強烈無比としか言いようのない音世界——この3人にしか生み出せないグルーヴ、変異なビートがいま、理屈抜きで燃えたいリスナーの肉体と魂を揺さぶっているぞ!

理屈じゃなく盛り上がれる

 ヒップホップ、ファンク、ジャズ、オルタナティヴ・ロックなどの要素を貪欲に飲み込み、トリッキーかつグルーヴィーなビート、五感に訴えかける気持ち良さと濃密なエモーションを併せ持ったフロウとともに唯一無二としか言いようがない楽曲を作り上げてきたskillkills。エクスペリメントな要素をこれでもかと盛り込みながら、問答無用でノリまくれる肉体性を失うことがない音楽世界は、シーンやジャンルの壁を越え、多くの音楽ファン、ミュージシャンから強く支持されている。

 2011年の活動開始以来、独自の進化を繰り返しながら5作のフル・アルバムを送り出してきた彼ら。その最新作が2018年10月にリリースされたキャリア初のベスト盤『THE BEST』だ。ライヴで頻繁に演奏されている楽曲をリアレンジ、再レコーディングした同作は、これまでのキャリアを総括すると同時に、現在の彼らのモードを生々しく描き出している。

skillkills THE BEST ILLGENIC(2018)

 「過去を振り返らず〈常に新しいことをやる〉というスタンスで、毎回コンセプトを変えた5枚のアルバムを作ってきて。レコ発ツアー中に次のアルバムの曲を作ったりもしてたんですが、さすがにやり過ぎかなと思って(笑)。EP(2015年11月にリリースされた4曲入り『DOPE THIS WAY』)を出した頃から、ライヴ・セットのやり方を変えたんですよ。それまでは最新アルバムの曲を曲間ナシで演奏していたんですが、昔の曲もセット・リストに取り入れるようになって、リアレンジすることも増えて。メンバー(シンセサイザーのヒカルレンズ)が脱退して演奏できてなかった曲もあるし、3人でいままでの曲をリアレンジしたアルバムを作ろう、ということからベスト盤に繋がったんですよね」(GuruConnect、ベース)。

 「歌も以前とはだいぶ変わりましたからね。初期の頃は叫ぶことが多かったけど、いまはもっと自由に歌を乗せるようになったので。全体的にさらにグルーヴィーになって、お客さんもノリやすくなったんじゃないかな。変拍子がどうとかではなく、理屈じゃなく盛り上がれるようになったというか。難しいことをやろうとしてるわけではないですからね」(マナブスキル、MC)

 「クラブで演奏するときも、(DJのプレイに)負けないくらい低音を出して、踊れる音楽をやりたい」(Guru)というコンセプトでスタートしたskillkills。ブラック・ミュージックを中心に雑多な音楽要素を血肉化したグルーヴの源流は、兄弟であるGuru、ビートさとしが生まれ育った山口県のシーンにあるという。

 「Guruが聴いてきた音楽に影響されながら育ったんですが、それがすごく幅広かったんですよ。メロコア、デスメタル、ハードロック、ギターロックからノイズ、アヴァンギャルド、フリージャズまで、本当に何でも聴いていたので。地元のシーンを体験したことも大きいですね。特に影響を受けたのが、ドラびでおさんが主催していたイヴェント。山本達久さん、大友良英さん、ジム・オルークさんなどのステージを間近で観ていたし、地元のミュージシャンには〈他人と違うことをやれ〉という教えがあって(笑)。俺はブルーハーツが好きだったんですが、同じようなことはやれないし、自分たちができることをひたすら追求した結果、こういうスタイルになったということですね」(ビートさとし、ドラムス)。

 

セオリーから外れるのが目的ではない

 トラックメイクを手掛けるのは、Guru。アヴァンギャルドなテイストと血沸き肉躍る昂揚感を併せ持ったサウンドは、彼の独創的な音楽観、制作スタイルによるところが大きいようだ。

 「歌にはメロディーがあっていいんだけど、トラック、アレンジにはなるべくメロディアスな要素を入れたくないんです。リズムもそうなんですが、西洋音楽的にきちんと整理されたものから飛び抜けて、もっと先に進みたいというのがずっとあるので。あえて型にハメてみるのもおもしろいだろうし、作曲の幅はまだまだあると思ってますね。もちろん、〈客を盛り上がらせたい〉という気持ちもあって。セオリーから外れるのが目的ではないし、単にアングラな音楽をやるつもりもなくて。耳馴染みのないビートでも、ループさせることでノレるようになると思うんですよ。俺自信、ぜんぜん理屈で作ってるわけではなくて、感覚でやってる部分が大きいですからね。スネアの位置が少しズレてるビートも、計算しているのではなく、作ってるときのノリなので(笑)」(Guru)。

 既存のフォーマットを軽々と超越した変則的なビートを臨場感あふれる生演奏で体現することが、このバンドのキモ。そのスタイルを支えているのは言うまでもなく、メンバー3人のプレイヤビリティーの高さだ。

 「曲は俺が持っていくんですけど、さとしが叩くと、さとしのビートになるというか。マナブの歌の乗せ方もどんどん良くなってるし」(Guru)。

 「ドラムは音源通りに叩いているんですよ。セッションで作っているのではなく、100%そのままなので、俺が考えた要素はゼロです。ドラムのクセとか訛りみたいなものはあるだろうけど、Guruの曲を再現するのがおもしろいし、こいつばっかり作りやがって俺のやりたいこともやらせろ、みたいなことは一切思わない(笑)。自分でも不思議だけど、新曲が送られてくるたびに、何だこれ? おもしろい! やろう!と思うので」(さとし)。

 「歌の乗せ方も時期によって変化していて。最初の頃は、リズムを把握して、しっかりハメようという気持ちが強かったんですが、だんだんと理屈で考えないようになって、自由度が上がってきて。歌詞に関しては、何度も下書きして、グルーヴがあると感じる言葉だけを乗せていて。それも自分の感覚ですけどね。ノリなのか悪ノリなのかはわからないですけど、いまは好きなようにやらせてもらってます」(マナブ)。

 これまでにライヴで共演したアーティストは、じつに多種多様。「軸足を置いているシーンはないですけど、そのぶん、いろんな人たちの共演できるのかなと。どこに呼ばれても、絶対に盛り上げる自信はありますからね」(Guru)というskillkillsは、ジャンルの配合が加速度的に進む現在、さらに強い存在感を発揮することになるだろう。

 「『THE BEST』を作ったことで、〈ようやく確立できた〉という手応えがあって。このアルバムに入っている音楽は完全に自分たちのモノだと言い切れるし、ここからだな、という感じもありますね。早く新しい曲、まだ聴いたことがない曲を演奏したいし、そうやって進んでいくんだと思います」(さとし)。