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ポール・ブレイ、菊地雅章、富樫雅彦作品ほか――トランスハート・レーベルに貫かれたケニー稲岡の〈硬派の美学〉

トランスハート・レーベル~貫かれたケニー稲岡の〈硬派の美学〉

 70年代から90年代にかけて、日本のレコード・レーベルによる海外でのアルバム制作は隆盛を誇っていた。その中で、ひときわ大きな異彩を放っているのは、93年に始まり9タイトルをリリースした、欧米ではケニー稲岡の名で知られるプロデューサー稲岡邦弥の個人レーベル、トランスハートである。稲岡は73年からトリオ(現JVCケンウッド)・レコードでプロデュース・ワークを開始。マンフレート・アイヒャー率いるECMレコードと独占契約を結び、豊潤な〈コンテンポラリー・ミュージックの森〉を日本に紹介し、その人気を定着させたことや、70年代の日本のフリー・ジャズを記録したことなど、大きな功績を残している。84年のトリオ・レコード終焉後、フリーランスのプロデューサーとして、独自の視点と人脈でユニークなアルバムを制作していた稲岡が、マンフレート・アイヒャーとECMをロール・モデルとしながら、稲岡の音楽哲学を実践してスタートしたのがトランスハートである。〈創り手のハートから、聴き手のハートにダイレクトに届くように〉と、願いを込めて命名した。全9タイトルの中で、稲岡が濃密に制作を共にしたポール・ブレイ(ピアノ)、菊地雅章(ピアノ/キーボード)、富樫雅彦(パーカッション)の作品が7タイトルを占めている。エレクトリックからアコースティックへの回帰の過渡期を記録した菊地の3作、脊髄損傷の事故からカムバックした73年から稲岡が多くの作品をプロデュースした異能のパーカッショニスト、富樫雅彦初のソロのスタジオ録音作、ECMでも重要な作品をリリースし、稲岡のフェイヴァリット・ピアニストであるポール・ブレイが2日で録音したソロとトリオと、〈ミュージシャンズ・ミュージシャン〉で知られる彼らの音楽の深層に迫った作品群である。メジャー・レーベルが大物アーティストの作品を次々とリリースしていた90年代に、この個性的なレーベルが残したコンテンポラリー・ジャズ史における功績は大きい。

 


transheart(トランスハート) 全作オリジナル・アートワークで初めての紙ジャケ仕様

第一期 2018年12月5日発売

 

 

第二期 2019年1月23日発売

 

 

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