAL〉※ゲスト出演
2019年2月21日(木)愛知・名古屋クラブクアトロ
OPEN 18:15/START 19:00
Info. サンデーフォークプロモーション 052-320-9100 http://www.sundayfolk.com

2019年2月22日(金)大阪・心斎橋BIGCAT
OPEN 18:00/START 19:00
Info. サウンドクリエーター 06-6357-4400 http://www.sound-c.co.jp

2019年3月1日(金)東京 マイナビBLITZ赤坂 
OPEN 18:00/START 19:00
Info. ホットスタッフプロモーション 03-5720-9999 http://www.red-hot.ne.jp

〈帰ってきたエフエックス〉
2019年3月24日(日)福岡 Zepp Fukuoka

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