INTERVIEW

MONOが絶望の先で掴んだ『Nowhere Now Here』という希望

Takaakira ‘Taka’ Gotoがバンドの苦闘を明かす

 

世界で答えを出してきたものが、日本でだけずっと答えが出ていないような気がする

――今作の最初の構想はどんなところから?

「村上春樹さんの小説を音にしたらどうなるんだろうっていう興味があって。村上さんがなんでこんなに(世界の)共通言語になってるんだろうって思ってたんですよ。ホント世界中どこにでも売ってるし、ファンがすっごく多い。彼は普遍的な言語を持ってる。どんな人種の人でも、必ずそれを感じられる。その理由が知りたくて、いろいろ読んだ。いつも完結しないまま終わって行くんですよ。最後にふわっと、ちょっとだけ光を見せて終わる。

これまでのMONOの作品って映画のように曲を書いてきたので、ドラマティックな終わり方をするんです。でも、村上春樹さん的に音楽を考えたらどうなるんだろうと。怒りも、攻撃的な怒りではない。悲しみも、絶望を感じない――真ん中をずっと行ってるあの感じを、音にしたらどうなるんだろうと思って。自分のテイストではないけど、あえて音にしてみたんです。でもまったくおもしろくないアルバムになっちゃって(笑)」

――ははは!

「これじゃダメなんだって思いました。結局その後、(マネージメントとのトラブルで)ありったけの〈fuck you〉が来ましたからね。それで、曲のなかで理不尽な思いが爆発したんです。息ができないぐらい〈ふざけんじゃねえ!〉〈舐めてんじゃねえ!〉って、ありったけの〈fuck you〉が出てきて、そこから全部書き直しましたね(笑)。でも行き先が見えないんですよ。要するに、どうなるかわからない。

ひとつだけ言えるのは、異常に不調和なんですよ、僕とこの世界が。でも、不協和音も音楽の一部なんですよ。だから"After You Comes The Flood" は、一個のフレーズの繰り返しなんだけど、不協和音を繰り返しながら大きなうねりとなって、最後に力となって逃げていく。3曲目の"Breathe"では、すごく疲れきってる自分たちも同時にいる。でも〈傷ついた私を救ってください〉とはまったく思ってない。ただ、〈自分たちは新しい地平に行くんだ〉っていうのを表現したかった。インスト・バンドだけど、今回はそれを言葉にして出したいと思った。言葉にしないとわからないから。"After You Comes The Flood"のノイズで〈fuck you〉した後は、どうしても次の曲で僕らが心の奥に抱えてる思いを言葉にするべきだと思った。そしてそれをTamakiに絶対伝えてもらうべきだって思ったんです」

『Nowhere Now Here』収録曲“After You Comes The Flood”
 

――怒りというより世界に対する違和感、孤立感みたいなもの?

「日本だけです(笑)。僕らにとって日本はそんなに居心地が良いわけじゃない。日本人として育ってきたし、日本でもきちんと活動したいという思いは全員にある。でも、時々すごく嫌な気持ちになる。一生懸命やってきて(世界で)答えを出してきたものが、日本でだけずっと答えが出ていないような気がする。それは、20年かけて僕たちがホントの音楽の力を信じてきちんと学んで得たものを、フィードバックさせてくれない日本に対してのジレンマだと思うんですよね」

――それは何なんでしょうか?

「Tamakiに"Breathe"を歌ってくれないかって頼んだときに〈私が歌うの!?〉って驚いてたんですけど、歌えなくても、しゃべってくれと。とにかく絶対に伝わるから、上手いとか下手とかどうでもいいから、いま僕が必要なのは声と言葉なんだって。彼女はニコが大好きなんですけど、ニコだってそんなに歌が上手い人かって言われたら、クエスチョンでしょ?と説得して。

それでシングル・リリースしたら、アメリカのメディアは〈ニコのように切ない歌だ〉って記事をきちんと書いてくれた。伝わるところには伝わるんです。ヨーロッパはヨーロッパの解釈で、ライターの人が書いてくれてる。褒めるにせよ、貶すにせよね。けど日本のメディアは、(プレス・リリースとして)出したものがそのままコピペされて載ってるだけ。その人の感想とかは、まったく感じられないんですよ。敵も味方も、理解してる人も理解してない人も、僕からはまったく見えない。

例えば〈ピッチフォーク〉にクソミソ書かれたときは〈ピッチフォーク〉と戦ってやろうじゃないかって。それはロックとしては当たり前のことなんですけど、それさえもやらせてもらえない土壌じゃないですか、日本って。良いものと悪いもの、好き嫌いを何も言ってくれない。すべてがグレー・ゾーンで、どんな作品を作っても手応えがない。手応えを感じないから伸びない。毎日曲を書いて、ツアーをやって、人間としても成長してきてるのに、なんでまったく(手応えを)感じられないんだろうって。それに比べたら韓国でもマレーシアでも台湾でも中国でも、(作品を)出せば出すほどに手応えがある。そういうのが感じられないから、怖いんですよね。

この間envyのノブくん(河合信賢)が〈Gotoさん諦めてたよね〉って言ってたけど、ホント諦めてた。音楽がクソだったら嫌ってもらっても構わない。ただ音楽を聴いて、もし共有できる人たちがいれば、日本のシーンをもっと良くしたいなって思いますよ。envyや信頼できるスタッフ、僕が出会った数少ない仲間たちと〈After Hours〉みたいなイヴェントを通じて日本中の人たちと繋がりたいと思ってる」

 

死ぬ最後の最後の最後のモーメントまでステージにいたい。ギターと一緒に

――20年間バンドをやってきて、いちばん充実してるなと思うのはどういう瞬間ですか?

「自分はどう生きて、どう乗り越えて、どうTamakiとYodaと向き合って、どう新しいドラマーとやったのか、この新作に刻まれている。スティーヴ・アルビニと一緒にやって、いままでなかったものを作れた。その充実感を感じられるときが、いちばん生きてる実感があるかな。だから、〈ひとりじゃない〉ってことじゃですよ。より良くするために、みんながベストを尽くしてくれてる。僕は〈音楽がそこにいるな〉って感じられるときがいちばん幸せですね」

――わかります。

「僕は、死ぬ最後の最後の最後のモーメントまでステージにいたい。ギターと一緒に。ロックをやってたいですね。それは絶対です。っていうか僕、これしかやったことないんですよ、人生。これ以外にやりたいと思ったこともないし。想像もできない、まったく。新しいもの、良いもの、聴いたことのない新しい感覚、感情になる音楽を書き続けたい。絶対に嘘をつけないものは音楽。音楽を通じて僕は人生をまっとうしようとしてる。自分の人生に嘘をつきたくないんですよ」

 

スティーヴ・アルビニがいれば、何もいらないな

――今作は前作に続きスティーヴ・アルビニがエンジニアですね。

「アルビニだったら自分が望んでるものが最高にカッコよく録れる。それってコンプレッサーをかけて、何デシベルか上げて、EQをいじってっていう世界じゃないんですよ。その空気さえも、全部バーンとその瞬間に録る。2003年に初めてアルビニに会ったときに衝撃を受けましたよ。いきなり言われたのが〈Taka、僕ができることは10パーセントだけだ〉と。録音ボタンを押して、テープを回すだけだと。〈90パーセントはお前らがやれよ〉って言われた。初日のセッションが終わった後に〈こんなイージーなレコーディングはない。お前らは素晴らしい〉とも言われて。フェーダーもEQも動かさないで全部できちゃったよって。ミックスもしないんですよ、問題がない限り。録ったまんまです」

――マイキング等を完璧にやるから、音のバランスとかいじる必要がないってことですね。

「それで仲良くなったんです。僕は〈バンドの音が良ければ、良い音で録れるはずだろ〉っていう考えなので、バンドの音のことは自分たちで100パーセント責任を持つ。〈僕たちがやれば最高なんだから、ごちゃごちゃいじるんじゃねえぞ〉みたいな。だってライヴは、いつもそのままじゃないですか。だから当たり前のことを当たり前にやったら、そのままの音が出る。〈ああ、もうスティーヴ・アルビニがいれば、何もいらないな〉みたいな。今回も最高にいい音で録ってくれました」

――今回もストリングスが大がかりに使われてますね。

「今回は10人です。アルビニって、オーヴァー・ダブを嫌うんですよ。2003年に初めてセッションしたときに(2004年作『Walking Cloud And Deep Red Sky, Flag Fluttered And The Sun Shined』)、ヴァイオリン2人とチェロ2人でやったんです。で、スティーヴとレコーディングしたら、すごい音が薄くて、しょぼくて。スティーヴはマイクを2本しか立てないから。〈スティーヴ、僕が思ってるように響かないし、すごいしょぼく感じる〉って言ったら、〈もっと欲しければ、倍の人数呼んできたら?〉って言われて。〈いや、オーヴァー・ダビングさせてくれないかな?〉って言ったら、〈Taka、それはフェイクだろ〉って言われて」

――(笑)。アルビニらしくて最高ですね!

「もうスティーヴとは長いんで、すごい楽しい。僕ら4ピース・バンドじゃないですか。Tamakiがピアノ弾いてるときはベーシストがいなくなる。僕らのピアノの曲ってベースがないんですよ。だってオーヴァー・ダビングさせてくれないんだもん(笑)」

 

ロックですよ。こいつがなかったら、僕なんてどうなってたかわからない

――最初の曲想の出発点っていうか、どういうきっかけでできることが多いんですか? 

「夜、静まったときに書くと、心の地下深くまで降りて行ける。そういうときはすっごく赤裸々になる。誰に聴かせるつもりもないけど、自分の奥底にあるヘドロみたいなものとか、悲しみとか、そういうものから始まるんです。だけどあまりにも〈地下〉に降りすぎていて怖いから、朝に見直して、バランスを取って書くようにしてます。そうじゃないと、あまりにもプライベートなものになったりするから。リリースしたら、一年半ツアーでその曲をやるわけじゃないですか。ほぼ毎日演奏するのに耐えられる曲じゃないと、責任が取れないから」

――その判断は、曲を作ったときにわかるんですか?

「わかりますね。なんか救われるというか、曲を弾いたら、自分が肯定される。聴いたら、お客さんも肯定される。そのお客さんのリアクション、フィードバックで僕らがまた肯定される。要するに、最後のゴールは〈肯定〉なんですよ。それがないとツアーなんかできない。ギターを壊すのもかっこいいんだけど、それを繰り返してると鬱になっちゃうと思う」

――〈fuck you〉でスタートしたとしても、最後はやっぱり……。

「〈肯定〉ですよね。だって同じような闇を抱えてるような人たちが〈サインしてくれ〉とか〈握手してくれ〉とか〈ピックくれ〉とか(言ってくる)、それってもう肯定じゃないですか。新しい友達ができる感覚でいろんな国の人たちとカンヴァセーションしていくと、〈ああ、ひとりじゃないな〉って感じる。ひとりで書いたのに、同じものをシェアできる。自分が抱えてる何かが誰かを肯定して、繋がり合えてる。

〈自殺しようと思ったけど、MONOの曲を聴いて止めた〉っていうメールとか、いっぱい来るもん。ありがたいと思う。わかるもん。その闇って、めっちゃ濃いですよ。この闇は〈fuck you〉って言わないと飲み込まれそうなぐらい、危険。逆に〈fuck you〉って言ってるぐらいじゃないと、戻って来られない。〈負けるか!〉っていう気持ちがないと、人生なんて飲まれっぱなしになっちゃう。理不尽なことだらけだもん」

――音楽があって良かったと思いますね。

「そうですね。少なくとも音楽のなかでは叫べるし、何でもぶっ壊せるし。もうロックですよ。こいつが代弁してくれることで、仲間もいて、肯定もしてもらえて。こいつがなかったら、僕なんてどうなってたかわからない。犯罪者になってたかもしれないですね」

 


Live Informatioin
〈MONO “Nowhere Now Here” Japan Tour 2019〉

1月27日(日) 東京・恵比寿 LIQUIDROOM
1月29日(火) 大阪・梅田 Shangri-La
3月16日(土) 福岡・西小倉 LIVE SPOT WOW!
3月19日(火) 広島 CLUB QUATTRO
3月22日(金) 島根・出雲 APPOLO
3月24日(日) 山口・周南 LIVE rise SHUNAN
前売り/当日:4,000円/4,500円(いずれもドリンク代別)

チケット(ぴあ/ローソン)
東京公演:130-341/73668
大阪公演:130-641/52805
福岡公演:135-943/81919
広島公演:135-397/63912
島根公演:135-398/63913
山口公演:135-397/63912

チケット(e+):http://smarturl.it/mono-jpn19-eplus
Tickets for English Speakers:http://w.pia.jp/a/mono-eng/

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