二人の盟友とのデュオによる、前作『パルテ』のネクスト・ステージ

 モノ・フォンタナとのデュオによる前作『パルテ』は発表された2016年に最も聴いた作品のひとつだった。フロレンシアの澄んだ歌声は何度聴いても信じがたい美しさだったし、こちらの想像力を何倍にも膨らませるモノの音使いは神秘的ですらあった。なにより可能性を無限に広げ得る“他者”という偉力をあれほど強烈に認識させられたことはなかった。

 ロックや音響派、ジャズといった様々な要素を実験的に取り入れ独自の音楽を確立しているシンガー・ソングライター、フロレンシア・ルイス。この『ルミアンテ』はそんな彼女による『パルテ』のネクスト・ステージと言える新作でソロ名義としては7作目にあたる。1曲を除き今回も編成はデュオ。収録曲の半分で相棒を務めるのは引き続きモノで彼との共演を再び聴けるのは嬉しい限りだ。そしてもう半分はフロレンシアが活動初期から信頼を寄せている盟友セバ・ランドロが相棒を務める。

FLORENCIA RUIZ ルミアンテ コアポート(2018)

 現時点でクレジットの詳細は不明だが、おそらくビートのきいた楽曲がセバによるものか。エレクトロニクスを多用しながらフロレンシアの中にあるアルゼンチン・ロックからの影響を引き出すようなバンド感のあるサウンドがモノと好対称。そしてモノはと言えば、例えばヘッドホンで聴くとしたら音が鳴ってる範囲なんてたかが30cm四方程度だが、それが空いっぱいに鳴ってるような果てしない空間を感じさせ、さらに壮大な旅をしているような気分にさせられる、まさに魔法である。

 これでデュオによる探求は完成であろうか。いや、タイトルに“ルミアンテ=反芻”と冠しているように今回で消化しきれなかったものをまたゆっくり時間をかけ反芻し新たな音楽の一部にしていくのだろう。なので、こちらもこの作品をゆっくり反芻しながら次作を楽しみにしようと思う。

 最後に2014年以降は毎年来日し今年10月にも岐阜県美濃市を皮切りにツアーを行っている。再び日本を訪れてくれる日もそう遠くないだろう。その時は是非一度彼女の音楽を体験していただきたい。