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ラモナ・フラワーズ『Strangers』 ブリストル発の電子ロック・バンドが、精力的なツアー活動をヒントに作った踊れる3作目

ラモナ・フラワーズ『Strangers』 ブリストル発の電子ロック・バンドが、精力的なツアー活動をヒントに作った踊れる3作目

Let's Be Strangers!
〈オーガニックとエレクトロニックの交差点にあるツボ〉を求め、世界中を旅してきたブリストル出身のラモナ・フラワーズ。〈フジロック〉を含む大型フェスへの参加経験を踏まえ、即効性の高いダンス・ポップを揃えた3作目『Strangers』で、いよいよ5人が正式な日本デビューを飾る!

 ファースト・アルバム『Dismantle And Rebuild』のオープニングをずばり“Tokyo”という曲で飾ったバンドが、この3作目『Strangers』で正式に本邦デビューするまでに約5年もの時間を要したのは、少々奇妙な話なのかもしれない。彼らの名はラモナ・フラワーズ。映画化もされたグラフィック・ノベル「Scott Pilgrim」に登場する女性キャラクターにちなんで命名されたらしい。

THE RAMONA FLOWERS Strangers Distiller/ワーナー(2019)

 英国のブリストル出身、スティーヴ・バード(ヴォーカル)とデイヴ・ベッツ(キーボード/ギター)が仮装パーティーで出会ったのを機に、サム・ジェイムズ(ギター)、ウェイン・ジョーンズ(ベース)、エド・ガリモア(ドラムス)を交えて2012年に結成。その後、インディー・レーベルのディスティラーと契約し、7インチやEPを挿んで2014年に『Dismantle And Rebuild』を、2016年に2作目『Part Time Spies』を発表。〈オーガニックとエレクトロニックの交差点にあるツボを射抜くこと〉をゴールに掲げ、M83やエヴリシング・エヴリシングに共感を寄せているという5人は、生音と電子音の配分を変えながらさまざまなアプローチを試みてきた。ラムのアンディ・バーロウがプロデュースした初作では、モダンなエレクトロ・ポップをドリーミーに聴かせたり、あるいはアンセミックに聴かせたりと多様性を見せつけ、2作目ではUKニューウェイヴをオマージュするかのように80年代調の音色を採り入れる……といった具合に。

 音源のリリースと並行してツアーも精力的に行ってきた彼らは、近年さらにライヴ活動に打ち込んでおり、2017年には〈フジロック〉出演と単独公演で2度日本を訪問。そうした経験が『Strangers』にはしっかり反映されている。何しろ、前作に引き続き米国人プロデューサーのクリス・ゼイン(フレンドリー・ファイアーズ、パッション・ピット)と組んだ本作から聴こえてくるのは、エレクトロニック度を強め、R&Bやポスト・パンクでさりげなく味付けした、キャッチーでファンキーでダンサブルな楽曲ばかり。このように即効性の高いダンス・ポップ・アルバムが完成したのは、ライヴで観客をノセることを重視した結果なのだとか。そして従来の作品とは一線を画すミニマルな構成によって、スティーヴの声の妖艶なクセを強調。ファルセットを効かせたり、オートチューンで加工したり、ヴォーカル表現で実験を行っているのが大きな特徴だ。

 また、〈Strangers〉という言葉が旅のなかでの新しい出会いを示唆している通り、作詞においてもツアーにインスパイアされたと見られる曲が含まれている。どこにも属さずに行き過ぎるだけの生活を続けながら、常に同じ太陽に照らされていることを実感していく“Same Sun”然り、旅先では普段とは異なるパーソナリティーを纏う自分の二面性を論じた“Seeing Double”然り。ほかにも、どこか遠い場所への憧れや遠くにいる人への思いが全編を通じて交錯。“Tokyo”を書いた時はイマジネーションに頼るしかなかったのだろうが、ここには実際に訪れたリアルな日本も、どこかに、何らかの形で刻まれているに違いない。

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